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上海綺譚  作者: 古時灯葉
2/17

何故

数日間、身体を動かすことがなかった。


走るだけ。たったそれだけの所作だというのに下手に組まれた木工細工よりも不格好になる。


肩から膝から、付け根からひきちぎれそうなほど。


間に合わせでくみ上げられたような感覚は不協和音が聞こえそうだ。


そうであっても、セーマは走らざるをえなかった。


「×△※〇~!!!!」


背後から迫る、聞いたことのない声色と言葉。


金属がかちあってたてる、けたたましい音。


意味はわからなくとも、感覚でわかる。


それは、満ちあふれてるような感情。


怒り。


(どうして俺は・・・)


たった数町も走っていない。


というのに、息も絶え絶え。


思考も継ぎ継ぎで。


普段のセーマならば、そんなことは起こらない。


逃げ足だけは自信があるのだ。


と、自嘲すらできそうなほど。


(なんで、逃げなきゃ、ならないんだ)


青い空。脳天気にお天道様が光を降り注ぐ。


腹の減り具合から、たぶん昼下がり。


(こんな、言葉も、つうじない、奴ら、相手にでも、追われる、のかよ)


見ず知らずの土地。


それに怖じ気づくほどセーマは初心ではない。


彼が進む道は、あの日からまるでサイコロを投げるように。


いや、よりもめちゃくちゃだから。


知っている言葉だからこそ傷ついたこともあるし


心当たりがあるから、南へ西へ逃げ続けた。


見知らぬ言葉をわめく人間達なんて屁じゃあ、ない。


セーマは逃げる。


けれど、セーマのせいではないことを彼自身が確信していた。


たった一杯のかけそばが硬貨数十枚の価値などありえない。


たったそれだけのために食い逃げ犯として追っかけられていることも、またありえなかった。



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