腹が減った。だが飯は食えない。
いつもなら早く終われと思うバイトだが、今日は爆速で終わった。
おかしい。何者からかの攻撃を受けている……?
いや、皆まで言うな。
俺にもわかっている。
これが相対性理論か。
是非アインシュタイン博士に直接ご教授いただきたいが、ほとんど理解できずに終わりそうだ。
いつもより気持ち遅めに着替えて店の外に出る。
ああ、わかっている。
無駄な努力だということはな。
だが人間とはときに無駄だとわかっていても、無意味に抵抗したくなる生き物なのだ。
だって自分が可愛いから!
「お待たせしました」
出入り口前でガン待ちですか。
そうですか。
「遅ぇぞ」
不可抗力です。
「着いて来い」
そう言って歩き出すギャル先輩。
ここで着いて行かないという選択肢はありますか?
ないです。
仕方がないので乗ってきたチャリを押しながら先輩の後ろを歩く。
……。
おかしい……。
こっちは駅のある方向だ。
まさか電車に乗るというのか?
この時間に?
こっちはバイト上がりで腹が減っているというのに?
晩飯は家に用意されているというのに?
そして最悪なことに予想は的中してしまった。
「あの、どこに行くんですか」
堪らず俺はギャル先輩にたずねる。
「黙って着いて来い」
しかし、無情にも先輩は答えてくれなかった……。
「いや、定期を持ってきてないんで切符を買わないといけないんですけど」
「……」
いやだって、チャリで行くバイト先に定期なんて持っていく?
俺は財布には入れない派なんだ。
「チッ」
先輩に舌打ちの後に教えてもらえた行き先は、ちょうど地元の駅と高校の最寄り駅の中間に位置する駅だった。
おいおい、結構遠いな。
なんか腹に入れたいんだが、買いに行かせてもらえる空気じゃないんだよなぁ。
駅の売店は閉まってるから、これは絶望的か?
・アインシュタイン博士
めっちゃ頭のいい人。
どれくらい頭がいいのか、筆者の頭では説明出来ない。