7話
前回までのあらすじ:ラクロスの試合中、切断されたウサ耳がギャングを食べた。
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「ちょっと、何なのアレはッ!?」
ナミリがモチ助にしがみつきながら問い詰める。
「……ウサ耳に決まってるだろう」
モチ助は目をそらしながら答えた。
「ウサギの耳は人を食べないッ!!」
「いいから離してくれ! オレは逃げる!」
「私も連れてってッ!! もう足が動かないのッ!!」
ナミリがトリアルから受けたダメージは深刻だった。
「無理だ! こっちもウサ耳が欠けて力が──」
「ぴゃーッ!?」
コートの逆側から悲鳴が聞こえる。
そこではウサ耳が舌を伸ばし、チュートンのネズミたちを補食していた。
「ねえ! アレがウサ耳ッ!? 貴女はこの耳に脳の容量を取られているのッ!?」
その光景を見て、ナミリはモチ助の残ったウサ耳を掴み回した。
「最後のウサ耳を引っ張るなッ!!」
争い合う管理局チームの二人。
その間にもネズミたちは、勇敢にもうさ耳に立ち向かっていた。全ては主であるチュートンを守るためである。そして彼らは喰い殺され、数を減らす。
補食の度にウサ耳は巨大化していた。
ついにウサ耳の舌がチュートンに襲いかかる。対するチュートンは震えて動けない。
「ぴゃうッ!?」
チュートンの体が後ろへ引き寄せられた。
トリアルが風を起こして、チュートンを引き寄せたのである。
「ト、トリアルさまぁ……」
ピンチを救われ、泣きそうになるチュートン。
しかし、すぐにハッと顔を引き締めた。
「トリアルさま、あれは絶対にヤバいのです! このチュートンが時間を稼ぎます。早く逃げるです!」
恐怖で足を竦ませながら、チュートンは立ち上がる。
「いや、逃げるのはお前だ」
チュートンの前に、トリアルの背が立ち塞がった。
「お前は控え室の仲間たちと逃げるんだ」
「そんな、それはトリアルさまが──きゃうッ!?」
風がチュートンを後方へ押し飛ばした。
「心配するな、負けるつもりはない」
トリアルがクロスを深く構える。
「──網球技巧《風牙流閃》ッ!!」
トリアルのクロスから乱気流が発生する。
そして気流は集まり渦を形成する。
トリアルの奥の手《風牙流閃》。
それは巨大な竜巻を発生させる奥義。内部に渦巻くカマイタチはあらゆるものを引き裂く。
『ギギッ、ギ?』
竜巻が進む先には巨大なうさ耳。そのサイズはすでに最初のころとは違う。直立すればスタジアムの天井に届くほどの大きさとなっていた。
不気味な恐ろしさを魅せるウサ耳の怪物。
だが、この竜巻は高層ビルさえ容易に塵と変える。並みの生物が生き残れるはずはない。
「くたばれ、化け物め……」
ウサ耳が竜巻に包まれる。中からはウサ耳のものと思われる、悲鳴が聞こえた。
しばらくして、悲鳴が弱まる。そして風の中に紫色の体液らしきものが混じっていた。
さらに数秒、悲鳴は聞こえなくなった。
「やった……です?」
徐々に霧散していく竜巻。内部の様子が明らかとなっていく。
「あ、ああ……」
そこには形を保った巨大なウサ耳がいた。そのサイズは、竜巻に包まれる前よりもさらに大きくなって見える。
表面にこそ裂傷があるが、内部にはまったく届いていない。つまり、竜巻は大したダメージにはなっていなかったのだ。
さらにその傷も、すぐに蠢き再生を始めていた。
「そんな……」
チュートンが驚愕する。
『プッ!!』
「──ッ!?」
突然、ウサ耳はキバが覗く裂け目から、息を飛ばした。
一瞬でその脅威を判断したトリアル。彼女は背後にいたチュートンを庇うように抱き締める。
「グガッ!?」
トリアルの背から血と肉が弾け飛ぶ。
「え、……トリアルさま?」
チュートンの思考が追い付かない。そしてトリアルからの返事はない。
ぼんやりと前を見るチュートンの瞳。そこにはウサ耳の怪物が映る。
『ギ、……ヒッ』
ウサ耳に表情はない。しかし、チュートンにはソレがニタリと嗤ったことが分かった。
這い寄るウサ耳。チュートンは動けない。
「──まてッ!!」
ウサ耳の背後から声がする。
それはウサ耳の少女、モチ助。混沌とする状況の中、なぜかその表情は自信に満ちていた。
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