『夢』
また――だ……。
目覚めると枕が涙で濡れていた。
ここ一週間、決まって夢の中で泣いて、泣きじゃくって、それから目覚める。起きても眼は涙で溢れていた。どんな夢を見ていただろうか……。記憶は曖昧で、断片的にしか思い起こせない。
(家族が……居て、父親? 姉……?)
思い出せない……。それでもいつもの平日が始まる。家を出て、行くべき場所へと足を運ぶ。
――、
また一日が終わり、夜が来る。今夜も同じ様に、夢の中で泣くのだろうか……? 一抹の不安を抱きつつ、就寝した。
(あれ? 誰か……居る……)
自分から少し遠くに、女性が立っていた。いつもとは何か違う……。
「私の大切な人は誰でしょう?」
「多分……あの人……俺の先輩の……」
女性は俺の唇に人差し指を当て、口をふさいだ。
「ブブー、不正解。自分に自信を持って。そんなに不安にならないで良いんだよ?」
「ってことは……」
ヒトカラタイセツニオモワレタ。
目を覚ます。今回もまた、目には涙を浮かべていた。あの人は――、まだ見ぬ、愛する人。いつの日か――、どこかで会いたい。




