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疼きが止まらない!

 神殿に戻ってから数日。


 至って穏やかな一日が過ごせている。


 日中、ジークはホッパの街で、暴飲暴食の限りを尽くしているが、自分は神殿に引きこもっていた。


 お父さんやレーナさんの現状が心配で、毎日眠れない日々が続いた……となれば良かったんだけど……。


 毎晩ジークの魔力回復のせいで、考え事を整理する余裕がない。もしかしたら、ジークが余計な事を考えないように気を使ってくれてるのかなと思った。


 が、それも疑わしい……。


 今晩も、頭がまた真白になるまで、執拗に下腹部に魔力を押し付けて責め立ててくる。


 正直、堪えようとすればするほど、快楽の波が襲ってくるので、今はノーガードだ。


 いろんな物が噴き出て、気付けば朝。


 まぁ、お陰で魔力の塊は半分近く溶けて、燃やされる前くらいの魔力が使えるようになっている。


 ジークの血が混じったせいか、魔力総量が二倍以上になっているっぽい。


 竜の血……恐るべし……。


 魔法が使えなかった反動は大きい。


 ジークが街へ降りるのを確認して、便利魔道具をせっせと錬成し始めた。


 まだ、テレッチアには自分は行けない。


 あの国の現状を確認するまで行動を起こすのは見送り。諜報活動で情報を集めてから侵攻する方針で、ジークもドラゴニアの騎士達も同意してくれた。


 先見隊として、マッテンさんとエドランさん、元トリオン国で密偵として活躍していた、ジェイクという犯罪奴隷が出発。


 ドラゴニア人の騎士達は、通常業務で各国の情勢を遥か上空から監視しているそうで、テレッチアを含めた周辺国に重点を置くように指示してくれたとか。


 空と地上から、情報を取りに行く体制が組まれている。


 マッテンさんから、行きがけで丁度良いと言われて、母様達やニナ、王様に生存と回復が順調である事をメモリーに込めた物と、カタリナさんと子供達宛の手紙を預けた。


 隣の国の商人ギルドまで運んでもらうのだ。


 そのまま、マッテンさん達はテレッチアの隣の国ファーレンハイト国境付近に滞在しながら、テレッチアの内情調査に、お父さん、レーナさんが健在なのか確認する任務に就く事になっている。


 二人ともテレッチアでは活動出来ないので、ジェイクの指揮の下、諜報活動に長けた奴隷を数人雇って潜伏させるそうだ。


 捕まっても奴隷であれば、契約の効果で口を割れないので安心なんだとか。


 大抵は、捕まったら殺されてしまう。


 何か、使い捨てっぽくて怖い話だった。


 人の命の安さは、相変わらずです……。




 ――温かい昼過ぎの日差しが、部屋に差し込む。


 完成した魔道具がちゃんと動く事を確認して、一息つくために、テラスから外に出て、太陽の光を全身に受ける。


 落ち着いた日に感謝したくなった。


 テラスから視線を下ろすと、神殿の祭壇が柱の隙間から見える。


 今日は、ファファさん達司祭が、ジークを象った彫像にお祈りを捧げる日みたいだ。三人が光る床に膝をついて祈っていた。


 どんな祈りの言葉なのか興味を惹かれたけど、ちょっと遠すぎて聞こえない。


 遠くからなら……と、思い神殿の側に向かった。


 覗き趣味はないですよ?


 と、自分に言い訳しながら、ステップをきめて降りる。


 こっそりと柱の陰に隠れて、ファファさん達の様子を伺う。目を閉じて、真剣にお祈りしている三人はとても神々しい。


 静まり返った神殿の中を、三人の祈りの声だけが響き渡る。


 創世の時代。始まりはユーデングルス。生命が産まれず怒りの焔が大地と大海原に境を造らしめる。しかし、命はまだ生まれず。


 弟、ケリューレウナスが雨を降らしめ、大地は瑞々しく光り輝く。小さく儚い命が世界に湧き出でる。


 リリーディーネの風の歌が、世界を駆け巡り、大地に緑が、海に命が誕生した。


 弱き命を嘆き、ジークデルドアードが涙を世界に落とす。


 生きとし生けるもの諸々に、生きる力を与えて給へた……。


 最初に産まれた……は、……


 歌声に耳を傾けていたが、何となくこの世界の成り立ちっぽい感じがした。学校で習ったのとは、全然違う……女神なんちゃーが……って、感じだったし。当時の人物がそもそも違ったりするのだ。


 種族によって創世神話が違ったりするから、ドラゴニア人ではこういう感じなんだと思う事にした。


「「「創世を司る新たな担い手が、今ここに!」」」


 突然、ファファさん達の声が大きくなり、神殿内で反響し始めた。足元の魔法陣が、七色の光を発して神殿を突き抜けていく……。


 光に目を奪われた瞬間、


 ドクンッ!


 下腹部が大きく鼓動し、脳天まで電気が走ったように痺れ始めた。徐々に足先から、指先まで痺れが広がっていく。


 やっ……やばい……。


 くの字に身体を折り、呻き声をあげて蹲った。


「竜姫様! どうしてこちらに!」


 ファファさん達が駆け寄る音が聞こえてきたが、痙攣した身体では頭を上げる事も叶わなかった。


「身体が……うごかな……ないの……」


 振り絞るように声を出し、状況を伝えようと頑張った。


「竜姫様に兆候が……」

「これは、時間がありませんわね」

「竜姫様、真祖様に兆候が出た、急いでお戻りくださいと念話を!」


 三人が焦っている。


 そんな気がした……自分に何か起きている?


 言われるがまま、ジークに念を飛ばした。


(ジーク、身体が痺れてジンジン……して動けない! 助けて! 兆候が……すぐ戻ってって)


 ジークに必死に言葉を伝えたが、こんな状況で……まさかの返答が無い!


 身体の疼きが止まらず、下半身から温かい物が堰を切ったように出始めた。


 プッシュ、プシュ


 何度も、疼く度にそれは出てくる……とっ、止まらない……止められない……。


 全身が火照って熱い。


「真祖様は……」

「待たせたな、その方達。よく知らせた、大義であるのじゃ」

「ジーク……返事して……よ……」


 ビクビクと身体を震わせながら、ジークに言葉を投げつける。


 だめだ、思考が飛びそう……。


「その方達、いつでも変われるようにしておくのじゃ。此奴の規模が我にも掴めん。最悪ここは放棄じゃ」

「仰せのままに。畏まりました、術は完成していますので、どうぞあちらへ竜姫様を」

「うぬ。予行がまさか本番になるとのぅ。どこまでも予定を狂わせる。さすがと言うわけじゃな」


 ジークが身体に手を回して抱き上げる。


「んぁぁっ! ぁぁっ!」


 触れられた刺激で、何度も達してしまった。


 ジークの腕にも掛かっちゃったかもしれない……でも、もうそんなのどうでもいい……思考が……。


「では、我がしばし念じる故、此奴が自ら慰めぬよう見ておれ」


 これっ! いつものっ!


「あぁぁぁっ! いやだぁっ! ぁぁぁっ!」


 ジークのいつもの魔力だ!


 いや、今ダメだから!


 死ぬ! ほんと死ぬから!


 言葉を掛ける余裕なんてない……。


 神殿に響き渡る、自分の絶叫。


「イギィ、アゥッッッ、アッ、アッ!」


 もうダメ……と思った瞬間、一際大きい波が自分を襲った。


「ンアァァァッ、アッ、ァァァァァァッ!」


 心臓の鼓動が、


 ドクッ、ドクッ、ドドドドドッ


 激しく動き始める。


 終わった……終わったよ……これ、死んだんじゃない?




 ――次の瞬間、自分は目を疑う。


 何か、物凄くスッキリした感覚になり、ものすごい生命力というか、力が漲りまくっている。魔力も、物凄く強力な魔法が何千発も打てそうなくらい……満たされていた。


(成功じゃな、それにしても……ここまでとは。この化け物め)

(竜姫様、とても凛々しくお美しいお姿ですわ)

(ぁぁ、私、生きてて良かった)

(竜姫様ほど美しいドラゴンは、見たことがありませんわ)


 ん? 今なんて言った?


 美しい……


 ドラゴン!


 恐る恐る、足元を見ると……ギラッと輝く鋭い足の爪。


 頭を下げようとすると、顎がグイーンっと伸びて視点が定まらない。


 ちょっと顎を引いて、再度見直す。


 あはは、いつから鉤爪を装備したっけ?


 柔らかい肌色はどこにもありませんね……。


「どうじゃ、リリス。ドラゴンになった気分は」


 言っちゃったよ! ジークさん言っちゃたよ!


 現実逃避してたのに!

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