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バックヤードアイドル  作者: 宗田明
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成宮光太編 科学研究部


 「だから!化石を探すって言っているでしょ!」

 「はいはい。わかりましたよ」

 成宮はもう声からにして嫌がっている。二人はグラウンドで言い合いをしている。

 「調べたのだが、川でよく取れるらしいのだ」

 今はまだ4月。川なんて入れるか。

 「なあ。まだ寒いぜ。風邪ひいたら困るし、夏休みやろう」

 なんとかしてやめさせたい成宮。

 「まあ、確かに寒いね。だったら、化石探しに変わる案を出すのよ!」

 「うっ……」

 返答に困る成宮。ちょっとしたことなんてすぐに反論されて終わる。

 「ほら、早く提案するの!」

 困り果てる成宮。そこに声が掛かった。

 「安西さんと成宮くんじゃない」

 長い黒髪で虫取り網を持った女の子が声をかけてきた。

 「大白ちゃん。久しぶり、クラス変わってから会わなくなったね」

 成宮が言った。

 「本当にね。ねえ、トカゲとかヤモリ見なかった?」

 彼女は大白亜紀。この子も少し変わっている。髪は安西よりも黒く長い。特に前髪は目が隠れるほど伸びている。それでいてクールで頭もいい。得意科目は理科だ。噂ではそこらの大学生以上の知識があるとか。

 そのため周りからは安西と同じように変な目で見られていた。2年生の時、クラスが一緒になり。自ずと仲良くなっていった。

 「また実験かい?」

 「ええ」

 「よし!今日は亜紀の実験を手伝おうか!」

 安西が高らかに宣言した。

 「本当に!?ありがとう、だけど奈々ちゃんにトカゲ獲りなんてさせられないわ。そうだ、私の研究を見に来てよ」

 よし!成宮は心の中でガッツポーズをした。寒い川に入るくらいなら。この大白の実験室で談話している方がよっぽどマシだ。

 そういえば、彼女の実験についてあんまり深く聞いてなかったな。ただ、恐竜がすごい好きなやつ。そんなイメージだったけど、恐竜なんてこの世にもういないし。

 彼女の実験ってなんなんだ?

 「それも面白そう。成宮、行くよ!」

 3人は大白の案内で彼女の言う、実験室に向かう。

 連れて行かれたのは夢の原高校のサークル会館だ。

 この学校には大小問わずサークル・部活が沢山存在する。

 三人が入ったとき。人気サークルの一つ報道部に誰か入ってくのを見た。成宮も一度でいいから報道部の中を覗いてみたいと思った。

 だが自分が今から向かうのは得体の知れない科学研究部。

 「ここよ。ちょっと待っていてね」

 そう言って何も表札がない部室に入って行った。ここは会館の地下一階。

 周りには黒魔術部や都市伝説研究会など、気味の悪いサークルばかりだ。

 「成宮。この部室は元科学研究部の部室だな」

 「は?どうしたいきなり」

 「なんだ、知らなかったか。3年前か私たちの入学前の年。アイドルに性的暴行を働いた奴らがいる。その時使われたという催眠ドリンク」

 「せ、性的暴行?催眠ドリンク?」

 「ああ。その催眠ドリンクを作ったのがこの科学研究部という噂よ。それによってアイドルのサークル活動は禁じられた」

 「そんな危ない部活なのか」

 「安心しなさいよ。見ての通り今は大白の実験室になっているだけだ」

 何故。安西がそんな事知っている。そして何故俺に話した。彼女とは幼馴染だが。まだ俺が知らない事沢山ありそうだ。

 「ごめん。色々片付けた。お二人さんどうぞ」

 大白が二人を案内した。その部室は研究室さながら、機材や資料で溢れている。

 爬虫類のホルマリン漬けも多くある。

 二人は椅子に腰掛けた。

 「汚い部屋でごめんね」

 大白は照れながら話した。二人は初めて見るものばかりで興味津々だ。

 「すごいね。いい部屋だと私は思うな。趣味で溢れているし」

 安西が言った。

 「大白さんの研究って何かな?」

 成宮が聞いた。

 「恐竜よ。太古のロマンってやつ」

 「それがトカゲやヤモリと関係あるの?」

 「まあ。私は恐竜を作りたいのよ」

 「つ、作る!?」

 「トカゲや爬虫類をどうにか恐竜に近づけたいのよ」

 中々にクレイジーなやつだ。うちに安西も中々な奴だが。この大白も大概だ。類は友を呼ぶとはこういう事か。

 「それで上手く行っているの?」

 安西が聞くと。

 「実験に犠牲はつきものよ」

 この返答だとあまり思った成果は出てないようだ。

 この後。安西がビーカーで作ったコーヒーを出してくれた。安西はもちろん気にせずゴクゴク飲んだが成宮は抵抗があった。

 「大丈夫よ。変な成分は入れていないわ。君達は興味深いが安西さんとは親友だと私は勝手に思っている。君たちで人体実験等はしない」

 おいおい。待てよ「君たち」では?じゃあこの子は誰かならしたことあるのか。そう考えると成宮は自然と恐怖がやってきた。

 「親友だなんて。嬉しいな」

 安西は少し照れた。

 「ふふ。あんな事した仲だからね」

 「ええ。確かにあれは記憶に残る大切な思い出ね」

 「え?何をしたのさ!?」

 成宮だけ蚊帳の外だ。聞かずにはいられなかった。

 「成宮、覚えてないか?去年の夏休み私が全然連絡しなかった時期あっただろ」

 「あっ」

 思い出した。そう言えばあの安西が全く誘ってこない夏休みが確かにあった。あの時は悠々とした最高の夏休みだった。

 「思い出したようね。そこで私達はあることをしたのよ」

 「そうそう。楽しかったわ」

 成宮は何だかもどかしかった。いつも一緒にいる彼女だが。時にはうざい時はある。だけど知らない事があるという事に悔しいというか嫉妬を感じていた。

 こんな成宮の気持ちを知ってか知らずか。

 安西は笑顔で大白とお話している。


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