夏休みは魅惑の響き
夏休みである。
期末テストはなかなかの成績だったので奨学金を剥奪されるという危機は去った。
たが、奴らは隙きあらば俺から奨学金を奪おうとしてくる。油断はまだ出来ない。
今回はイケメンの用心棒が助太刀してくれたのでどうにかなった。
持つべきものは頭の良いイケメンである。
そんなこんなで夏休みである。
夏休みの宿題とかいう俺たちを苦しめたいが為に学校が用意した、許されざる悪が存在しているが、夏休みである。
何をそんなに張り切っているのかわからないが、クソ暑いし、蝉の集団合唱で耳がバグっているが、夏休みである。
そう、夏休みというだけで全てに寛容になれる。
例えバイトに行く為にクソ暑い中、チャリを漕いでいるときに妹から『帰りにアイス買ってきて』というメッセージが届いても、ついでに自分の分も買うかと思う程度には寛容になれる。
「おい友永、ちょっとツラ貸せよ」
そう、例えボスギャル先輩に呼び出されたときに、サイドにいたギャル先輩に拉致られそうになっても寛容に受け答えできる。
「すいません、今からバイトがあるので無理です」
「チッ」
ギャル怖い。
「何時に終わる」
いやそんな、教える訳がないじゃないですか。
俺も馬鹿じゃないんですよ?
「21時です」
家の近所まで来てる相手にそんな手が通用する訳ないだろ。
学校まで電車で40分くらいかかるんだぞ。
なんでいるんだよ。
妹からのメッセージに気を取られて止まった隙きをつかれた。
何たる不覚……!
「迎えに行くから待ってろよ」
「え〜」
女の子からのお誘いがこんなに嬉しくないとは思わなかった。
「あん?」
「いえ、わかりました」
いや〜、女の子からお誘いを受けるなんて困っちゃうなぁ〜。
嬉しすぎて膝が笑っちまってるよ〜。
「で、どこでバイトしているんだ」
家の近所まで特定しているのにバイト先は知らないのか。
「ここからチャリで20分くらいのファミレスです」
店の名前は教えない。せめてもの抵抗だ。「じゃ、遅れそうなんで行きます」と言って、チャリを漕ぎ始める。
後ろから「おいっ!」とか聞こえたけど、きっと気のせいだ。
そうに違いない。
しかし、問題はこの近所にファミレスが一軒しかないことだな。
・右腕的なギャル
主人公が呼び出されたときに右側に立っていたギャル。
主人公の呼び出し係。
作中で最も設定が練り込まれていないにも関わらず、作中随一のお母さん力を持つ献身的なギャル。
口が悪い唯のいい人。
髪型はワンレンロングだといいなと思うAカップ。