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主人公は逃げ出した! しかし、回り込まれてしまった!(1日ぶり、2回目)

 イケメン仮面からの救援要請を受信してしまった。


 友の窮地を知ったからには駆けつけないわけには行かないだろう。


 その友を窮地に陥れたのは俺だけど。


『どこにいるんだ?』


 救援に向かうのはいいが、奴が今どこにいるのかわからない。


 奴の現在位置を知らなければ。


『校門』


 校門?


 え、校門?


 まだ普通に夏だろと思える気温の中、校門にいるの?


 あそこ日陰とかないだろ。


 何やってんの?


 奴らはもしかしたら、俺が思っているよりもずっと頭が悪いのかもしれない。


「お前ら何してんの?」


 イケメン幼馴染が疲れた顔を向けてくる。


「あなたを待っていたのよ」


 転校生は変わらぬ笑顔を向けてくる。


 あれ、おかしいな……。


 暑いはずなのに、暑くないぞ……?


「では、行きましょうか」


 どこに?


 疑問は浮かべど口に出すことはなく、粛々と転校生の後をついて歩く。


 転校生の言葉には有無を言わせぬ力が宿っているようだ。


 しばらく歩いていくと俺達が普段使っているマイナー沿線ではなく、メジャー沿線の駅の近くまで来ていた。


 こちらはメジャー沿線なだけあり、駅前に飲食店なんかがあったりする。


 そのうちの一軒のハンバーガーチェーンの店に、転校生は入っていった。


「ふぅ、生き返るわね……」


 あ、やっぱり暑いは暑かったのね。


 涼しい顔をしていたから、暑いのは俺だけどなのかと思ってたよ。


 転校生はSサイズのポテトとドリンクを、俺たちはセット商品を注文して席に座る。


「今からそんなに食べて、晩ごはんは食べられるの?」


 転校生がハンバーガーに齧りつく俺たちを見て言う。


「まあ、多少食べられる量は減るが普通に食べられるな」


「晩飯を食う頃には小腹が空いてると思うけどな」


 俺たちの発言に転校生は目を見開く。


「それにハンバーガー屋に来てハンバーガーを食べないのは何か違うだろ」


 この発言にはイケメン幼馴染も首を縦に振り肯定する。


「そう……」


 自分では考えられないことなのだろう。


 転校生は未知の生物を見る目で俺たちを見てきた。


「で、お前は何がしたかったの」


 注文した商品をあらかた食べ終えたので、ずっと聞きたかったことを聞く。


 ちなみに転校生のポテトまだは残っている。


「あの、お昼に私にはあまり友人がいないという話をしたでしょう?」


 転校生は俺の問いかけに、口に運ぼうとしていたポテトを置いて口を開いた。


「ああ、言ってたな」


 俺は昼の会話を思い出して答える。


「その、つまり……」


 そこで言葉が止まってしまったので、まだ少しだけ残っているポテトを食べながら待つ。


 転校生はなかなか言葉を続ける決心がつかないようだ。


 俺はポテトを食べ尽くしてしまった。


 仕方がないのでイケメン幼馴染のポテトに手を伸ばす。


 だがしかし、手首を掴まれて止められてしまった。


「ちょっとくらいいいじゃねぇか」


「お前のちょっとは俺にとってのちょっとじゃないからな」


 俺たちの静かな攻防が始まった。


「ふふっ」


 俺たちの攻防を見てか、転校生が笑いをもらす。


「あの、ごめんなさい。つまり、その……」


 そう言ったあとに、グッと体に力を入れると。


「お昼のあなたたちとの会話が楽しくて、放課後もそういった時間が過ごせると勝手に思ってしまっていたの……」


 転校生は俯いているのでどんな表情をしているかわからないが、恥ずかしい思いをしていることは伝わってきた。


 俺とイケメン幼馴染はお互いに顔を見合わせる。


 なるほど、理解した。


「つまり、自分だけ仲間はずれにされた気分だったと」


 転校生は頷いて肯定する。


 ふ〜ん、なんだこいつ。


 可愛いかよ。


 でも、それでキレてあの行動ってヤベェ奴だな。


「なるほどね、諸星さんは俺たちと友達になりたいわけだ」


 イケメン幼馴染の問いかけに、転校生は少し固まってから頷いて肯定する。


 なんか恥ずかし攻めしてるみたいだな。


 まあ、楽しいから続けるけど。


「友達ってなりたいからってなるもんなの?」


 イケメン幼馴染が「今それを言うな」って顔で見てきた。


 まあ、落ち着けって。


 転校生が伺うようにこちらを見上げてくる。


「友達って気づいたらなってるものだろ」


 友達になってください、なんて言ったことないしな。


「ここまで胸の内を明かしてくれたのに、諸星さん的には俺たちってまだ友達じゃないの?」


「うぅっ……」


 転校生は一度目をカッと見開くと手で顔を覆い、うめき声を上げて小さくなってしまった。


 その姿を見て、俺とイケメン幼馴染は無言で手を打ち合わせる。


 フゥーッ!


 良い性格してんな、お前!


 謎の満足感を得られた俺たちはポテト争奪戦に戻った。


 そして、俺がイケメン幼馴染に完封負けを喫した頃に転校生は復活した。


「あげるわ……」


 転校生が半分弱残っているポテトをくれた。


 転校生は良い奴である。


 今度はイケメン幼馴染が俺のポテトを狙ってくる。


 あ、あれ?


 おかしいな……。


 全然止められないぞ……?


 結局半分くらい取られた……。


 何故だ……っ!


「今日はとても楽しかったわ……」


「俺たちも楽しかったよ」


 転校生がこぼした小さな呟きに、イケメン幼馴染が応える。


「またお話してくれるかしら」


 転校生は恐る恐るといった体で言葉を紡ぐ。


 もしかしたら、俺たちを振り回していた自覚があるのかもしれない。


「今日みたいに話しかけてくればいいじゃん」


「うっ、そうね……」


 自覚があるみたいだな。


 このあと、少しだけ雑談したあとに解散した。

・作中溢れ話

校門に立っていた転校生に声をかけようとした勇者は何人もいましたが、転校生から放たれる凍てつく波動とイケメン幼馴染の顔面力という暴力の前に、敗走を余儀なくされました。

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