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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

◯◯だと思ったら

シンデレラの王子様だと思ったら

作者:

 やぁやぁ皆、ごきげんよう! ボクは鳩のシロ。ふとある時、日本人だった前世の記憶を思い出してしまった、しがない使い魔さ!

 というか、シロってネーミングセンス、どう思う? ボクのご主人様が付けたんだけどさ。あの人、他に白い鳩を二羽、飼ってるんだけど。

 ちなみに、他の奴らの名前はそれぞれクロとキキ。クロは目の色が黒いから(ボクらも黒いんだけど)。キキは嘴が黄色だから(ボクらも黄色なんだけど)だよ!

 しかも、聞いてしまったんだ。王子様がボクらの名前をアンナとかクラウディアに変えた方が良いかな? って言ってるの。考え直してくれるだけ、ありがたい……。……多分……。だけど、一ついいかな?

 ボクら皆、オスなんだけど。

 …………ハッ! つい長くなっちゃった! メンゴメンゴ! 

 え? 古い?





 じゃ、気を取り直して、ボクらのご主人様のことを教えよう!

 これでもご主人様はフリーデン王国という人間の国の王子様。名前はフランツ。黒髪に緑の瞳の超絶イケメンで、いつも女の子にきゃあきゃあ言われてる。羨まし……じゃないや。

 顔だけじゃないよ。頭も良くて剣も強くて、魔法も使える魔法使い! 天は二物を与えず。なーんて、嘘っぱちだ! 不公平だ!

 ……でもないね。ボクってば話を逸らす天才かも。なんちゃって。

 ご主人様は割と硬派。モテモテだけど、女の子と付き合ったことはないよ! 一番親しい異性は母親か、姉弟子である魔女かな!

 だけど、そんなご主人様にも春がやって来た! それは姉弟子の魔女、レア様に会いに行った時。

 レア様は不在だった。だけど、姉弟子に遠慮のないご主人様は勝手に家の鍵を魔法で開けて中へ。ボクは止めたんだよ! お願い、信じて!

 家の中にあったのは大きな魔法の鏡。レア様は鏡の魔女と呼ばれていて、この鏡の中には妖精が宿っているんだ。

「美しい……」

 ふと聞こえた声にそちらを向く。ご主人様だ。彼が頬を染めていたので、ボクはギョッとした。なにか変なものを食べちゃったとか!? ボクの目を盗んで、王子様なのに拾い食いしちゃったとか!?

 だけど、それは誤解だった。ボクはご主人様の視線の先に、魔法の鏡があることを確認した。

 出かける直前まで、その鏡で見ていたのかな。鏡には一人の少女の姿が映しっぱなしになっていたんだ。

 金髪を無造作に結って、薄汚れたワンピースとエプロンを着けている。だけどめっちゃ美少女! きっと綺麗に着飾ったら、絵本の中から飛び出して来たお姫様のようになる。はず!

 すると、鏡の中から向こう側の音が聞こえた。

『シンデレラ! まだ終わらないの!?』

『なんて愚鈍なのかしら。はやく食事を作りなさい!』

『全く、使えないわねぇ』

 ひ、酷い! 綺麗なドレスを着た一人のおばさんと二人の若い女の人が怒声を浴びせ、時に叩く。むむむ、これは虐待じゃないか!

 と思って、あれれ? とボクは首を捻る。今、鏡の中の女が、シンデレラとか言ってなかったっけ? と。

 ボクは気が付いた。彼女はシンデレラ。前世で有名な童話の主人公! ってことは、シンデレラのお相手である王子様は、ボクのご主人様!?


「ご主人様、大変だ! ご主人様はシンデレラと結ばれるよ!」


 ボクは童話の話をした。ご主人様はボクに前世の記憶があることを知っているんだ。

 ボクの話に、ご主人様はふむ、と考え込んだ。


「ならば私は王子と魔法使いを兼任しよう!」


 いや、なんでだ!


「片方でよくない!? なんで魔法使いまで!?」

「きっと、私が魔法使いの才を持って生まれたのは、この時の為だったのだ。私はシンデレラを幸せに導き、そして幸せにしてみせる!」


 ご主人様は姉弟子に会う予定も忘れ、準備をすべく颯爽と城へ帰った。

 ごめんね、レア様! 不法侵入した挙げ句、勝手に帰って!

 そして、記念すべき舞踏会の日がやって来た。ご主人様は舞踏会が始まる直前、魔法でシンデレラ――エラの元へ行った。勿論、王子様だとわからないように変装してね! 

 魔法使いっぽい黒のローブを着て、顔も変えた。髪の色も、茶色に染める。


「わたしも舞踏会、行きたかったな……」


 悲しげな呟きが聞こえた瞬間、ご主人様は颯爽と彼女の前に飛び出した。


「では、その願い、私が叶えよう!」

「だ、誰ですか!?」


 エラは驚く。だよねー。急に来られると怖いよねー。


「私は魔法使い。君を舞踏会に行かせてあげよう!」


 ご主人様は杖を一振り。すると、エラの薄汚れたワンピースが華やかな水色のドレスに! これは王家御用達の仕立て屋で急遽作らせたんだよ。

 同時に金髪は艶を増し、丁寧に結われる。足元にはキラキラ輝くガラスの靴が!


「このカボチャの馬車で城に行きなさい」


 ちなみに、御者は人間の姿を一時的に与えられたクロ(使い魔の鳩)だよ!


「だけど、12時を知らせる鐘が鳴り終わる前に帰りなさい。12時になったら魔法が解けてしまうから」

「あ、ありがとうございます! 夢のようです!」


 エラがパッと笑顔になる。ご主人様、顔赤いよー。

 こうして、エラはカボチャの馬車に乗ってお城へ。王子様も魔法でお城へ帰った。

 この時、ボクらは知らなかった。ボクらのように、エラを舞踏会へ導こうとしていたとある魔女が、五分後にやって来たことを。



 結論から言うと、大成功! エラは童話の通り、ガラスの靴を置いて行った。ご主人様もボクも、特に伝えてはいなかったけど、やっぱり彼女は正真正銘のシンデレラなんだ!

 そしてご主人様はエラの元へガラスの靴を届け、ハッピーエンド。

 しっかし、誰も思わないだろう。まさか、シンデレラに登場する王子様が魔法使いも兼任したなんて。

 エラも思わないだろう。自分と見つめ合うイケメン王子が、フツメン魔法使いだったなんて。







 ところで、君は知っているかな? シンデレラを虐めた継母や、義姉達の末路を。

 鳩に目を潰されるというバッドエンド。だけど、ボクはやらないよ! そんなの怖いもん! だから、代わりに奴らが大事にしていたドレスやらなんやらを突いて破ってきてやった。どやぁ。

 ちょっと甘いかな? って思ったけど、すぐに義姉達は一回りどころか二、三回り以上歳の離れたおじさん、おじいさん達の後妻になった。それはすごく可哀想。

 だけど、この時のボクも、王子様も、エラだって想像していなかった。幸せだったはずの結婚生活はすぐに終わりを迎えることを。そして、産まれた娘も、とある童話の登場人物であることを。







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