5話
前回までのあらすじ:風を操るギャングに苦戦する管理局チーム
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「大丈夫か?」
スタジアムの壁まで吹き飛ばされたナミリに、モチ助が駆け寄る。
「……べつに大したことない」
そう答えるナミリだが、立ち上がると足がふらついていた。
「それより、またさっきのシュートを撃たれたらどうするの?」
ナミリはバラバラに砕けたシールドの破片を見つめる。
彼女が無事なのはシールドの強さではなく、ボールが纏っていた風に吹き飛ばされたからに過ぎない。
「効くかわからないけど、手りゅう弾でも投げようか?」
虚空から小型の爆弾を取り出すナミリ。しかしそれが通用しないであろうことは彼女が一番わかっていた。
「問題ないぞ! オレに秘策がある!」
気を沈めるナミリに対して、なぜかモチ助はテンションを上げてコートに戻っていく。
「大丈夫かな……」
このラクロスは二点先取。次に点を奪われれば敗北である。
ナミリの心に不安が広っていく。
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現在得点はギャングチームがリード。
はたして管理局チームはこの状況を覆すことができるのか。
「今度は負けねぇぞ」
試合開始のときと同じく、ボールを持ったモチ助がコートを駆ける。
「いくですお前たち!」
モチ助に対応するのはチュートン。彼女の号令でラクロスネズミたちがモチ助に襲いかかった。
「邪魔だ!」
モチ助は襲い来るネズミたちをうさ耳で弾き飛ばした。ネズミごときがうさ耳に勝つことはできないのである。
「奇抜な芸だが、それでどうする気だ?」
チュートンをあっさり抜いたモチ助の前に、トリアルが立ちはだかる。
彼女はクロスを回転させた。さきほどと同じ技、モチ助はトリアルの方へと吸い込まれていく。
「うさ耳の力を見せてやるぞ」
トリアルの攻撃に対し、なぜかモチ助は四つん這いになった。クロスは器用にうさ耳を使って保持している。
「両足で踏ん張れないなら両手も使えばいいんだ!」
宣言通りモチ助は四つの支えを使い、吸い込まれずに耐えていた。
「それで?」
トリアルが嘲笑する。
「その状態では何もできないだろう? お前の体力が尽きる方が先だ」
トリアルがクロスの回転速度を上げる。徐々にだが、モチ助の体が引き寄せられはじめた。
「残念だったな。オレはこの状態からシュートができる!」
モチ助はうさ耳を振るいシュートを放った。
「無駄だ。生半可なシュートなら我がクロスで吸収してやる」
トリアルの技を受けた相手の中には、引き寄せられる前にシュートを放つ者もいた。しかしトリアルのこの技は、相手の放ったシュートすらも引き寄せることができる。
「うさ耳を舐めるなよッ!!」
これまでと同じように、放たれたシュートはトリアルのクロスに吸い寄せられる。
そう考えていたトリアルだったが、モチ助の放ったシュートはその勢いを落とすことなく進み続けた。
「なにッ!?」
うさ耳から放たれたシュートには強力なパワーが込められている。風を操る程度ではその進行を止めることはできない。
ボールはトリアルの技を無視して、ギャング側のゴールへ向かう。
ギャング側の最後の砦。ゴールを守るのは一人のギャング。彼は筋肉に膨らんだ巨体の持ち主である。
その筋肉で野生の熊やライオンを屠ることも可能。
ギャングはクロスを振るい、自慢の筋肉でモチ助のシュートを迎撃した。
「あぎゃァァァアアアアアッ!?」
しかし勢いは全く削げない。クロスは吹き飛び、ボールはギャングに激突。
そのままボールはギャングごとゴールに叩き込まれた。
管理局チームの初得点である。
「なんだと……?」
その光景にトリアルは驚愕する。
キーパーをしていたギャングは意識不明により退場。
「うさ耳の凄さを理解できたか?」
モチ助が立ち上がる。
「まだまだこれからだぜ!」
このラクロスは2点先取。次の得点を決めたチームの勝利である。
「面白かった!」
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「今後どうなるのっ……!」
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