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短編集  作者: 時田総司(いぶさん)


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18/20

『白昼の決戦』

店長――。




そう、ヤツは居酒屋の店長だった。ただ、それだけだった。ヤツとの歴史は、戦いに満ちた歴史だ。ヤツは以前、俺にこんな言葉を投げ掛けてきた。




「お前の母親が、お前を虐待した理由を、目を閉じて考えてみろ!」




俺は凍り付いた。正に犯罪を認めさせようかの如く、ヤツはそのセリフを言い放ったのだ。人生で初めて、人間の発する言葉に恐怖した。


(多分これが犯罪者の思考なんだ……)


そう思い、その場をやり過ごした。




居酒屋のバイトを辞めて8カ月ほど経ったある日、幻聴の様なモノが聞こえてきた。


『ドアを開けて寝ろ! 助けが来る!!』


(ホントかよ?)


俺は半信半疑だったが、とりあえずアパートのドアを開けて昼寝をするコトとした。日差しが心地よかったので、すぐに熟睡する事ができた。すると店長、ヤツが俺の自宅に数人のアルバイト店員を連れて侵入してきた。


「なんだこれは!?」


ヤツは開きっぱなしのノートパソコンのディスプレイに映った、グーグルアースを見て叫んだ。


「多分……、地図かと……」


アルバイト店員はヤツに助言した。


「へっ、知ってるぞ」


ヤツは知ったかぶる。


「ここに、これを入力したら出てくるんだろう?」


ヤツは入力部分に『ヌーディストビーチ』と入力した。何も表示されない。


「何でだ!? どうしてだ!!?」


固有名詞じゃないから……。


そしてヤツはグーグルアースの精巧さにビビり、マウスをつつきながら叫んだ。


「例えば! これを回すと、地球が回るのか!?」


もとから回っているし、地球の自転とは関係ない。


次にヤツは、熟睡している俺を見て、近付いて来た。


「へっ、コイツは、本当に死んだように寝ているんだよ」


「ホントですね」


アルバイト店員も俺を覗き込んでいる様だった。


「本当に死んでるのか!?」


ヤツはキョドり始めた。


「死んでたら、火葬されるんですかね……?」


「そうか!」


ヤツは何故かライターを手にしてそれに火を点けた。


「どうだ? 熱いだろう」


ヤツは俺に火を近づけてきた。しかし熟睡している俺は気付くことは無かった。


「熱いぞ! 本当に燃えるぞ!」


更に火を近づけたヤツは、俺の眠っている布団に火を点けた。


「本当に! 本当に!!」


ヤツは声を荒げてきた。




その時――、




ゴッと俺は無意識的に右ストレートをヤツの頬にお見舞いしてやった。


「うるせぇ……、くせぇ」


布団の焦げを嗅いでいたのか、寝ぼけたままそんなセリフを右ストレート共にくれてやった。そのまま右ひじを布団に落とした。そう、火が付いている部分に。ジュッと右ひじは火を押しつぶし、酸素不足になった火は、数秒で消えた。


(す……凄い)


アルバイト店員は只々、息を呑んで感心していた。


「へっ、もう帰るぞ!」


ヤツはアルバイト店員数人を引き連れて帰っていった。






――、




15時頃――俺、起床。辺りには焦げ臭さが。ふと、布団を見ると右側に焦げた跡が。そして来ていた寝間着の右ひじ部分に焦げ跡が。




(…………)




「何かあった?」





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