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   第百五話 なんか呪われそうな不気味な顔しとる!

      

            ここから第3章になります




 俺とモカは、戦国エリアを後にした後。

 当初の予定通り、富士の山にやって来ていた。


「ほんで、ロックにぃ。こないな木ィしかあらへんトコにやって来て、どないする気なん?」


 ちょっとウンザリ気味のモカに、遠くに見える小山を指さす。


「あそこまで行ったら分かる」

「もったいぶらんと、はよ教えて欲しいわ」


 そう文句を言いながらも、モカは俺について来る。

 今のモカの体力なら富士登山なんか散歩同然だからだろう。


 なんて考えてるうちに目的地に到着。

 直径20メートルを超える大木だ。

 つまり小山と見えたのは、とてつもなく巨大な1本の木だったワケだ。


「うわ~~、見事な木やな~~。ここまで大きいと、なんや感動するで」


 モカはポカンと口を開けて、しばらく大木を見上げていたけど。


「で、ロックにぃ。ここでナニするん?」


 モカは、改めて聞いてきた。


「実はココに、隠しエリアがあるんだ」


 俺はそう答えると、大木の壁のような幹に手を当て。

 トン、トトン……とリズムを刻む。


 何をしてるか、と言えば。

『桃源郷よ、我らを受け入れ、その道を開き給え』

 というモールス信号だ。

 でも、これで終わりじゃない。

 繰り返すんだ……999回も。


 これは世界中、どこを探しても分からないコト。

 モールス信号を繰り返せ、という情報しか手に入らない。

 だから正しいモールス信号に辿り着いたとしても、数回か数十回で、間違ったと思うだろう。

 まして999回も繰り返す者は、殆どいない筈。

 我ながら鬼畜仕様の隠しエリアだ。


 そして999回、繰り返したトコで。


「さ、モカ。この木の裏側に行くぞ」


 更なる無理ゲー仕様。

 裏側に行かないと、成功したか分からないようになってる。

 こうして現れた、隠しエリア「桃源郷」への入り口は。


「うわ! コワ! なんか呪われそうな不気味な顔しとる!」


 モカが言ったように、大木の幹に浮き出た、不気味な鬼の顔。


「その鬼の口に手を突っ込んだら、隠しエリアに転送されるんだ」


 俺の説明に、モカがズザザ! と後ろに飛び下がる。


「こないなモンに手ェ突っ込むん!? 腕、食い千切られる未来しか見えへんのやけど!」

「そうだろ? 誰もがそう思うように恐怖と疑心暗鬼と精神不安定の効果が付与されているんだ」

「タチ悪ぅ~~~」


 顔をしかめるモカに、俺は言い切る。


「何の苦労も無く、無限に強くなれる場所だからな。簡単に辿り着かれては困るんだよ」

「何の苦労も無く!? 無限に!? ホンマ!?」


 表情を一変させるモカに、俺は頷く。


「本当だ。俺を信じろ」

「もちろん信じとるで!」


 モカは一声叫ぶと、迷う事なく鬼の口に手を突っ込んだ。

 ……のだが、何も起こらない。


「なあロックにぃ。まさかとは思うけど、失敗してへん?」

「もう少し、そのままで待ってみろ」

「う、うん」


 そして手を突っ込んだまま、待つコト5分。


 シュバッ!


 モカの姿が消え失せた。

 よし、桃源郷に転移したな。

 手を突っ込むのが正解なのに、直ぐに転送されない、という罠。

 最後まで人の不安を利用して追い返す非道仕様となっております、ハイ。

 というワケで、鬼の口に腕を突っ込んで待つコト5分。


 シュバッ!


 俺も隠しエリア「桃源郷」に転移した。


 こうしてやって来た桃源郷は、想像以上に美しい所だった。

 というか、正に絶景!

 花が咲き乱れ、木々は沢山の実をつけ、美しい蝶が飛び回っている。

 小鳥の綺麗な声が響き、流れる小川は透き通り、魚影は濃い。

 気候は春と夏の間くらいかな。

 プログラムしたのは俺だけど、それでも感動してしまう。


 リアルだと、ここまで人の心を震わせるんだ……。

 まだこの目で確かめてないけど、世界3大絶景の1つだろう。

 おそらくモカも同じコトを考えてるんじゃないかな?

 桃源郷をジッと見つめたまま動かない。

 と思ったら、モカは長~~い溜め息をつき。


「ロックにぃ! こんなキレイはトコ、初めてや!」


 目をキラキラさせて振り返った。

 けど、直ぐに首を傾げる。


「せやけどロックにぃ、どうやったら無限に強くなれるん? ウチには見当もつかへんのやけど?」

「そうだな、じゃあさっそく強くなるか」

「へ?」


 俺は、目を丸くするモカに笑みを向けると。


「これを食べるんだ」


 木に歩み寄って、虹色の実を千切り取って噛み付いた。


「なんやのソレ?」


 そう言いつつも、モカは俺の真似して木の実を口に入れると。


「モモや! 見たコトもない色しとるけど、この味はモモや!」


 大声を上げた。

 そして満面の笑顔を浮かべると。


「こない美味しいモモ、初めて食べたで! しかも皮まで美味しいで!? どないなっとんや!?」


 そう言いながら、あっという間にモモを食べ終えてしまった。

 すると。


《HP・ⅯP・力・耐久力・魔力・魔耐力・知性・速さ・運が1万アップ》


 というアナウンスが聞こえたのだろう。


「ロックにぃ、どないなっとん!? モモ食べただけでステータスがアップしたで!」


 モカは目を丸くして大声を上げた。

 もちろん俺の脳内にも、同じアナウンスが響いてる。

 つまり。


「今食べたのは、全てのステータスを1万アップさせる仙桃だったんだ。つまり仙桃を食べれば食べるだけ強くなれる。どうだ、無限に強くなれる方法だろ?」


 というワケだ。

 この俺の説明に。


「ほぇえ~~~……。こないに簡単に強くなれる方法があったやなんて、ホンマ驚きやで」


 モカは長~~い溜め息を吐いたあと、あらためて桃源郷を見回したのだった。







2023 オオネ サクヤⒸ

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