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   第百話  カプリコン!





 トラックをマジックバックに収納してから、俺達が魔法陣に入ると。

 次の瞬間、雨傘神社の前に立っていた。


「はぁ~~、空気が美味しいで! やっぱ澄んだ空気はサイコ~~やな~~」


 モカが深呼吸を繰り返している。

 アライグマシティーに漂う、ゾンビの腐敗臭にうんざりしてたんだろうな。


 え? 俺?

 もちろんウンザリしてましたとも。

 リアルのゾンビの臭いが、こんなに強烈とは思ってもいなかったです、ハイ。

 なんてチョット愚痴りモードの俺に、ジュンが聞いてくる。


「ところでロック。最後に何をしていたんだ?」

「それは、簡単にアライグマシティーに戻れるように、簡易パスを設置しておいたんだ」

「簡易パス?」


 俺が言った意味が分からないらしい。

 なら説明しようかな。


「大量の武器弾薬を持ち帰ったけど、今まで使ったコトのない銃だから練習が必要だろ? ならゾンビを標的にして練習して、同時にレベルアップを図った方がイイんじゃないか?」

「「「「「「あ」」」」」」


 俺の説明に、ジュンだけじゃなくカキクケコまで声を上げる。


「そうか。新しい銃の練習は絶対に必要だから、練習と同時にレベルまで上がるなんて一石二鳥だな」

「とりあえずレベル3にアップさせたらどうでしょう」

「賛成。ステータスが大幅アップするから、一気に機動力が上がる」

「兵士だけではなく兵站を担う者もレベル3にするべきだと思う」

「補給部隊の兵なら、レベル2でも良いのではないか?」

「そうだな、まずは銃を持たす兵士をレベル3にするのが優先だろうな」

「なら補給兵はレベル2を当初の目標にしよう」

「で、余裕があったら、更なるレベルアップを目指す。それで良いか?」

「「「「「は」」」」」


 話しがまとまったトコで、大急ぎで雑賀の里に戻る。

 そして銃で戦う歩兵1500人と、補給部隊500人を招集して銃を配る。


 渡す銃は、Ⅿ16A2アサルトライフルのみ。

 武器は1種類なら、補給する弾薬も1種類で済むからだ。

 しかも銃が故障しても、別のⅯ16A2に交換するダケで済む。

 あるいは故障した銃から使える部品を取り外せば、簡単に修理できる。


 ちなみに手に入れたⅯ16A2は5000丁、弾薬は5000万発。

 ヤタガラスの団の傭兵全員に配っても、余裕がある数だ。

 というコトで、兵士1500人と補給兵500人に銃を配り終えると。


「全員、良く聞け!」


 ジュンが叫び、Ⅿ16A2の使い方の説明を始める。


「この銃は30連発だ! 弾を込め直す事なく30発も撃てる」

『ええええええ!』


 どうやら全員、転生者じゃないらしい。

 30発連射出来ると聞いただけで、どよめきが上がってるぞ。

 まあ、そりゃぁ驚くよな。

 火縄銃じゃ連射なんて不可能。

 ましてや30発も連射できるなんて、想像を絶する事態だろう。


 でも、さすが鉄砲撃ちの里で育った者達。

 全員が引き金に指をかけてないし、銃口を空に向けてる。

 つまりウッカリ引き金を引いて銃を暴発させる事もないし。

 万が一、撃ってしまっても弾は空へと飛んでいく。

 つまり周りの人を傷付けるコトは無い。


 おっと、話しが逸れてしまった。

 ジュンの説明に、目を向け直そう。


「これは弾倉という。この弾倉には30発の弾を装填出来る。だからこの弾倉を交換するだけで、また30発銃を撃てる。ついでに言えば、この弾倉を1人あたり7個くらい配る予定だから、210発を撃てる計算になるな」

『ええええええええええ!!』


 さっきよりもっと驚く兵士達に、ジュンが付け加える。


「しかし、この弾倉の交換は、けっこう難しい。全員、何回か繰り返してみろ。分からなかったら、カキクケコに教えてもらえ」


 ガシャガシャガシャ! 


 弾倉を交換する音が暫く続いた後、全員の視線がジュンに集まった。

 へえ、もう弾倉交換をマスターしたのか、と俺は感心する。

 なにしろアメリカ軍の兵士でも、もたつくコトがあるのだから。

 なかなか優秀だな。


「大事な事を伝える。この銃には安全装置がある。このレバーがセイフティーの位置にある時は撃てない。良く覚えておけ」


 ジュンの悦明に、ヤタガラスの団がざわめく。


「そんな機能が!?」

「弾が出ないと混乱する者もでるだろうな」

「しかし絶対に弾が出ないなら、安全に持ち運べるぞ」

「おお、それは良い!」


 でも、直ぐにセイフティーの有用性を直ぐに理解した。

 やっぱりヤタガラスの団の兵は、優れた狙撃手みたいだ。

 お、ジュンが今度はホロサイトの説明を始めたぞ。


「狙いは、この窓を覗くんだ。赤い光の点が、弾が命中する場所だ」


 ホロサイトは、倍率の無い近接戦闘に向いた照準器だ。

 視界が広く、照準を合わせやすい。

 しかしヤタガラスの団の兵は、スキル『戦距離狙撃』を持っている。

 幼い時からの訓練のお陰で。

 だから近接戦闘向きのホロサイトでも長距離狙撃が可能となる筈だ。


「おお、これは狙いやすい!」

「視界が広いから、敵に接近されても狙いやすいな」

「おい、これなら早朝や夕方でも狙い易いんじゃないか!?」

「おお、確かにこれなら薄暗いトコでも狙い易そうだ」


 さすが経験を積んだ鉄砲撃ち。

 ホロサイトが、どれほど優れたモノか直ぐに理解したようだ。


 どういうコトかというと、早朝や日暮れは薄暗い。

 つまり標的を目で捕えるコトが難しい時間帯だ。

 そんなハッキリと見えない標的を火縄銃で狙うのは、凄く困難なコト。

 なにしろ照準装置自体が闇に紛れて見えにくいのだから。


 でもホロサイトなら、着弾点が赤く光るから、視界が薄暗くても狙い易い。

 ついでにいうと、ホロサイトは無限遠に設定されている。

 だから光の点を標的に合わせれば命中するワケだ。

 スキル『遠距離狙撃』と組合せれば絶大な力を発揮するだろう。

 こうしてⅯ16A2の取説を一通り終えたトコで。


「ジュン。アライグマシティーに向かう者を整列させてくれ」


 俺はジュンに声をかけた。


 どうやら全員、Ⅿ16A2の使い方をマスターしたみたいだ。

 なら、さっさと銃の練習を始めた方が良いだろう。

 という俺の考えを察したらしく。


「分かった。ヤタガラスの団、整列!」


 ジュンが全員を整列させた。

 そこで俺は、隊列の四隅に虹色の石を置いていく。


「ロックにぃ。ナンやのそれ?」

「アライグマシティーに一瞬で行ける、超貴重な使い捨てアイテムだ」


 俺はモカにニヤリと笑ってみせると、ジュンに視線を向ける。


「準備はイイか?」

「もちろんだ。到着後の指示は、既に出している」


 へえ、さっきまでⅯ16A2の使い方を説明してたのに、何時の間に?

 なんて疑問は置いといて。


「よし」


 俺はジュンに頷くと。


「カプリコン!」


 参考にしたゲームを製作した会社の名前をモジったキーワードを叫んだ。

 そして次の瞬間、俺達は新宿駅前に立っていた。









2023 オオネ サクヤⒸ

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