アリス、ルート選択する(1)
走る。
ひたすら走る。
俺は今、走れメロスレベルで走っている。
広い広い城の中、隠れられそうな部屋はたくさんある。
選択肢が少ないのも困るが、多すぎるのも困るもので怒涛に迷っていた。
なんだよここ! 広すぎんだろここ!!
そんなこんなで走り続けていたらついに廊下の突き当たりまでたどり着いてしまった。
今この付近にある扉の数は4つ。
もう、隠れるならこの4つのどれかに隠れるしか道はない。
引き返して見つかったら元も子もないしな。
どうしたものか……
俺が悩んでいるとジジと電波の悪いラジオのような音がして、どこぞの機械音さんの声が聞こえてきた。
《選択してください》
その言葉と同時に空中に「どの部屋を選びますか」という文字が浮かび上がった。
「今、それを悩んでんだよ!? ていうか、お前のせいでこちとら夢見心地がくそ悪ぃんだよ! 早く覚まさせろ!」
機械音に向かって文句を吐くが相変わらず回答以外は無反応。
あーもー!!
機械音はあてにならないと思い、俺は乱暴に自分の頭をかいて再び考えることに没頭した。
扉の数は4つ。
2つずつ向かい合わせで並べられている。
単純に考えれば奥の部屋の2つのうちどれかを選べば見つかるリスクが減るのでは?
手前から探して途中で諦めるかもしれないしな。
俺の優秀な頭がその答えを導き出し、俺は1番端の右側にある扉に手をかけようとした。
が、なんとなく嫌な予感がして手が止まった。
……いや、待てよ。
これは乙女ゲーム。こういう選択系のやつは必ず今後の恋愛要素に絡んでくるだろう。
ここでこいつの言う事を聞いたら後で絶対後悔するに違いない。現に今序盤の選択で適当に選んでこの世界に飛ばされたことに酷く後悔している。
来た道を戻ろう。それで他の場所に隠れるか外に出るかしよう。
他の人の足音も聞こえないし、近くには誰もいないだろ。
俺はそっと扉から離れ来た道を戻った。
途端。ゴンッと身体が何かにぶつかり派手に尻もちを着いてしまった。
「いでっ!?」
4つの扉からだいたい10mくらいだろう。それ以上先にはいけないように閉じ込められているのか透明な壁がある。
っざけんなよ!!
思い通りにいかない苛立ちで精一杯の力を込めて壁を殴ったが、ビクともしない。それどころか衝撃で俺の腕が痺れて痛い。
《無駄な抵抗は辞めてください》
声色こそは淡々としているがなんとなく機械音が半ギレしているような気がして俺はイラつきで駄々をこねる子供のように地団駄を踏んだ。
ふ☆ざ☆け☆ん☆な
なんでこいつがキレんだよ! キレてぇのは俺だっつーの!!
もういいや! 所詮夢だ! いつか覚めるだろ!
やけくそになった俺ははじめに開けようとしていた扉を勢いよく開け、ふてぶてしい面構えでズカズカと入っていった。
《アランルートに決定致しました》
機械音が何か言っていたが扉を閉める音と同時だったためよく聞き取れなかった。
というか、聞きたくなかった。