ある冬の朝のこと
閑話 ある冬の朝の風景
「んあっ!?」
ぐっすり眠っていた晴輝は、突然頭部に衝撃を受け目を覚ました。
しんしんと降り積もる雪の、音なき音が響く朝。
現在は午前四時だが、外はまだ真っ暗だ。
じんじんと痛みが広がる頭部をさすりながら上体を起こす。
すると、晴輝は部屋の入り口で縮こまる植物を発見した。
「……どうしたのレア」
「(カタカタカタカタ)」
「あー、うん」
今にも死んでしまいそうな目(?)で見つめられ、晴輝はレアの言わんとしていることを察した。
薪ストーブの火が、寝ている間に消えてしまった。
そのせいで、家全体の気温が下がり、レアが凍えているのだ。
レアは寒さにめっぽう弱い。
ほんの少し適温を外れただけで、こうして眠っている晴輝を強制的に起こす有様だった。
(手足が動くから自分で火をくべればいいのに)
晴輝の家は薪ストーブだ。
薪は常に、ストーブの近くに積み上げている。
レアでも十分、薪をくべることは可能だ。
だがレアは必要以上に、ストーブに近づかない。
――彼女は火が怖いのだ。
(レアは草だし、仕方ないか)
そんなことを考えていたせいか、晴輝はレアに「早くして」と、ジャガイモでお尻を打ち抜かれた。
まったく、人使いの荒いジャガイモである。
寝ぼけ眼でストーブに向かい、薪を入れて火を熾こす。
パチパチと火が熾きると、凍えたレアが素早くストーブの前を陣取った。
カタカタと葉っぱを揺らしながら、まるで祈るように火を見つめる。
火がある程度大きくなると、レアはゆっくり後退し、丁度良い場所で葉を広げた。
ふぅ……と安堵の息を吐くように前傾姿勢になったレアは、こくり、こくりと船をこぎ始めた。
レアが落ち着くのを確認した晴輝は、再び布団に戻った。
起床時間までまだ少しある。それまではまだ、温かい布団の中でゆっくりしたい。
二の腕をさすりながら部屋に戻った晴輝が、布団を持ち上げる。
すると、
――ピッ?
――んにゅ?
晴輝が残した温もりに誘われたか、エスタとマァトが布団の中に潜り込んでいた。
「……寝る場所がない」
二人(?)で布団のど真ん中を占拠しているため、晴輝が寝るスペースがなかった。
晴輝はエスタを横にずらし、マァトを枕近くまで移動させた。
そのままベッドに潜り込み、首元まで布団をたくし上げる。
エスタがもぞもぞ動き、晴輝のお腹に移動する。
枕元のマァトが寒さから逃れるように、晴輝の首元に体を寄せた。
んもっ、とマァトの毛が首を撫でる。
(くすぐったい……)
むずむずとする感覚を堪えながら、晴輝は再び眠りに落ちていったのだった。
起床時間まで、あと1時間。
それまでは、ゆっくりと。
おやすみなさい。
今年一年、ありがとうございました。
来年もまた宜しくお願いいたします。
皆様、良い夢を!