9話
「貴方は何者だ」
すれ違いざまに傭兵の格好をした男の方が、もう一人に尋ねる。
ラフな格好をした男が立ち止まる。
「何者、とは不可思議な事を聞くな」
「この俺が調べてもわからない。そんなお前が、俺は怖い」
「さて、何のことかさっぱりだ。何を調べたのかは知らないが、お前の知る俺は間違っていないんじゃないか」
「随分饒舌じゃないか。普段はあまり喋らないくせに」
「寡黙か饒舌かを選ぶ権利くらい欲しいものだが」
「貴方は何者なんだ」
改めて尋ねるその言葉は若干震えている。
「そんなに緊張してどうした。同僚だろう? 何をそんなに緊張する」
「貴方はサディストだ。そうだろう。俺はあなたが怖い」
「何を持って恐れているのか聞かせてくれないか」
「貴方の経歴は調べさせてもらった。簡単だったよ。エルガーに聞かずとも、貴女の人種から察するに、出身はそう遠くない。軽く調べるだけであなたの事は分かった。だから怖いんだ」
吐き出すように。
「何が怖いのかさっぱりだ」
「貴方は、見知らぬ奴が用意した飯に躊躇いなく手を出すか?」
「それは、流石にしないかな」笑う。「常識的に、ね」
「すべての情報が気持ち悪い。まるで、俺が調べたいものを調べたいときに用意されているような。檻の中でえさを与えられる獣になった気分だ」
「そこまで恐怖を感じ、それでも俺に声をかける理由は何だい」
「分からず、恐怖を感じるからこそ分かることがある。貴方は同業だ。そうだろう?」
「ああ」
「やはり!」
「俺はロノウェ家の衛兵であり、お前の同業であり同僚だよ」
「そういう事じゃない。だが、もういい。これだけ聞かせてくれ」絞り出すように。「目的は何なんだ」
ラフな格好をした男は数瞬間を置く。そして軽く息を吐く。
「少なくとも、君の邪魔にはならない」
「信じていいんだな」
「君の仕事は、そんなに簡単な仕事なのか」
「分かった。勝手にやらせてもらう。だが」
衛兵の格好をした男は顎を震わせる。そして、目を瞑った後、右手の中に隠し持っていた2インチ程の小さなナイフを、振り向きざまに相手の右の動脈へと突き刺そうとする。
貴族の屋敷には様々な人間が出入りする。屋敷のトップは勿論、貴族だ。その下に付くのが執事長や衛兵長であったりする。城で考えると分かり易いだろうか。王の下に付く文官と武官と言ったイメージだろう。文官、いや執事長の下にも部下はいる。執事、メイド、料理長、執事見習い、メイド見習い、調理見習いなどだろう。衛兵長の方は、屋敷の安全を全て担っている。貴族の安全、屋敷の安全、屋敷の人間の安全まで守ることが仕事だ。彼の下にもやはり、衛兵、門番などだろうか。あまり細分化されてはいない。
この中でも例外なのが騎士と奴隷だ。騎士は貴族階級であることが殆どだ。貴族の屋敷にいることにはいるが、数は多くなく、まるで近衛のように家長の命令しか聞かない。そして奴隷だが、奴隷は貴族の直接の所有物扱いである。故に、他の人が勝手に使ったり、理由もなく痛めつけたりすることは、貴族の所有物を損壊する事と同義であるとみなされている。
さて、長々と説明をしたが、キニと言う少女を覚えているだろうか。フィロに恋し、ランドに恋される青々しき娘。彼女はメイド見習いとして奉公に来ている。キニは地方の村の村娘に過ぎないが、そこの領主がロノウェ家の派閥であるため、何年かに一度数名の若者を奉公に送ることが決まっている。そうして学んだ若者たちは、将来様々な働き手として期待される為、親元を離れなくてはならないが、希望する者は多い。
そんなキニは主に調理場で働いている。キニは一年ほど前にこの屋敷に雇われた。メイド見習いとして雇われた彼女は、他のメイド見習いと同じように様々な現場を回り、最終的に調理場に落ち着いた。いわゆる適性検査をした結果なのだが、調理場に派遣された時、キニは酷く落ち込んでいた。何故ならば、メイド見習いの調理場派遣は、屋敷の数ある仕事でかなり安い部類であるからだ。
調理場の仕事は来客があっても見えはしない。更に、来客があった時に提供される料理は、専門の料理人が作るため、メイド見習いの出番はほとんどない。ならば、彼女たちが調理場で何をしているかと言うと、主に使用人たちの賄い作りである。大雑把な作業ばかりである為、難しい事は少ない。
キニは故郷に金を送るために出稼ぎにきた娘だ。出来る限り稼ぎたいという気持ちはある。しかし、いかんせん彼女は不器用だった。実家で母親の手伝いで料理をしていなければ、屋敷を追い出されていたか、というほどだった。彼女はあまりの現実に酷く落ち込み、仕事の時間以外はベッドの中で静かに枕を濡らしていた。村の少ない金を使って送り出してくれた皆、涙を流しながら送り出した母、見送りに出ず畑仕事をしていたが、荷物にペンダントを忍ばせてくれていた父。彼らに申し訳が立たずに流した涙だった。
そんな毎日を送っていたある日のことだ。いつも通り賄いを作っていると、一人の衛兵がやって来た。フィロである。彼は単に賄いを食べに来ていた。
「ぼさっとしてんじゃないよ!」
メイド見習いの先輩が怒鳴る。
「はい、すみません」
「大して出来ることもないくせに、ぼーっとすることにかけちゃ一品だね。まったく」
「ごめんなさい」
「私はね、あんたみたいなのが大っ嫌いなのさ。田舎育ちで品も無くって、どこからか馬の臭いがプンプンしてくるよ。田舎が恋しくて馬小屋ででも寝ているのかい。何かあれはヒンヒン泣きやがって。泣けば済むとでも思ってんのかね、この子娘は。ここにゃもう親はいないんでちゅよ。赤ん坊かいってんだ」
「すみません」
「はあ、苛つかせるねまったく」
先輩は鼻を摘まむ。
「歯はしっかり磨いてるのかい。肥溜めみたいな匂いがするよ。調理場で息しないでくれないかい。料理に匂いがついちまうじゃないか」
「洗ってきます」
「そのまま帰ってくるんじゃないよ。いたって何の役にも立たないんだから。いたって無駄だろう?」
キニは我慢の限界だった。目の前の人は、何かあるとキニをいびってくる。何かが気に食わないんだろう。もしかしたら、彼女の目の前で皿をひっくり返したことが原因かもしれない。
「いやだいやだ。これだから嫌いなんだよ。こんな愚図を育てる親の顔を見てみたいもんだね。いや、見たくもないか。きっと見たら吐き気がしちまうよ。どうせ、アヒルの子はアヒル。愚図の親は愚図に決まってるのさ。迷惑だよ。愚図のくせに愚図を奉公に出すんだから。こんな愚図出したって欠片の役にも立たない。あんたらみたいな愚図で馬鹿は、なんも考えずに家畜の世話でもしてな」
先輩はご満悦だ。彼女は三十と少しで、独身である。周囲の目、それが彼女にここまでさせる。
賄いを食べるスペースには何人もいなかった。フィロ以外には、休憩中のメイド見習いが二人ほど。その二人は、カウンターの中での騒動を気にする素振りは見せながらも、第三者としての立場を守っていた。
「ここはいつから家畜小屋になったのか」
不思議と通る声が聞こえる。
「はあ?」
その場にいた全員に、ピンと張るものが現れる。
「静かに飯も食べられないのか。ここの管理者は誰だ」
「あんた、文句ある訳?」
先輩メイド見習いはフィロの座っている所にまで、のしのしと近づく。
「さあ、文句に聞こえたか」
「いけ好かないね。はっきり言いな」
「すまない。良く聞こえないんだ」
フィロは皿から目を離さない。スプーンを運ぶ手も、だ。
「耳が悪いのかい。もう一度言うよ。はっきり言いな」
「すまない、もう一度言ってくれ」
ドン、とテーブルが叩かれる。ぎしりと鳴り、テーブルの上の皿ものがひっくり返りそうになる。
「ふざけるのも大概にしな。あんた、割と新人の衛兵だろ。私はね、あんたの先輩に顔が利くんだ。一言いえば、あんたの立場なんてなくなるんだよ。分かったら余計な口はさむんじゃないよ、部外者が」
「すまない」
フィロは初めて顔をあげる。
「人の言葉でしゃべってくれないか。豚と話す趣味はない」
先輩メイド見習いは顔を真っ赤に染めあげ、口をパクパクとさせる。
「あ、あんたね!」
「ああ、もう口を開くな。君の口臭の所為で胸焼けがしてきた」
「知らないわよ、どうなっても」
フィロは立ち上がり、上からになった視線をおろす。
「品に欠ける。貴女は非常に下品だ。悪口を言うにも、もっと品を持ってもらわねば、御主人様に申し訳が立たないのでは?」
「品ですって。ふざけたこと言わないで」
「確かにふざけていたかも知れない。弱者を甚振る趣味の者に品を求めるのは門違いだった」
フィロは再び食事を開始する。その姿を見て、先輩メイド見習いは皿を手に取り、中身をぶちまける。
「なめんじゃないわよ」
「一度は見習いから上がったものの、あまりの無能さに見習いに落とされた人をなめて、何が悪い」
「く!」
先輩メイド見習いは周囲を見渡す。視線がぶつかった休憩中のメイドや、騒ぎを聞きつけた厨房の見習いたち、後からやって来た衛兵などは、ふい、と視線を切るように目を逸らす。聴衆の様子に羞恥を屈辱を感じ、フィロを睨みつけてから厨房へと戻っていく。丸まった背中のそれは敗戦の兵士のものだ。
キニは暫く放心していた。先ほどまで、自分に向かって悪態をついていた人物が、いつの間にか別の人の所で騒いでいた。すっかり涙は引っ込んでいる。
ざわざわ。止まっていた時間が動き出したかのように皆が会話を再開させる。中には、今のホットな話題について花咲かす、少し将来のスピーカーがいる。
キニはふと、フィロの方を見やる。そこでは一人、こぼれた物を掃除しようとする男がいた。
「あ、あの!」
パタパタと安い靴で床板を鳴らしながらフィロの元へ行ったキニは、袖をキュッと掴みながら声をかける。
「何」
「掃除はやります。新しいの持ってきますね」
そう言って、足早に厨房の方へ戻り、すぐに新しい賄いと掃除道具を持ってくる。
「これ、食べてください」
新しい食事がフィロのもとに渡ったことを確認して、キニは掃除を始める。
キニはふと、顔をあげた先にいる男に興味を持ち、見ることにした。それまで、何となくだが見る気はせず、礼もしないままに作業をしていた。それに気付いた恥ずかしさもあったのだろう。
「綺麗」
それまで考えていたことを忘れ、飛び出た言葉に思わず口を手で覆うキニ。その手は掃除中で、汚いという事も抜け落ちているようだ。
フィロは一人芝居を繰り広げているように見えるキニに視線を向ける。
「あ、あ。あの、何でもないです。ごめんなさい」
自分が何を言ったのか、染み込むように理解したキニは、蚊の鳴くような声で謝る。そして、誤魔化すように掃除を再開しようとするが、目の前に出てきた白いものに手が止まる。
「ハンカチ?」
「口元。使え」
「汚れてますか」
「嗜みだ」
「ありがとうございます」
「ご馳走様」
「あ、はい」
流れるように会話が終わりを迎える。キニはハンカチで口元を拭きながら、ぽやっとフィロを見つめる。
「何?」
「あ、あの」どもってしまう。「さ、さっきは、そ、その。ありがとう、ございました」
「問題ない」
フィロは皿を重ね、それを持ったまま立ち上がる。
「うるさかったからに過ぎない」
皿はカウンターに。ここのルールだ。そして去り際。フィロはキニに聞こえるようにか、そうでないのか、分からない程度の声で言うのだ。
「家族は、大切にな」
キニは掃除を終え、道具を片付けていた手を止めてしまう。
もしかして、それだけの為に。
キニと言う少女は決して馬鹿ではない。ただ、田舎も田舎の村出身で、教育を受けておらず、簡単な畑仕事と家事の手伝い以外はほとんど知らない。知らないからできない。そして、あまり社交的ではないため、他人との関係を築くことが難しく、仕事が出来るようになるのが遅い。だが、ある種閉鎖的な村で暮らしていた分、人の機微には敏感な部分もある。それで彼女は、フィロが何を思って介入したか察したのだ。それは彼女にとって、王都という都会で初めて感じた温かみと言っても過言ではなかったかもしれない。それだけ、ここでの生活は彼女にとってストレスだったのだ。
仕事に戻らなければならない。それをすぐに考えるだけ、これまで怒られてきた。厨房に入ると、奥の方で先程の先輩メイド見習いが不貞腐れたように椅子に座っている。明らかにさぼりだが、お局的な立ち位置にいる彼女に物言いができる人物はこの場にいない。
「大丈夫だった?」
キニがこの屋敷に来た頃より少し前に来た少女が話しかけてくる。名をモルタと言う。同部屋だが、特別何か話すことは無く、友人と呼べるほどの関係ではない。それでも、他よりは話す。
「今日はいつにもまして酷いね」
「私のせいです。ごめんなさい」
「ううん。勘違いしないで。あの人、ほんといつもああなんだから。困ったもんよね」
キニは複雑そうに、悲し気な表情をする。
「いつも、ごめんね。無視してたつもりはないんだけど」
「大丈夫です。分かってますから」
モルタは少し俯く。
「そう言えば、さっきの衛兵の人。知ってる?」
話題が変わる。
「え、何がですか?」
「そうじゃなくて、どういう人か、とか、名前とか」
「いえ、まったく」
「あの人はね、フィロさんって言うの。私より少しだけ前に、この屋敷で働き始めた人なんだけど、あまり話さない人らしくて、誰も詳しい事は知らないのよ」
「あの、喋っていて大丈夫ですか?」
少し明るく話すようになり始めたキニの様子に喜んだのか、キニの型を叩きながらモルタは話を進める。
「大丈夫よ。もうピークは過ぎたし、後はちらほら来るだけでしょ。仕込みも出来てるし、配るだけ。休憩していて文句言われる筋合い無いわよ。まあ、普段だったらあの人がうるさいけど、今日はさっきの今でそれどころじゃないしね」
「そ、そうですか」
「あ、そうそれでね。フィロさん、実は人気なのよ。普段は顔が見えないけど、ここに居る時は流石に見れるでしょ。初めて見た時は驚いちゃった。うわあ、かっこいい人って」
「そ、そうなんですか」
「手入れとかしっかりすれば、どこかの貴族って言われても納得しちゃうくらい。いるとこにはいるものよね。それでね、なんでこの話をしてるか分かる?」
「い、いえ」
「さっき、少し話したでしょう? 私見逃さなかったんだから」
「そんな。ほんの少しですよ」
「言い合っている声は、あの人の声ばかり聞こえて、フィロさんの声は聞こえなかったの。ねえ、どんな声してた?」
「えっと、綺麗でしたよ。どこか、暗い雰囲気ありましたけど」
「へえ。ちょっとダーティーな王子様かあ。いいなあ。倍率高いだろうな」
「倍率、ですか?」
「あ、気にしないで!」
モルタは誤魔化すように乾いたような笑い声をあげる。
「それより、どんなことを話していたの?」
「ん、んっと、それがあんまり覚えていないんです。ショックで」
「ああ、ごめんね」
「でも、最後に」
「最後に?」
「家族を大切にって」
キニはあの時の情景を思い出すように、ふんわりと言った。
「ええ? なにそれ、ギャップがすごいわね。本気で狙っちゃおうかしら」
「あの人、フィロさんでしたっけ」
「ええ、そうよ」
「また、会いたいな」
「あら、あらら?」
「え、なんですか?」
モルタはニヨニヨとキニに詰め寄る。
「あまり貴方の事って知らなかったのよね。確か、結構な田舎出身なんでしょ?」
「はい」
「周りの人たちはどんなだった?」
「え? みんな家族みたいに仲良くしてましたけど」
「幼馴染とかはいなかったの?」
「いましたよ、何人か。みんな女の子ですけど」
「若いお兄さんとかは?」
「時折来る行商の見習いさんとかは若かったですね」
ふふっと、モルタが笑う。楽しんでいる笑いだ。
「あなた、恋しているでしょ?」
「え? 恋、ですか」
「いくら何でも、恋が何かくらいは知っているでしょ?」
「あの、お話くらいなら」
「こう、フィロさんの事を考えると胸がきゅってしない?」
キニは相手の言っている事の脳内で反芻させる。
「はい、します」
キニは自分の発展途上の胸に手を当てる。
「決定よ。貴女は恋をしている。それも、現在人気急上昇中の新人衛兵、フィロさんに!」
「ん、なんか。どうなんでしょうか。ほんとにこれが恋なんですか」
「私なんて貴方からしたら恋の大先輩よ。私が言うんだから間違いない」
「そ、そうなんでしょうか」
ここから、この日の仕事が終わるまてちびちびといじられ続け、最後部屋に戻った時は、モルタはキニの隣の者とベッドを交換し、布団を重ねるようにして話しながら夜を明かした。キニにとって、歳近い友人ができたのは、ここでは初めてだ。感動もひとしお。
モルタはキニの事をずっと気になっていた。何かきっかけが欲しいと思っていた矢先の事だった。少しすると、嫌味な先輩メイド見習いは、再びメイドに昇格していった。あの優越感に浸った顔を、その場にいた全員が忘れない。きっとその顔を歪むときは近いと、心ひとつにしていた。そんな、静かになった厨房で、モルタは持ち前の社交性で、キニの良さを発信していった。恋愛の話は蜜の味。人の不幸と同じくらい中毒性のあるそれは、すぐにキニを馴染ませることに繋がった。交換したベッドはそのままだ。これはキニが希望した事らしい。モルタは人づてに聞いた。キニは自分の事を、心許せる友人だと。
あの口うるさい人物が帰ってくることは無かった。メイドの人から漏れ聞こえてくる話では、来賓に粗相をして、その場で首を言い渡されたそうだ。荷物を纏めて出て行く姿を見ることは出来なかったが、メイド見習いたちの心は一つだ。
毎日が平穏。キニにとってはそう感じる。未だにミスは絶えない。心にゆとりが生まれようと、変態したての蝶のように、すぐに飛ぶことは出来ない。翅を乾かす時はどうしても必要になる。だが、確かに彼女の視界は変わった。カウンターで賄いを渡している時、ふと探してしまう。恋なのかどうかわからない。惹かれた、というのもよくわからない。ただ、何となく。たまたま渡す仕事をしている時にフィロが来た時、熱くなる胸と頬を無視することは出来なかった。それでも、軟派な衛兵の言葉に照れてしまうのは何故だろうか、と考える時もある。小説では、恋とは一途なものと描かれていた。今の彼女は、それが自分に当て嵌まるのか、不安で仕方ない。フィロに対する想いが恋心から来るものなのか、それとも。
畏怖、なのか。