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バックヤードアイドル  作者: 宗田明
7/7

成宮光太編 類は友を呼ぶ

 大白の研究室での談話は意外にも面白かった。

 あの後も大白の失敗した実験や。安西と成宮も今までやった無謀なチャレンジ等の話で盛り上がった。

 それから数週間。またいつも通り毎日彼女のワガママや思いつきに付き合っている。

今日のお昼も成宮の前には安西がいる。

 案の定周りからはヒソヒソ声が聞こえる。だけどもう慣れた。周りからは付き合っているだろとか、あんな変人女のどこがいいとか、お陰で俺も友達は少ない。

 今日は二人で食堂に来ている。成宮はハンバーグランチ。安西はボンゴレを食べている。

 何でこんな子と一緒にいるか。そんなの簡単だ。人間ここまで正直になれない。自分は天真爛漫で裏表もないそんな彼女に惹かれているのだ。ワガママでうざい時もある。だけど大白と話していた。夏休みの件。自分は安西から誘いが無くて有意義だと思っていたが。今思えば。退屈な毎日だった。セミの抜け殻のような夏休みだったと思う。

 もしかしたらじゃない。俺はこの安西を……

 「ん?どうした成宮?食べないのか?」

 勢いよくボンゴレをフォークに巻いて頬張っていた安西が手を止めて成宮を見た。もう安西は食べ終わると言うのに成宮のハンバーグはまだ半分だ。

 「いいや。考え事していて」

 「悩み?大丈夫?」

 「何でも無いよ。大丈夫」

 成宮はハンバーグを食べ進めた。

 「変な成宮」

 あの空白の夏休み。安西は大白と何をしたのか。気になって仕方ない。

 午後の授業も終わり。また二人で今日何をするのか話し合っていた。

 「さーて。今日は何をしましょうかね」

 安西はいつも通りニコニコしている。

 「そうだな」

 成宮はまだテンションが上がらない。

 「もう。今日の成宮、ちょっと変だよ。いつもの元気な姿どこ?どうしたのよ」

 こう彼のテンションが低いと安西の調子も上がらない。

 「いいや。何でもないよ」

 「何でもないわけないでしょ。そんなテンション低くてさ。本当にどうしたのよ。私にも言えない悩み?」

 貴方だから言えないんですよ。という成宮の一番の本心は隠しつつ。彼は口を開いた。

 「その。なんて言うか。大白さんと夏休みに何をしたのかなって、それがずっと気になって気になって。よければ教えてくれないか」

 それを聞いた安西はにやにやと笑いながら。

 「そうかそうか。なんだ成宮も可愛いとこあるじゃないか。寂しかったなら寂しいって素直に言えばよかったのに。私と大白ちゃんが楽しく話していたときに一人寂しかったのね。仕方ないな、教えてあげるよ。特別だよ」

 こいつ。俺の気持ちも知らないで。まあいい。これで今日の活動と安西の知らない部分がわかるし。これでいい。

 「あ。待てよ。そうだそうだ。この話をするなら。久しぶりにあのメンバー集めないと」

 さらに安西のニヤつきが増した。これは何か思いついたに違いない。

 「なあ、成宮。明日暇かな?」

 「明日?ああ、まあ暇だよ」

 「その話は明日ゆっくりしたいと思う。ちょっと準備もいるしね。それで、明日君の家に集合させてもいいかな?」

 「集合?ってことは何人か呼ぶのか?」

 「そうそう。その大白ちゃんとの出来事は二人でやった事じゃ無いのよ。だったら全員呼びたいのよ」

 二人じゃ無かったのか。って事はそのメンバーの中に男がいたら。いやいや、そんなハズは無い。こいつはずっと俺としか絡んでいないし。もし絡んでも男の方から逃げていく。

 だが、大白みたいな奴がいるメンバーだと。そんな中にいる男なら。この安西に惚れる奴がいてもおかしくない。

 「それで。明日家に行って大丈夫?」

「うーんと。えー、何人くらい?」

「私と大白ちゃん入れて5人かな。そんな事聞かなくても成宮の家広いからいいでしょ」

5人か。残り3人いるのか。その中に男がいるのか。

「確かに広いけど。その、残りの3人って誰なの?」

「もう質問ばかりだね成宮。だけど、それは明日のお楽しみって事でどうよ」

 またニヤつきが増えた。完全に安西に遊ばれている。まあ、これ以上質問続けても何も出てこないだろう。

 「わかったよ。明日うちに来てくれ。親には友達来るって話しておく」

 「やった!じゃあ、今日は解散!部屋の掃除とか心の準備とかあるでしょ?」

 確かに安西の言う通りだ。部屋は大丈夫だが心の準備がある。

 二人はすぐに帰り。成宮は家へと着いた。

 ただいまと言うと奥から母親がおかえりと返事が来る。

 明日のことを伝えなくては。

 「なあ。母さん。ちょっと、明日友人が来るんだよ」

 「あら。いいじゃない。どんな子来るの?」

 「覚えているよね。安西奈々が来るよ」

 この名前を聞いた瞬間。母親は嬉しそうに。

 「あらあら。ついに奈々ちゃんがうちに来るのね!これは大ニュースよ」

 「は?どうした、何がニュースだ?」

 「だって。あんたあの子の事好きでしょ。そんな子が家に来るのよ。よかったわ、安西さんの娘さんなら貴方にぴったりよ。ついにこの時が来たのね」

 どうやら母親は勘違いをしているようだ。

 「母さん。早とちりするなよ。奈々の友達も一緒だ。それにまだ付き合っていないし」

 「あら。そうなの、だけど奈々ちゃんが来ることに変わりは無いのだから。これは大きな一歩よ。それで何時頃に来るの?」

 「まだわからない。だけど学校終わったらまっすぐ向かうとは思う」

 「そう。なら16時には来るって事ね。家の事は任せてね。奈々ちゃん来るならお母さん頑張って用意しとくから」

 「いいよ。普通でいてくれたら」

 成宮はそう言って二階の自室へと向かって行った。

 「光太!頑張るのよ!」

 母親の声援が聞こえてきた。

 部屋に戻りカバンを置いて。ベッドに倒れ込んだ。

 明日奈々が来る。友達と一緒だとしても。奈々が来るのなんて何年ぶりだ。子供の時以来だな。子供の時はよくお互いの家に遊びに行ったな。

 それにしても奈々の友達ってどんな奴らだ。大白だってだいぶ変わり者。あんなのが後3人いるのか。それに男がいるかどうかも気になる。

 男がいて。奈々に惚れていて。その男がかっこよくて。奈々もまんざらじゃ無ければ。ああ。だけど怖いのはそうなったら今まで通り奈々と話せるのか。それが怖い。変わらないでいたい。考えが変わるのが怖い。

 今日は早く寝よう。

 一方安西はみんなに電話をかけていた。

 「そうそう。明日私の友達の家に集合ね!じゃあね!」

 そう言って通話は終わった。

 「よしよし。これでみんなね。久しぶりに再会するから楽しみ!学校は同じだけど中々会えないからね」

 そしてベッドにダイブしてお気に入りのぬいぐるみを抱く。

 それにしても。成宮の家か。何年ぶりだろうか。子供の時はよく遊びに行ったけど。ご両親も元気かな?それを含めて遊びに行くの楽しみ!

 緊張してあまり眠れなかった成宮に対して安西はぐっすり寝たようだ。


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