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アリス、第2王子ほぼ攻略?

機械音のせいなのかこの身体のどん臭さのせいなのかつまずいてからのノアの所に抱きつき、無事イベントをクリアすることが出来た……が。

このまま放置はねぇだろ!? 機械音さんよぉ!?


俺は取り敢えず離れようと軽く押そうとしたが、強い力で抱きしめられ身動きが取れない。

なんで1日に2回も野郎に抱きしめられなきゃならねぇんだよ!? しかもアランもこいつも体格負けして離れられねぇし!

香水くせぇよ!!


文句は山ほどあるが初めにこの状況から抜け出すことが懸命だと判断し、ぐっと飲み込み考えることに専念した。普段全く使わない頭をここに来てから考えることばっかで使いすぎてそろそろ頭もお疲れモード。このままじゃストライキを起こして思考放棄、もしくは現実逃避をしてもおかしくない。

なるべく早くてなおかつ英断の判断をしなければ……

よし。ここは穏便に言葉で訴えるか……

この俺が穏便なんて言葉を使ったのはいつぶりだろうか。記憶の中では中学の卒業式の時校長との会話で「高校では何もかも穏便に済ませろよ」と言われ返事でそれをオウム返しで使ったのを覚えている。当然、入学してからは穏便どころか喧嘩ばっかりだったが。

穏便って大切なんだな。校長、約束破ってごめんよ。


「あのさ、ノア? その……さっきは転びそうになったところありがとう。だけど、もう離してくんねぇか?」


恐る恐る伝えるが、ノアは依然として言葉を発しようとしない。それどころか抱きしめている腕がだんだん強くなっている。

なにか言えよ!? 痛い痛い! 身体が真っ二つになる!


「やめ……」

「んー! 充電完了ー!」

「ひっ!」

俺の言葉を遮り急に耳元で大声を出され変な悲鳴が出てしまった。ついでに鼓膜も死んだ。

充電完了って、俺は充電器じゃねぇよ!


「どうしたの? 可愛い悲鳴上げちゃって」

笑いをこらえるような声で聞いてくるこいつの腕はまだがっしりと俺を抱きしめている。

いつまで経っても離す気配がない。


「不可抗力だ! いい加減離せ!」

「やーだ」

くそ……こりゃ、死ぬまで離してくれなさそうだな……

言葉で言っても無駄だと判断し、俺は奥義を使うことにした。

これだけは使いたくはなかったが……やむを得ない。

柔道部の主将で県予選2回戦突破の田中太郎パイセンから教わった投げ技。その名も“なんちゃって投げ”!

俺は素早くノアの襟元を掴み、足をかけ体重を乗せ押した。


「わっ!?」

ノアの短い悲鳴が聞こえ倒れていく。

よし決まった!

と思ったが俺自身バランスを崩しノア共々崩れ落ちてしまった。

やはりこの身体の扱いはなかなか慣れそうにない。というか、筋肉量もなにもかもが違いすぎて俺の能力にこいつの身体しんたいがついてこれていない。

地面にペちゃんと潰されたカエルのようになった俺はゆっくりと身体を起こした。


いててて……って……あれ?


「痛く……ない……?」


この展開はまさか。

痛みを感じるはずなのに転んでも痛みを感じないこの状況。乙女ゲームではお約束だよな。

俺は視線を真下にやるとノアが俺の下敷きになっていた。

ですよねー! なんとなく知ってましたよ!


「ごめんな!」


俺はすぐにそこからどこうとしたが、ノアの顔が異常に真っ赤になっているのに気がついた。

倒した時に頭打って血がおかしくなったのか!? 上にばああっていったとか血管破裂したとか!?


「だ、大丈夫か!?」


バカなりにも事の重大さを感じ咄嗟に声をかけたが返事がない。

こういう時はどうすれば……!

焦りの中でも俺はノアの頭を触ったり首を触ったりと体温とか怪我の様子を見てみたが、その辺は異常がなさそうだ。

奥義なんて使うんじゃなかった……っ。

いつもなら相手を気絶させても半殺しにしても後悔なんて一切しないのに、なぜか今は物凄い後悔に押しつぶされそう。そうだよな。いくら思い通りにいかないからって喧嘩も何もふってきてない相手を傷つけるのはよくないよな。


「ごめん……ごめんっ! 本当にごめん! だから、死なないで……」


俺が何回も繰り返し謝りノアの胸元に顔を埋めた。ノアの心臓の音が大きくそして、速く聞こえる。


「わかったわかったから! そろそろ俺の心臓がもたない……です……」

頭上から弱々しい声がし、顔を上げるとノアが自分自身の顔を両手で覆って唸っている。

心臓が……それってやばくねぇか!? 心筋梗塞!?


……いや、待てよ。


よーく現実を見ろ俺。


乙女ゲームに心筋梗塞なんてあってたまるか!

俺はひとつの可能性が思い浮かび、再びノアの胸元に顔を埋めた。

「うひゃっ!」

気持ち悪い悲鳴が聞こえたが、気にせずその姿勢をキープする。

相変わらずノアの心臓はうるさいくらいなってる。


「も、もう無理ーっ!!」


そんな大声と共に突き飛ばされ地面に尻もちを着いた。ノアはそこまで暑くないのに変な汗をダラダラと流し呼吸を乱して肩で息を吸っている。この情報だけでなんとなく察しがついた。


「お前、触れられると緊張すんのか?」


図星だったのか肩を大きく揺らし、口を噤んでぎこちなく首を縦に振った。

やっぱりな。あ、でもさっきこいつ散々俺の事抱きしめやがったよな?


「せ、正確に言えば……! 俺から触れるのはいいけど、触れられると極度に緊張しちゃうんだよ……特に大好きなアリスからだと……」

「あー。なるほ……はっ!?」

さらっと告白まがいな言葉を告げられ、顔に熱が集まるのがわかった。俺の心臓がさっきのノアに負けないくらい速く大きく鳴っている

こ、これがギャップというやつか……!?

俺の妹はこんな心臓に悪いもんを毎日欠かさずやってんのかよ……すげぇな。


「じゃ、じゃあ、後で!」

「お、おう。あと、で」

変な空気になってしまい、ぎこちない挨拶を交わしノアが逃げるようにどこかへ走り去っていった。

なんだよ。この思春期真っ只中のカップル見てぇなやり取りは……

ノアがどこかへ行くと入れかわりでアランがここにきた。


「おい。ノアのやつすごい形相で走ってたが、なにか……って、お前顔真っ赤だけど大丈夫か?」

「う、うるせぇ! 見んな!」

俺が目線をずらしそっぽ向くとアランは低い声で「ふーん」と呟いた。

序盤でこんなドキドキするとか……俺生きてここから出られるかな……?

そんな不安が頭をよぎったのであった。






アラン・ネイサン


愛情 : 7

友情 : 0

不信感 : 1


ノア・ネイサン


愛情 : 7

友情 : 0

不信感 : 0


テオ・ネイサン


愛情 : 5

友情 : 0

不信感 : 0


ルイス・ネイサン


愛情 : 5

友情 : 0

不信感 : 0

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