6話『自我を持つウサ耳』が、選手を襲い捕食する
ギャングチームと管理局チームのラクロスも終盤戦。
そこには得点を決めて、ご機嫌なモチ助がいた。
「あんなシュートができるなら、早く使いなさいよ」
「うさ耳への理解が足りていないな」
ナミリにの問いに、モチ助は呆れたように話す。
「『うさ耳シュート』は使いすぎると、うさ耳に自我を乗っ取られるんだ」
「……? よくわからないけど、もう一回ぐらいできるでしょ?」
■
次に得点したチームが勝利するラストゲーム。
最初にボールを持ったのは、ギャングチームのチュートン。
「ここで活躍して、トリアルさまに喜んでもらうです!」
「行かせないぜ」
チュートンの進行方向にモチ助が現れる。
「お前の相手なんてしないです」
チュートンは突然屈むと地面に潜り消えてしまった。
彼女は配下のネズミたちに命じ、コートに穴を掘らせていたのである。
(帽子の女はトリアルさまの技を受けて、もうほとんど動けないはずなのです)
地中を移動しながらチュートンは考える。
(相手ゴールのすぐ近くに飛び出してシュート! これでトリアルさまの勝ちです!)
ネズミたちがチュートンを先導する。そしてある地点でネズミたちが上を向く。そこは管理局チームのゴール前であった。
「これで終わりですッ!!」
地面から勢いよくチュートンが飛び出す。
「オラッ!!」
「ふぎゃッ!?」
しかし、チュートンの目の前にはモチ助が待ち構えていた。
想定外の事態に対応が遅れたチュートン。ボールはモチ助に奪い取られてしまう。
「何で分かったですかッ!?」
「オレはウサギの獣人だぞ! 音でわかるッ!!」
「くっ──」
モチ助を追いかけるチュートンだが、まったく追い付くことが出来ない。
「ああ、トリアルさま……」
途中にいたギャングの一人をあっさり抜き去り、モチ助はギャング側のゴールを見つめる。
「さあ、勝負だッ!!」
ゴール前にはトリアルが佇む。
「残念だが、勝負はもう終わっている」
「なにッ!?」
トリアルの言葉を聞き、モチ助は頭に違和感を覚えた。
思わず頭に触れると、モチ助の頭から何かが落ちる。
それはモチ助のうさ耳だった。
モチ助の片耳が切断されていたのだ。
「網球技巧『飛空刃』。風の刃が貴様を刻んだ」
気流を操り風を使うトリアルが放ったのは風の刃。カマイタチである。
トリアルはモチ助がギャングの一人を抜く瞬間、この飛空刃を放ちモチ助のうさ耳を切断していた。
「さあ、自慢の耳がなくなったぞ」
落ちたうさ耳を見つめ、モチ助は震えている。
「……なんだ? 今さら怖じ気づいたのか?」
トリアルの言葉に無反応だったモチ助は、突然トリアルに背を向けて全速力で走り出した。
(……逃げ出した?)
身体の欠損に恐怖を覚え、敵前逃亡。別におかしな話ではない。
「結局、貴様も我が敵ではな──ゴハッ!?」
勝ち誇るトリアルの腹部に謎の衝撃が走る。
「ぐっ……なにが……?」
トリアルが視線を下げる。そこでは、モチ助から切断されたうさ耳がイモムシのように這っていた。
「なんだコレは……?」
不可解な状況。しかし、目の前のうさ耳が攻撃してきたのは間違いない。
「トカゲの尾は切り離されても、しばらくは動くが……」
ウサギの生態に詳しくないトリアルだが、切断された部位が敵を攻撃することなどあるのか。そんな疑問が浮かぶ。
「こいつ、よくもトリアルさまをッ!!」
這い廻るうさ耳の背後にギャングの一人が現れる。
彼はクロスを振りかぶると、うさ耳に叩きつけようとした。
「待て──」
トリアルが制止の言葉を放つが、もう遅い。
「ッ!? なんだコイツはッ!?」
叩きつけられる攻撃を避けたうさ耳。それは素早く螺旋の軌道を絵描き、ギャングに襲いかかった。
そしてうさ耳は彼の肩に移動する。
「なにィ!?」
唐突に、ウサ耳の一部が裂けた。その中には無数のキバと粘着質な舌が覗く。
「あ、アギャーッ!!」
振り払おうとしたギャングの腕は噛み千切られ、さらに彼の顔を覆うようにうさ耳が張り付く。
「ア、ギ! ギイァァァアアアアアアッ!! あ、あ、……ぎ……………」
ギャングの悲鳴がスタジアムに響く。しかしその声もすぐに途切れた。
血溜まりの中に蠢くうさ耳。その質量はギャングの大きさ分、増加していた。
『ゲフッ、……じゅるり』
血溜まりから顔(?)を上げたうさ耳は舌舐めずりをする。
その様子を無言で見つめる三人。ナミリ、トリアル、チュートン。
「「「………………」」」
(((喰われたッッッ!?)))
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