表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/7

第2章-1 その後の世界

なんかそのままダイブして終わりだと実際の状況も収まらないかと思って続きを書きました。


 ハイパースプレッダー本山勝彦が崖からダイブして数週間後、崖下から身元不明の死体が発見された。ちょうど崖から落ちた時間にそこを通過する車両が無く、事故に気がつくものがいなかった。たまたまその近くを通った漁船が、崖下の岩場にバイクが落ちているのを発見して、警察へ通報した事でようやく事故に気がついた。


「おーい!! 生きているか?」


 レスキュー隊の松中はロープで下降しながら倒れている男性に声をかけた。だんだん岩場に近づいて来て男性を見るが、右手が無く左手も足もあらぬ方向を向いており、腐敗も始まっているようで、ひと目見て生存の可能性が無いことを理解した。無線で死亡を確認したことを伝え、引き上げ用のストレッチャーを下ろしてもらう。後発隊の吉光が合流して事故の現場写真を撮る。


「松中さん、これは多分即死ですね。たまたまガードレールの無い部分に突っ込んで来るって、運が悪いのか、自殺なのか……」


「そうだな……まだ若そうに見えるが可愛そうだな」


「うわっ!!」


「吉光、どうした?」


「うわぁ、何か頭から降ってきたと思ったら、何か血のような物が降ってきたんですが……クサッ」


 松中は上を見ながら


「もしかするとこの上の岩場に最初にぶつかって右手を失ったんじゃないのか?岩場の上に右手が残ってないか引き上げる時に見てみよう。」


 吉光が身元の確認ができるような物を探していた。ウェストポーチのようなバッグが見つかり中を探る。携帯電話と財布が出てきた。


「松中さん、身元もわかりそうなので、引き上げますか?


「そうだな、バイクは警察にどうするかは任せて、とりあえず救護者を運ぼう」


 二人でストレッチャーに遺体を乗せ落ちないようにしっかりとベルトを結び、無線で引き上げ作業をお願いした。


「とりあえずあの岩場まで行こう」


 松中はそう言いながら、ロープを登り始めた。案の定岩場の端に、被害者の右手が落ちていた。多分さっき落ちたのは腐った体液なんだろう。きれいな布で包み新しく下ろしてもらったロープに結んで上げてもらう。


「吉光、ここの写真も撮っておいてくれ」


「はい」


 写真を撮り上の道路まで戻ってみると、警察も一緒に遺体を囲んでいた。ウェストポーチを開け免許証を確認していた時に誰かが


「本山勝彦って何処かで聞いた名前なんだが?」


「有名人なのか?」


「いや芸能人とかでは無いと思いますが、何か聞いたことあるんですねぇ」


「自分も聞いたことあります」


 そんな会話を後ろで聞いていたら


「その遺体に近寄るな、そして全員それぞれ2メートル以上離れろ! そいつはハイパースプレッダーの本山だ!!」


 全員が蜘蛛の子を散らすように散開した。それからそれぞれの部署に連絡をして全員が隔離された。


「あぁ運がないなぁ」


そう呟いたのは吉光消防士だった。コロンがまだ流行っている時期でもあり、全員が手袋にマスクしていたので、他に感染者はいなかった。ただ、頭から落ちてきた血がたまたま目の近くにあったため、こすった拍子に目から感染してしまった。戻ってから数日後コロンのCOPAN-20α型に感染していることが判明した。


 「まだCOPAN-20β型じゃないだけマシですよ! β型だったら、致死率40%近いエボラ並ですから、感染力もα型と変わらないしあっちなら助からない可能性高いですから……」


 担当の看護師からそう慰められた。COPAN-20β型は最初の本山が感染を拡大させたCOPAN-20α型より更に凶悪で、感染率も高く致死率も高いと恐れられるウィルスに進化していた。東京は緊急事態宣言後に収まるかと期待されたが、相変わらず自分は感染しないという妙な自信を持った若者たちが夜の街に繰り出し、関東は面白くないからと、ホテル代も安くなった地方への旅行が小さなブームになっていた。


 その結果……


 関東のみならず全国で緊急事態宣言がだされたが、時すでに遅しで感染の拡大が止まらなくなってしまっていた。しかもα型とβ型は世界でも日本だけで感染が広がり、完全に世界から日本は取り残されてしまった。殆どの国が日本からの渡航制限をかけていたので、世界へ広がる事は無かった。


 吉光は致死率は多少低いかも知れないが、α型に感染した時点で死を覚悟していた。


「あぁ結婚もせずに死んでしまうのは嫌だなぁ。もう少し楽しいことしたかったよ」


 看護師の栗本雪はそんな吉光を見て


「吉光さん大丈夫ですよ! 消防で体鍛えているんでしょ? 他の方に比べれば十分体力もあるし症状が出ても乗り越えられますよ」


「じゃ栗本さん、もし退院できたらデートしてくれる?


「いいですよー、でもマスクに防護服脱いだら私って判らないかもですね?」


「よーし、生きる気力が湧いてきたああああ」


 元気だった吉光だったが、その夜から急激に体調が悪くなり、肺炎の症状が出てきた。













評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ