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短編集  作者: 時田総司(いぶさん)


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15/20

『耳鼻科』

「おっ、そうだ。あいつとラーメン食いに行こう」




俺はWをラーメンに誘った。


中学校の夏休み。部活も休みだったので恐らくOKだろうと高を括って電話をかけたのだった。


「おっす、W。今日、ラーメン食いに行かないか?」


「……」


Wは暫くだんまりだった。


(ダメか……?)


するとWは口を開いた。


「しょーがない、行くか」


「サンキュー」


急ぎ足で玄関まで行き、靴を履いた。


「どこ行くんだい?」


母が話し掛ける。


「Wと、ラーメン食ってくる!」


「何言ってんの!? 今日は午後二時からの病院行く日でしょ?」


「あ……」


今日は耳鼻科の病院だった。部屋に戻って再びWに電話をかけた。


「悪い、今日は耳鼻科行く日だった。ラーメンどうする?」


「どうって、今日しか都合合う日ないしな……」


「……」


「しょーがない、病院いっしょに行って診察終わるまで待ってやるよ。お前んちのお父さん、面識あるしな。ただし、車出してもらうからな」


「悪いな、ホントありがと」




――、三人で病院に行き、Wは親父と一緒に、診察が終わるまで病院の待合室に居てもらうコトとなった。親父はWに話しかける。


「W君とうちの子のクラス、全体的に仲が悪いみたいだから、今日みたいに誘っても来ないとばかり思ってたよ」


「はは、息子さんとは違うんで」


Wは気さくに返した。続いて親父は口を開く。


「そっか、他の子達も仲良くないといけないよね。例えば様々なスポーツでは、チームワークが大事だ。一人の力だけでは、勝てないスポーツが多い」


「?」


「特に、ほら。君とうちの子がやっている野球なんてチームワークの塊みたいなものだ。一人一人が全力を尽くし、自分の持ち場で自分の仕事をしないと勝てない。そうやってプレーしていく中でもミスやエラーをカバーし合える、凄いスポーツだよ、野球は」


「そうっスね! 俺らのやっている野球ってそんな凄いスポーツだったんだなって、再認識しましたよ」




「あー、鼻ん中めっちゃ変なの入られたー」




俺は診察が終わり、二人の元へと歩み寄る。俺はWの、少しの変化に気付いた。


「W、何か嬉しそうだけど、何かあった?」


「何でもないよ。さー、ラーメン行くか!」


「W君、奢ってあげるよ」


「やりぃ!」


「親父、俺は?」


「お前はお小遣いから出しなさい」


「くー、ケチー」




その後、三人で食べたラーメンは格別の美味しさだった。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 耳鼻科という話を読ませていただきました。 題名が気になったので読ませていただいたのですがその題名の通りでした。 普通を描くっていいですよね。 良い話をありがとうございました。他の話もぜひ読…
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