『衣食住?』
平穏な日――。日差しは少しだけ西に傾きかけている頃、俺達は会話を交わしていた。
「『衣食住』ってさ」
「?」
「何か順番、ちょっとおかしくね?」
「ヒトが生活する上で必要なモンだったっけ?」
「そうそう、『衣』とか言っても、昔はろくな服なんて無かったのに、それでも生きてこれた」
「確かに」
「次の『食』は要るな、確実にこれは保留」
「そうか、食べないと生きていけないもんな」
「最後の『住』これは、寝床かな」
「あー、寝ないと生きてけないわー」
「……あ、生きていく上で最も大事な順番にしたら、『住、食、衣』じゃね?」
「何で? 真っ先に食べなくてもいいの?」
「腹壊してたら最悪、寝て直すしかないだろ?」
「あー、なるほどね」
「だから、生きていく上で最も大事な順番にしたら、『住、食、衣』だ! でも何で衣食住とかいう言葉を使うんだ?」
「何でだろーね」
「……」
「……」
「あ、もしかして……」
「?」
「人と親しくなっていく中で、得られる情報の順番になってね?」
「あ……」
「まず出会う。衣類を見る。仲良くなったら食事をして、相手の好みを知る」
「おお!」
「最後にもっと親密になって、住居に行く。そしてその人の生活を知る」
「おお! それだ。天才!」
「ははっ、今日は冴えてるかもな」
家に帰ってその持論を親父に話してみた。
「衣食住ってあるじゃん。あれ、生きていく上で最も大事な順番にしたら、『住、食、衣』だと思うんだけど。――」
友人に話したことをそのまま、親父に話してみた。すると親父はこう返してきた。
「それは違うぞ」
「!?」
「まず衣服の衣、寒いじゃろ? 寒いと『食』の食べ物を取りに行けれんじゃろ? 服を着る。次、あったかくなる。食べ物を取りに行く。最後の『住』寝る」
そう口にした親父は自室に帰っていった。
「ニートのことかよ!!!?」




