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バックヤードアイドル  作者: 宗田明
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野本明編 協力者

 野本が委員長を務める放送委員会。サークル会館2階の大部分を占める大きい部室を貰っている。報道部と同じく人気なサークルなのがこの放送委員会。

 報道部がマスコミなら。それに比べて放送委員会はTV局に近い。

 アイドルで動画を作りネットで公開する。収録や編集。報道部と同じくアイドルと接する機会も多い。それに校内で行われるイベントの音響関係を担っている。他にも雑務は沢山あるがやりがいのある委員会として人気だ。

 その部室の委員長室には野本は一人で座っていた。

 今後のスケジュールを確認しながらオレンジジュースを飲んでいた。

 みんなで食事をした後の一ノ瀬との会話。この学校の生徒会には秘密がある。それは票の操作だ。あの選挙は公正ではない。選挙管理委員会は何を見ていたのか。

 去年の10月だ。忘れもしない。現生徒会長大西と一ノ瀬が戦った生徒会長選挙。

 専門委員会はもちろん一ノ瀬を支持した。これで相当な票が入るし。しっかり選挙演説をやれば勝てると我々は思っていた。

 しかし考えは甘かった。蓋を開けてみれば大差での落選。野本を含む専門委員長もまだなったばかりだか、委員全員には必ず一ノ瀬に投票するよう促したが。明らかにそれは行われていなかった。

 一ノ瀬の落選を皮切りに。俺たち専門委員会の苦境は始まった。生徒会との会議はあんなにひどいものだったのか。先代の委員長達もあんな生徒会と戦っていた。そう言えば前の委員長もやつれがひどかったからな。

 最初は素直に負けたと思ったが。まさか裏があったとはな。

 「はあ。このままじゃ、俺たちの学園祭は生徒会にこき使われて終わりだ」

 何とかしなくては。大西会長をどうにかしなくてはいけない。

 コンコン

 部屋の扉がノックされた。どうぞと野本が声を出すと。

 失礼しますと共に副委員長の村木が入ってきた。

 「よう。どうした?」

 「野本さん。お客様です。報道部の副部長がお見えになっています」

 報道部?今日は特に打ち合わせや会議の連絡は無いぞ。いつも報道部の部長から事前に連絡が入るが。

 「要件は?」

 「はい。何でも大事な話だそうで?」

 確か報道部の副部長と言えば。南きいという女子生徒だったな。とりあえず断る理由は無いか。

 「報道部とは長い付き合いだ。まあ、入ってきてくれ」

 「はい。でも野本さん!報道部の副部長、めちゃくちゃ可愛いじゃないっすか。わかりましたよ。何でいつも俺が報道部の部室に連れて行かないか、これでわかりました」

 「おいおい。変な冗談やめろよ。先輩がいなくなり俺達の代は始まったばかりだろ。それにまだ報道部との顔合わせは来週だろ。今度挨拶に行こうな」

 「確かにそうでしたね。あんな可愛い子が副部長って事は、来年は僕が委員長で彼女が部長って事だよね。俺の未来は明るいぞ」

 変な事言いながら村木が南を呼びに行く。

 数分後。南が入ってきた。

 「お会い出来て光栄です。2年報道部副部長の南きい。本日はお忙しい中ありがとうございます」

 なるほど。村木の言うとおり中々に可愛い。可憐な感じで透明感のある子だ。

 「放送委員会委員長野本明です。こちらこそご訪問ありがとうございます。どうぞかけてください」

 「はい。失礼します」

 何とも堅い。これが委員長ってやつか。いくら委員長と言っても中身は高校生。言葉もこれであっているかわからない。

 「あの。南さん。何飲みますか?」

 まだ村木がいた。

 「あ、ええ。お構いなく」

 「いやいや。何でもありますよ!お茶ですか?ジュースですか?ここの委員長、オレンジジュース大好きで。腐る程ありますから!」

 「おい村木!」

 野本が怒鳴った。

 「はい!すいません!とりあえず持ってきます!」

 村木は慌てて委員長室にある冷蔵庫を開けて。オレンジジュースを取り出し、来客用のグラスを持ってきた。そして棚からお菓子を取り出した。

 二人の前にそれを出したら、村木はすぐに部屋を出て行った。

 「お恥ずかしい所を見られてしまいましたね」

 「いいえ。ここだけの話。うちの部長もお気楽というか。何というかで」

 南は一口ジュースを飲んだ。

 「それで今日はどんな要件で?そちらの部長からは何も連絡は無かった。それに顔合わせの会議も。そちらが犬殺しのニュースが忙しく先延ばしになっていたはずでは?」

 「野本さん。本日私がここに来たのには、報道部としての私ではありません。一ノ瀬さんが言っていた。今学校で何が起きているのか。それは調べている人物に会わせると言っていたと思います。それが私です」

 これは驚いた。まさか女の子だったとは。

 「君がその協力者か」

 「はい。厳密には協力者の一人です。流石にこの学校の把握を私一人で出来るほど甘くはありません。ですが、調べれば調べるほどこの学校は吐き気がします。腐りきっている」

 「一人?」

 「はい。私以外にもいます。ですが、その人数や誰かというはトップシークレットです。内容はいくら一ノ瀬さんの盟友。野本さんでもお教えすることは出来ません。私は報道部という立場上、野本さんと連絡も自然に出来ます。窓口や状況報告役を私が担当することになりました」

 「わかった。深くは聞かない。これからよろしく」

 「はい。よろしくお願いします。もちろんこの事は内密にお願いします。これから外で私と会っていても自然な感じでお願いします。もちろんうちの部長もこの事は知りません」

 野本がオレンジジュースを飲む。

 「もちろん。そのつもりだ。それで今日来た目的は君が一ノ瀬の協力者である事を伝えに来たって事かな?」

 「それもありますが。本題であるこの学校のことです。あまり長居は出来ません。今何が起こっているのか。この資料に目を通しておいてください。分かってはいますが、誰にも見せないでくださいね。専門委員長達にも絶対に」

 野本は南から資料袋を受け取った。南は立ち上がり一礼した。

 「あの。野本さん。改めてよろしくお願いします」

 南は出て行った。

 残された野本の手には資料袋が。

 自分のデスクに戻り。資料を開いてみようとしたその時。

 「もう!野本さん!南さん帰るなら教えてくださいよ!」

 また村木が入ってきた。今度はノックもしないで。

 野本は慌てて資料を机に隠した。村木はいいやつだ。俺の次はこいつに任せたいと思っている。だけど少しは空気を読んで欲しい。

 そう思いながら資料を隠し終わり。村木を見ると、どうもおとなしい。

 彼の目線の先には南が飲んでいたグラスがあった。

 「おい。村木。変なことしてみろ、村木委員長が南部長と迎えるはずの楽しい来年は無いと思え」

 「はい!失礼します!」

 村木はそそくさと出ていこうとした。その時だった。

 「あのー、野本さん。南さんはどういう要件でした?」

 「あ、ああ」

 不意な質問に少し声が上ずった。

 「顔合わせ含めての会議は来週でしたよね。しかも報道部は何やら高田とか言うアイドルのニュースで忙しい中。あんな大きい部の副部長が来たんです。どんな要件でした?」

 「それは…」

 考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。考えろ。

 「あの子。先に挨拶だけでもしておきたいって。放送委員会の方々を早く見てみたかったってさ」

 急に思い浮かんだ割にはいい切り返しだろう。

 「そうだったんですか!でも大切な話って?」

 「あ、ああ。それはそうでも言わないと委員長の俺に会えないと思って。無理に嘘をついたらしい。謝っていたよ。その証拠に大切な話だとしたらこんな早く終わらないだろ」

 「確かに。何か俺のこと言っていましたか?」

 何とか誤魔化せたようだ。こいつが単純でよかった。

 「ああ。明るくて楽しい人だってさ。来年が楽しみだと」

 それを聞いた村木は嬉しそうに部屋をあとにした。


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