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   第百六話 こないに簡単に強うなれてエエんやろか?





「こないに簡単に強うなれてエエんやろか?」


 2つ目の仙桃を食べ終わって、モカが呟く。

 確かにこれでモカのステータスは2万アップした。

 でも。


「あのなモカ。今のモカのステータスから考えると、1万や10万程度アップしても誤差の範囲だぞ。ハッキリと強さがアップしたと感じようと思ったら、凄い数の仙桃を食べないと実感できないぞ」


 例えばモカの力は2113万4850。

 仙桃を100個食べたとしたら2213万4850。

 これじゃあ強くなったと感じるのは難しいだろう。


 でも、2000個食べたら、ステータスは2倍になる。

 これなら間違いなく、強くなったと実感出来るハズ。

 問題は。


「うう、アカン……もう食べられへん……」


 3個目の仙桃を食べ終えたモカが漏らしたように。


「そうなんだよな。いくら美味しくても、無限に食べられるワケじゃないんだ」


 2000個を食べるには何日も、いや何十日もかかるコトだ。


「うわぁ……1日20個食べても、100日もかかってまう……」


 俺はボヤいてるモカの頭にポンと手を置く。


「でも100日で今の倍のステータスになれるんだ。何の危険も冒さず。そう考えたら悪い話しじゃない。しかも、こんなキレイな場所で」

「そ、そうやな。悪い話しやないよね」


 目を輝かせるモカだったが。


「それに目的は別にもある」

「へ?」


 俺のセリフに首を傾げる。


「それって、ここに来たんは、仙桃でステータスをアップさせる為だけやない、ちゅうコト?」

「ああ」


 俺は、目を丸くするモカに頷くと。


「こっちだ」


 桃源郷の奥に向かって歩き出す。

 そして。


「な!? あれは、ひょっとして……」


 驚きのあまり言葉を失うモカに。


「そう。桃源郷の、もう1つの名は天狗の隠れ里。俺達の目的は、仙桃でステータスを上げながら、天狗に鍛えてもらうコトさ」


 俺はそう言って笑みを浮かべた。


 桃源郷の奥にある、のどかな農村。

 そこに暮らすのは、30人の天狗だ。


 説明するが、桃源郷に暮らす天狗は妖怪ではない。

 刀、剣、槍、戦斧、弓、格闘術、空手、合気道、柔術、忍術、闘気術。

 攻撃魔法、防御魔法、回復魔法、空間魔法、時空法、錬金術。

 様々なアイテム作成、武具製作などといった、様々な分野の達人だ。


 限界突破Lv3を入手し、それでも飽き足らない者。

 そんな強さに貪欲な者の、新たな学びの場所。

 それが天狗の隠れ里だ。

 俺がそうプログラムした。

 だから。


「良く参られた。望むだけ滞在して、己を高めて行かれよ」


 俺達に気が付いた天狗が、そう言ってほほ笑んだ。

 さあ、世界最高レベルの修行開始だ。


 ちなみに空手とか合気道などは、実在の達人を参考にしている。

 現存している映像をスーパーコンピューターで解析。

 骨格、筋肉の付き方や量。

 動いているときの骨の動きや、筋肉の力の入れ方など。

 普通なら考えられないレベルで解析してプログラムした。


 だから調達人にマンツーマンで指導してもらえる贅沢な修行場。

 それが天狗の隠れ里だ。


「ウチ、凄いトコに来たんやな」

「そうだ。もちろん1日や10日でマスターできる筈もない。だから数年かけて技術を身に付けるコトになると思う。仙桃でステータスをアップさせながらな」

「修行だけに打ち込む日々かいな。グラッグのおっちゃんと、ムサシのおっちゃんに訓練してもろてから以来やな」

「そうだな。しかし優れた技術を取得して、今以上に強くなれると思うとワクワクしてくる。きっと俺は、訓練が好きなんだろうな」


 そう呟いた俺に、モカが何度も頷く。


「ウチもや! 今まで出来ひんかったコトが出来る様になるんは、最高の快感やと思うわ!」


 というコトで俺とモカは天狗の隠れ里で修行を始めた。


 まず朝起きたら仙桃を食べる。

 そして天狗の指導で修行。

 10時の休憩で、スポーツドリンクの代わりに仙桃を食べる。

 そして修行再開、昼ご飯代わりに仙桃を食べる。

 また修行再開、3時のおやつに仙桃。

 再び修行、6時になったら仙桃を食べる。


 そこから風呂に入って、本格的な夕食。

 1日で、1番くつろげる時間だ。

 最後にモカと1日の修行のコトを話し合いながら反省会。

 仙桃の夜食を食べてから布団に潜り込む。


 ちなみにモカが1度に食べる、いや食べられる仙桃の数は2つ。

 いくら美味しくても、1日中モモばかりは食べられへん。

 とはモカの言葉だ。


 おっと、話を戻そう。

 つまりモカは、1日に12個の仙桃を食べる。

 だから毎日ステータスが12万、上がっていくワケだ。


 そして俺は1度に10個、死ぬ気で食べている。

 モカの言う通り、モモばかりだと飽きてしまう。

 でも修行の一環だと割り切れば、苦にならない。

 なので俺のステータスは、毎日60万上がっていく。


 こうして約3年が経過したある日。

 つまり俺が二十歳、モカが15歳になったある日。


「仙桃の効果だけで、全部のステータスが1億2千万上がったで!」


 モカが、そう声を上げた。


「そうか。それに超強化スキルも神域強化に進化したから、アップさせたステータス値も、大量にカットされてしまってるよな」


 例えばHPを強化するスキル『天域HP強化』。

 このスキルも他のスキル同様、Lv1からスタートしてLv9まで成長する。

 これによりLv1アップ毎に800万、ステータスはアップ。

 だからLv9になった今、HPは7200万もアップした。


 その数値にモカの場合、仙桃の効果1億2千万が上乗せされる。

 しかも他のスキルによるアップも大きい。

 でも限界突破Lv3の上限は9999万9999。

 つまり、かなりのステータス値がカットされてる計算になる。

 ってコトだから。


「そろそろ限界突破Lv4を手に入れようかな」


 と、俺が呟くと。


「というコトは、このまま限界突破Lv4を手に入れに行くん?」


 モカが、直ぐに反応した。

 やっぱりモカも、そう思ってたんだな。

 でも。


「その前に、京の都に戻って、グラッグさんとムサシさんに元気な顔を見せに行かないか?」

「そうやな。ウチも久しぶりにグラッグのおっちゃんとムサシのおっちゃんの顔見たいわ。よぉ考えたら3年も会ってへんさかい」

「よし、なら決まりだ」


 というコトで20歳になった俺と、15歳になったモカは。


「お世話になりました、天狗様方。そろそろ限界突破Lv4を手に入れに行こうと思います」

「そうか。いつでも修行をしにくるが良い」


 天狗の隠れ里を後にし、京の都に戻るコトにしたのだった。


 ところでさっき、モカが「仙桃の効果だけで」と言ったよね?

 それは天狗の隠れ里での修行で、強化スキルも進化したからだ。

 超Hp強化が天域HP強化になった様に、他のステータスも『天域強化』した。

 だから俺のステータスも大幅にアップしている。


 でも今はまだ限界突破Lv3の制限があるから99999999でしかない。

 だから早く、本来のステータスになりたいと思う。

 限界突破Lv4を手に入れて。

 ま、とりあえずは京の都に帰るとしよう。






2023 オオネ サクヤⒸ

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