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プロローグ

「……はぁ、今日も相変わらず太陽を拝めなかったな」

 冬は日の出が遅く、日の入りが早い。

 朝早く出社し豚箱のような職場に詰められ遅くに退社する。

 健康管理される分豚の方がまだましかもしれない。


 俺は外国の血が混じった日本人だ。小さい頃は日本に住んでいたが仕事の関係で海外へ住むことになり、今はこうして出稼ぎに来ている。

 人生流れに逆らわず流される方向だけを決め生きてきた。結果がここだ。


 ふと、ため息が出る。癖かもしれない。 

 ため息が出ると幸せに成れないと言うが、それならきっと俺は一生不幸だ。


 道すがら出会う同僚達に挨拶して車へ向かう。

 今日という日ももうすぐ終わる。

 帰ったらゲームをしよう、飯食って風呂入ってオ〇ったら気分を入れ替えて明日に備えよう。


―そう、いつもと変わらない最低な日常のはずだった……はずだったんだ、トイレの中で光に包まれるまでは。



「――!!」


「―――いけ!!」

 意識の覚醒が遅い……

 朧げに怒鳴り声?が聞こえる。

 俺は一人暮らしだ、外から聞こえるような声音じゃない、もっと近くまるで向かい合っているかあのよ うな感じだと悟った瞬間、ドッと冷や汗が出た。


 目を開けると、陳腐な牛飼い風のオーバーオールを着た老齢な男がいた。

 ピッチフォークを構えて今にも襲ってきそうだ。

 訳が分からない……


「あっつぅ!」


(痛い!背中から腰あたりが痛い、ズキズキする)


「馬泥棒がさっさと家から出ていけ!」

 状況が全く理解できない、馬泥棒?俺が?

 土足でノックもせず民家に入り込んだ覚えもないのに、まさかバイオ村よろしくピッチフォーク突きつけられる日が来るなんて思わなかった。

 干し草から上体を起こしつつ手のひらを向け

「ちょ、ちょっと待ってください!ここ何処ですか!?」

 と言いつつあたりを見渡す、典型的な家畜小屋で干し草と獣臭、馬は隅に繋がれていて、心なしかおびえた馬顔をしている。

 頭上には穴が開いていてまるで何かが落ちてきたみたいだー

――俺だな、俺が落ちてきたんだ。どこから落ちてきた?どうしよう、説明できない。


「…」

「何か盗もうなんて思っていません!僕自身ついさっきまで用を足そうとトイレに入ったら……地面が光って、気が付いたらここに!!」

「何をわけのわからないことを。お前、薬でもヤったんか?」

「ヤった覚えどころか、買った覚えすらないです、お願いですその巨人を殺せそうなフォークを下ろしてください、怖いです」


 ため息をつきながらおじいさんがピッチフォークを下ろし、頭をガシガシと掻く。


「見た目は小ギレーで盗人にはみねぇが、貴族にしちゃー服以外普通だ、商人か?」


 貴族!?貴族って何?ファンタジー的な奴?やべぇよどう答えよう。


「―えっと、ここがどこだか右も左もわからない一般人です」

「ふん、馬が騒がしくってぇ朝食もまだなんだ。話ぐらいなら聞いてやるからついてきな」


 そう言葉を残し木造の一軒家へ向かって歩いていく。

 少し歩き方が傾いているから足でも痛めてるのかな?


 それにしても、自分で言うのもなんだけど俺って結構怪しいと思うわー、逆の立場なら打算がない限り家なんかに入れないね。

 さっきからちらちら見えるおばさんも不安がっているし、このまま帰った方がいいかもしれない。


 馬小屋から出る直前、馬が「キュイーン」と高くいなないた。

 俺の家から出ていけと言っているように聞こえる。

 心の中で邪魔したなと言いつつ馬小屋から出ていく。

 遠くの風景は柵と畑とぽつぽつと見える民家。

「ここって本当どこなんだ?」

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