3話
試合が開始される。
最初に動いたのはうさ耳の少女、モチ助である。
彼女の持つクロスの網には、ボールが収められている。
このボールを相手のゴールに送れば得点である。
「よっしゃ、いくぜ!」
モチ助はギャングたちのゴールへ一直線に進む。
すると突然、モチ助の進行方向にある地面が盛り上がった。
そこから何者かが地面から飛び出し、モチ助に襲いかかる。
「うおわッ!?」
急な襲撃にモチ助は声を上げてしまう。その隙にボールが奪われてしまった。
「ぷぷっ、驚いてるです。ざーこざーこ!」
襲撃者の正体はギャングの一人。ネズミの獣人、チュートンである。
彼女は試合前から地面に潜んでいた。そしてモチ助が近くに来たタイミングで奇襲をしたのである。
「いいぞチュートン。そのまま決めてしまえ」
「行くですよ」
トリアルからの声援を受け、チュートンは管理局側のゴールへ迫る。
「ったく、いきなり抜かれてるし……」
チュートンに相対するのはナミリ。管理局側のゴール前で待ち構える。
彼女はチュートンをにらみつけた。そして何かを取り出し構える。それはサブマシンガンであった。
「は?」
突然の光景に、チュートンは驚きの声を漏らす。戸惑いで思考が停止してしまう。
「失せなさい」
チュートンに向けられた銃口から、無数の銃弾が放たれる。
「んなッ!?」
チュートンは慌てて地面を転がる。そのすぐ近くを銃弾がかすめた。
「お前、卑怯ですよッ!?」
チュートンが悲鳴に近い叫びをあげる。
「私は管理局のメンバー。この程度は問題ないの」
「こいつ、狂ってるですッ!!」
抗議するチュートン。しかし問題のサブマシンガンだが、グリップからコードが伸びている。
そして、そのコードは彼女のクロスに接続されていた。
つまり、このサブマシンガンはクロスの一部。
ラクロスの試合において、武器の持ち込みは禁止である。しかし、クロスの一部ならば問題ない。
さらにナミリは管理局のメンバーである。文句を言う者は封殺できる。
「そっちがその気なら、やってやるですよッ!!」
チュートンが言い放つと、彼女が着るコートから無数のネズミが飛び出した。
ネズミたちは隊列を作ってナミリに襲いかかる。
その動きは、明らかにチュートンの指示で動いていた。
しかし、たまたま服にいたネズミが潜んでいただけ。そう言い張られた場合、不正にはできない。
さらにチュートンはギャングのメンバーである。文句を言う者は封殺できる。
「……」
襲い来るネズミたち。その姿を見つめるナミリ。彼女は無言で銃を乱射した。
しかし、放たれた銃弾は一つとして、ネズミたちに当たることはなかった。
このネズミたちはラクロスによる訓練を受け、進化した存在。ラクロスネズミである。
彼らにとって弾丸の速度など、そよ風に揺れるシャボン玉とそう変わらない。
「お前たち、やっちまえです!」
距離を詰めたネズミたちがナミリに飛び掛かる。
「チッ」
舌打ちと共にナミリは火炎放射器を取り出した。
「えっ?」
火炎放射器によって、ネズミたちが炎に包まれる。
『ヂュギャアアアアアアアッ!?』
断末魔の叫びを上げて、ネズミたちは息絶えた。
ちなみにこの火炎放射器も当然、クロスに接続されている。不正はない。
「無茶苦茶ですよお前ッ!?」
驚愕するチュートンの背後に影が迫る。
「隙だらけだぜ」
「ふぎゃッ!?」
チュートンの背後から、モチ助がボールを奪う。
「よし、反撃だ!」
攻めと守りが入れ替わる。今度は管理局チームがギャングチームのゴールへ迫る。
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