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  第一話  前世の記憶を取り戻したのね




 今日はボクの3歳の誕生日。

 父さんと母さんが、お祝いしてくれている。


「ロック。誕生日おめでとな」


 そう言ってボクの頭を撫でてくれたのが父さん。

 よく分からないけど、冒険者ってのをやってるらしい。


「ロック。今日はご馳走よ。おなか一杯食べてね」


 そう言ってニコッと笑ったのが母さん。

 父さんと同じ冒険者ってヤツらしい。

 冒険者ってナンなのか、よく分からないけど。


 でも、今日は本当にご馳走だ。

 よし、どれから食べようかな?

 と、その時だった。


「あ!」


 俺が前世の事を思い出したのは。




 俺の前世での名前は久保田智樹。

 ゲームプログラマーをしていた。

 そして新しいゲームの打ち合わせで遅くなり。

 2人の後輩とタクシーに乗ったトコにトラックが突っ込んで来た。


 記憶にあるのは、そこまで。

 という事は、あの事故で俺は死んだのだろう。

 で、記憶を持ったまま転生した、と。

 なんてテンプレな展開だろう。


 しかしどうしたモンかな?

 こんなコト話しても、信じてもらえるだろうか?

 いや、信じても気味悪がられるんじゃないだろうか?


 と悩む俺だったが、驚いた事に。


「あらロック。前世の記憶を取り戻したのね」


 母さんが、そう口にした。


「ど、どうしてボクが転生者って分かったの?」


 思わず本当のことを喋ってしまった俺に母さんは。


「だって私も転生者だもん」


 とんでもない事をサラッと口にした。


「この世界の人と違って、転生者は『鑑定』と『マジックバック』のスキルを最初から持ってるの。だからロックが転生者なのは生まれた時から分かってたわ。表示される文字がグレーだったから、まだ記憶を取り戻していない事もね。で、さっきグレーの文字が急に黒に変わったの。だから分かったのよ。前世の記憶を取り戻したんだって」

「そ、そうなんだ……」


 目を丸くしている俺に、母さんがほほ笑む。


「でも、この世界に転生したってコトは、ロックも『ファイナルクエスト』をやり込んだゲーマーなのよね?」

「それってひょっとして?」

「そう。ここはオンラインゲーム『ファイナルクエスト』と全く同じ世界で、ファイナルクエストにのめり込んだゲーマーだけが転生者として生まれてくるの。仕事以外の時間を極限までつぎ込んだ人とか、収入の殆どを課金アイテムにつぎ込んだ人とかね」

「それって職業とかスキルとか経験値を稼いでレベルとステータスをアップさせるのとかイベントとか、全部ファイナルクエストと同じってコト?」

「少なくとも私が知っている範囲じゃあ、全く同じよ」

「そうなんだ……」


 ヤバい、ちょっとワクワクしてきた。

 ファイナルクエストの舞台は、地球よりズット広い星。

 そしてファイナルクエストでの目的は1つじゃない。


 覇王を目指して国を興す。

 魔王となって世界征服を目指す。

 商人として莫大な富を得る事を目標にする。

 冒険者としてダンジョンを探索し、クエストを楽しむ。

 レベルを上げて世界最強を目指す。

 様々なアイテムを集める。

 ダンジョンや領地を経営。


 目的はゲーマーの数だけあると言ってもいい。


 イベントやミニゲームも充実。

 クリアすると、武具、スキル、レア職業など様々なモノが手に入る。

 世界中に熱狂的ファンがいる、世界最大のオンラインゲームだ。


 そして1番重要な事は。

 ファイナルクエストを造ったのは、俺だってコトだ。

 正確には、俺がプログラムした。


 自分で言うのもナンだが、俺は天才的プログラマーだった。

 スーパーコンピューターを駆使して膨大なプログラムを組む方法を考案。

 3万人規模のプロジェクトを俺1人でこなした。


 そして俺は記憶力も天才的。

 ファイナルクエストの全てを覚えている。

 つまり俺なら、どんな分野でも世界1になれるワケだ。

 しかもリアルで。

 これでワクワクしないワケがない。

 あ。


「じゃあボクのステータス、見れるんだ!」


 思わず大声を上げながら、俺が「ステータス」と口にすると。


 ロック(転生者) 経験値 0

 職業    隠れ里の民

 年齢    3

 レベル   1

 Hp    3

 Ⅿp    2

 力     1

 耐久力   1

 魔力    1

 魔耐力   1

 知性    1

 速さ    1

 運     5

 攻撃力   2(力+速さ)

 防御力   2(耐久力+力)

 魔法攻撃  2(魔力+知性)

 魔防力   2(魔耐力+知性)

 職業    里山の民

 スキル   鑑定 マジックバック


 ステータスが目の前に浮かび上がった。

 って、あまりの低さにガッカリだよ!

 とはいえ、今の俺はリアルで3歳児なんだから、こんなモンかも。


「ふうん。チート状態ってワケじゃないんだ」


 俺の呟きに父さんが笑う。


「ファイナルクエストの時に持っていたステータスもスキルもレベルも失ってるからな。まさに記憶だけ持って転生したワケだ。あ、鑑定とマジックバックを持ってるから特典ありの状態ではあるかな」


 そして父さんは真剣な顔になった。


「でもファイナルクエストの記憶が教えてくれる。効率よく強くなる方法、スキルの有効な使い方、ダンジョン攻略法とか色々な。ま、それは前世で何をやり込んだかによって違うんだが……ロックは大丈夫だよな? 里山の民って職業は初めて聞いたんだが」


 父さんの言葉に、俺はニヤリと笑う。

 職業『里山の民』

 数十万を超える職業の中で、この職業に目を止める者などいないだろう。

 しかしこの『里山の民』こそ、ぶっ壊れチート職業なのだ。


 コツコツとクエストをこなし、レベルを上げて少しずつ強くなっていく。

 これもゲームの醍醐味だし、そんな楽しみ方も捨てがたい。

 でも、ブッチギリで強くなっていく快感。

 これも捨てがたい。

 そんな快感を味わう為にコッソリ仕込んだのが、職業『里山の民』だ。

 ってかコレ、もう世界最強を目指すしかないよね?









2023 オオネ サクヤⒸ

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