イケメンという名の光に塗りつぶされる影(モブ)
この世には格差というものが確かに存在する。
誰かが得をすれば、誰かが損をする。
この世の覆す事のできない理である。
そして俺はまざまざとその格差を目の当たりにしている。
「滝川くん、おはよっ!」
「おはよう」
俺とイケメンな幼馴染は同じ高校に通っている。
地元から離れた高校のため、中学で仲の良かった連中とは別の高校だ。
つまり俺はイケメンな幼馴染と二人で登校している。
そう二人で、だ。
今しがた同じクラスの女の子が、俺たちを追い抜きざまに朝の挨拶をしていったときも二人だったはずだ。
二人だったよね?
「どうかしたか?」
「いや、なんでもない」
よかった。
俺は存在しているらしい。
今朝も洗面所の前に陣取る妹に「邪魔なんだけど」と伝えたら、「あぁ、いたんだ」と言われたからな。
少し自分の存在を疑っていたんだ。
どうやら妹には鏡に写った俺の姿が見えていなかったらしい。
そのことをイケメンな幼馴染に伝えると。
「ああ、お前って朝はめちゃくちゃテンション低いもんな」
と、笑いながら言ってきた。
つまりテンションが低いと存在感も低くなる……?
この謎を解明すべく、俺は地元の常時テンションの高い奴を思い浮かべた。
ふむ、確かにあいつは存在そのものが五月蝿かったな。
つまりテンションが高いと存在感があるのか……。
しかし、この結論にはまだ問題点が残っている。
「でもお前ってテンション高くはなくね?」
「低くはないだろ?」
確かに……。
う〜む、難問だな……。
「ほら、もう学校に着いたぞ」
思考に耽っていると、イケメンな幼馴染に肩を叩かれた。
目を前に向けると校門が見える。
「おはよう!」
「おはようございます」
「あはざーす」
朝から元気の良い体育教諭に挨拶を返して校門を通る。
早く下校時間にならないかな。
•イケメン幼馴染
主人公と幼馴染な超絶イケメン。
イケメン、頭がいい、運動できるという、走攻守揃ったヤベェ奴。
ヤベェ奴なので、主人公以外の人から避けられがち。
本人はそのことを地味に気にしている。
身長は168cmと平均的だが、隣に立っている奴がデカイのでコンプレックスに感じている。