『強さ』
公園――。二人の子供たちがキャッキャと追いかけっこをして遊んでいる。それを遠目に二人の夫婦が立ち尽くしていた。女性の方が口を開く。
「大人ってさぁ、弱い生き物なんだなって最近よく思うんだ」
「?」
「高校三年生まではぜんっぜん泣いたコトなんてなかったのに、その年の部活の引退試合で、ボロ泣きした。もう、二度と皆と一緒にプレイ出来ないのかってなると、涙が溢れだしてきて――、それからもっと歳をとると涙袋がもっともっと大きくなっていって――、涙腺が緩くなっていって――、泣き虫になっていって――」
「そうやって大人は弱くなっていくんだよ」
「! ――」
遠くでは子供たちが声を出してはしゃいでいた。
「まてー!」
「やー!」
「そして子供から教わっていく――。子供の強さを――、人の強さを――」
「そう……だね……」
遠くの子供の一人が、足を滑らせて転んだ。
「あっ!」
「おっ!」
女性が駆け寄った。
「ゆー君、大丈夫?」
ヒザこぞうから血が滲んでいた。
「あっ、血が……」
「大丈夫!」
再び子供は走り出した。
男性が近寄ってきた。そして口を開く。
「なっ、強いだろ?」
「……」
「こらー! まてー!」
目前では子供たちが追いかけっこをしている。
「……うん!」
女性は笑顔で答えた。




