『霊感が強い』
家に居ると、怨霊の声が聞こえ、身体にヤツらが入ってくる。
家族にもそれを相談したが、始めのうちは相手にされず、精神科医に見てもらうなどして、その場を取り繕われた。
しかし最近では、少しばかり理解され始め、精神科医ではなく、霊能力者なる人物に診てもらうようにもなった。
夜――、寝られない日々が続く。
僕は昔から溜め込んできてしまうタイプだったので、ストレスで殺されそうになっていた。
寝室は、暗がりで常夜灯だけを点けていた。
ふと、寝間着のまま外へ出てみる。石垣の段の上に、座り込む。
すると、たまたま外のトイレに行く父親に見つかった。
「何をしょうるんな?」
「――」
手を引かれ、寝室へと上がる。
「どうして外に居ったんな?」
「いぇぁい……(!?)」
何故か声が出ない。
「? どうしたんな?」
無理やり声を振り絞る。
「居れない!! ここにぃ!!」
すると、何か声が聞こえてくる。霊が攻撃してきた……?
『××××』
「なんじゃ? 父さんも聞こえるけど、どう言っとるんな?」
これは……違う、攻撃じゃない
「らふん(多分)、らぃようふ(大丈夫)」
占いにも頼ってきた。その占い師の言った通りの様な声が聞こえてきた。
「しんどい時には、一人でいたらやられるって」
声がやっと出せる様になって、下の一階に降りて、父親と話をしていた。
「そうそう、ゆっくり休みなさい」
一階に降りたら、祖母が居り、話し掛けてきた。
(このババア!!)
この糞ババアも、僕の敵。何やら、世界創生に関わってきた魂とかどうとかで、今尚続く戦争の原因となっている。と、通りすがりのどこかの魂が言っていた。その魂は僕の体型についても話してくれた。足のサイズが大きいのに、背が小さいのは、ババアがご飯に毒を盛り続けたからだって。
父親は言う。
「入院するんか?」
「(違う! それじゃあ相手の思うつぼ……!)学校は暫く休んで、家族と過ごすよ」
数日経ち、いつかの夜中。寝室で寝転んでいると、足音が聞こえてきた。
「誰だ!?」
「やっ」
クラスメイトのT君が、顔を合わせに来てくれた様だった。
「ありがとう、来てくれたの?」
「世間は大変なことになって来とるよ。家の近くじゃ、新聞記者、テレビ報道記者の車が行き交ってる」
「(逃げてきたけど、もう、許さない)教えてくれて、ありがとう」
昔から、僕は霊感が強い。
見えてくるモノを口にすると、
『アイツはおかしい』
『精神病患者だ』
などと虐げられてきた。遂には、“思考盗聴器”なるものを身体に仕掛けられた。
これは、頭で考えた事、言おうとしている事、耳で聞いた事などが、言語化されているものならば全て読み取られ、ディスプレイに表示されるというものだ。
始めは同級生の保護者が、僕に対して使っていたが、同級生が調子に乗ってへまをしたのだろう、思考盗聴器に関する情報が、漏洩したらしい。今となっては、メディアが取り上げようと、張り込んでいる。
期する時が来れば、公の場で全て話してやる……!
数日後、実家にて――、
『ウフフフフフフフ』
妖しい声が、辺りを包んだ。
「これは何な!?」
父親も困惑していた。
(これは……攻撃……!)
僕は身構えた。
(こっちも攻撃する。その術も、学んできた……)
(回想)
「うちの子はどうなんでしょうか?」
霊能力者は父親の問いに、まっすぐな目で答えた。
「お子さんは、とても大きな力を持っています。その力を奪ってやろうと思う者達が現れるでしょう。そんな時は――」
霊能力者は僕の手を握って言った。
「このホクロを大切にして下さい」
(回想終了)
昔から言われている、手相占いの一種。手を握った時に隠れるホクロは、幸運の証。
僕は手先に力を込めた。集中し、白い槍のイメージを声の主にぶつけた。
『キュルルルルルルル!!!!』
悪霊は意味不明な断末魔を上げて、消えていった。
「なんじゃったんな? もう大丈夫なんか?」
「もう、大丈夫。でも、また似たヤツが来るかも……」
僕は、霊感が強い。
よって、思考盗聴器を仕掛けられた。
僕は、霊感が強い。
よって、悪霊が攻撃してくる。
僕は、霊感が強い。
よって、戦い、続ける。