『ヘルメット』
「有り金全部だせや」
「ぐあっ!」
ドッと顔面を殴られた。ここは中学校の駐輪場。僕は違う学校のヤンキーに囲まれ、カツアゲされていた。
「ケッ、3千円しかもってねぇじゃねぇか」
(それは……来月の定期券代……)
僕は家から電車で学校の最寄り駅に行き、そこから自転車を使って通学していた。
ドッと腹部に殴打を食らう。
「かはっ!!」
僕は痛みと、呼吸ができなくなることでうずくまった。
「金は無ぇか。仕方ねぇな、身体で払ってもらうぜ」
お次は頭部へと拳が振り上げられた、その時――、
(僕だって男だ……やられっぱなしで黙ってはいられない)
ゴリっと鈍い音がした。
「! 痛ぇ!!」
僕はヘルメットで殴打をガードした。多分ポケ〇ンでいうところのゴツゴツメ〇トって、こんな感じなんだろうな。
「俺、手ぇ出してないからね! 全部あんたが殴ってきた結果だ」
こっちも手を出すと、最悪、訴えられ兼ねない。PTAとか何とかがでてきて、騒ぎになる。
でも――、
やられっぱなしは嫌だった。
悔しくて、悔しくて、何かしてやりたかった。
「ヒビでも入ったんじゃねぇか!?」
「コイツ、やべぇヤツだ!」
僕はふらつきながらヘルメットを構え、殴打をガードする意思を見せた。
「かっ、帰るぞ!」
「おっ、おう!」
ヤンキー達は帰っていった。
その日の夕方――、
「……ただいま」
「お帰りー、みっちゃん……!! どうしたの! そのケガ?」
「いやぁ、自転車でちょっと転んで……」
親に心配をかけたくはなかった。
「本当にそう? まぁ、手当てをしましょう」
――、
「いッ」
消毒液が染みた。
コイツはいろんな場所で僕を守ってくれる。