『不幸せ』
「あー。期末テスト、また赤点とったかもー。最悪―」
クラスの女子が嘆いていた。
「アタシってホント運無いわー。何でこんなに頭悪く生まれたんだろー? 最悪だわー」
「!?」
不意に俺はその女子に近付いた。
そして話し掛ける。
「勉強なんて、時間かけてやったらできるもんだろ? 休みの日に8時間とかやったら……」
「8時間!? ムリムリムリムリ! それができないから頭悪いの! できる子は違うねー。そんな頭に生まれたかったわー」
「俺みたいなのに?」
「そー!」
「俺の人生なんて、不幸なだけだぞ?」
「何でー? 自分から勉強できて、成績もいいのにー」
「……話すか」
「?」
ハテナ顔の女子。それに構わず俺は口を開いた。
「俺の人生はまず、生まれてから虐待を受けるところから始まる」
「!!!!」
「そして小2くらいで母親が離婚する。そして父親は母方の祖母から借金800万を肩代わりされる。更に小6では当然の如くいじめに遭う。更に更に中1で――」
「ストーップ!!」
「?」
「もういい、分かった。あんたの勝ちだわー。アタシもっと頑張るね。じゃねー」
女子は手を振り、学校の廊下へ出ていった。
「……(まだ有ったんだが……)」
自分の実力ではどうにも出来ないマイナスな事象――、それを俺は不幸と言う。
この時、中3になりかけていた俺。まだ、真の不幸を知らなかった。
“それ”が起こった後の俺。
俺ってまだ、幸せだったんだ……。




