分からぬものは分からない
「おーし着いたぞー。降りた降りたー」
拓弥の推測通りに十五分。車で移動し目的地に。
千代さんに言われて、俺達は車を降りる。
そして目の前に見えるのは立派な旅館である。
「おぉー……」
「近くで見るとやっぱし迫力あるなー」
「はいはーい。ここ居てもアレだしー、早いとこ中入んぞー」
「そういうこった。こっち来てくれー」
拓弥と千代さんの案内に従って、一同建物の中に。
「婆さーん。孫とそのご友人御一行を連れてきたぜー」
ロビーの方に歩いていくと、ソファーにどっぷりと座って新聞を読んでいる人物に話しかける。
「そんなにまくしたてんでも聞こえとるよ。そないに大きな声出すな。周りに迷惑やさかい」
「そんなこと言うけどなー、もう歳いって耳とおいんだからさー」
「年寄り扱いするんじゃないよ」
「いやいや。もう七十超えてるでしょうよ」
せやな。七十超えてるなら十分お年寄りだと俺は思う。勝手な裁量ではあるが。
新聞広げたまま千代さんと会話している人物。少ししてから新聞を目の前にあるテーブルの上に置くと、ゆっくりと立ち上がった。
「元気にしとったか拓弥」
「あぁ。俺も母さんも元気にしてるよ」
「そうかそうか。それで、そっちにいるのがご友人さんかい」
拓弥と話していた白髪のお婆さんが、少し前に歩いて俺たちの方に。
「今日は来とくれてあんやとねー。学校じゃ孫が世話になっとるよ」
「いえいえそんな。こちらこそありがとうございます。このようなお誘いをして頂いて」
「ありがとうございます」
俺と橋本が一言お礼を言い、その後皆で礼をした。
「固くならんでいいよ。いんぎらーとしてくれればいいし」
「どうもありがとうございます」
「なぁ。今の方言……だよな。どういう意味なのかわからんのだが」
「私もだ」
そういや前にちょっとだけ話してたけど、虎太郎と堂口はここの出身じゃなかったな。
虎太郎は東京で、堂口は九州だったな。方言って、地元で長いこと育ってないと分からないもんだよな。
まぁずっとここで育ってきた俺でも分からないことはある。そんなに方言使わないし。
ということで二人に加え、こちらも首をかげてる凛と黒羽にも解説してやった。
「成程……」
「ゆっくりとくつろいでいってください。と」
「そういうことだ」
方言の解説コーナーは終わりにして。って思ったら、お婆さんがこんなことを。
「それにしても……拓弥に外国人のお友達まで出来てるとはねぇ」
「また私?」
「このネタもうやった」
そら金髪の女の子を見たら、初見じゃそう思うだろうよ。
最初の頃の俺も思っていたことなんだけど、金髪=外国人って考えするの、あまりに短絡的ではないかと思う。
「いやいや。そういうのじゃないから」
「あーだったらあれかい? ハーフとかクォーターとかってやつ」
「……」
お婆さんの質問に対して、拓弥は最初無言。そしてゆっくりと凛の方を向いた。
「どうなんだ狐村さん」
「え。ど、どうなんだと……言われましても……。そのはーふとか、くぉーたーというのは……」
「混血かどうかってことだ」
「そう言うものでは……ありませんが……」
「だそうだ。純血ってことにしとけ」
「あ、あぁ……」
真相は分からない。でもそういうもんではないと思う。細かいことのわからん話題を掘り起こそうとするのはやめとこう。なおのこと混乱するし。
「おやそうかい」
「おーいあんたらー。そろそろ受付済ませちまいたいから早くしてくれねーかー」
受付にて千代さんに手続きをしてもらい、俺達一同は今夜宿泊することになる部屋に向かった。
そういえばこうして旅館に来るのは初めてかもしれない。それもあって内心、とても楽しみにしていた自分がいた。
「綺麗なところですよね」
「あぁ。値段が手頃なところもここの魅力だからな。でもサービスなんかはちゃんと充実してるかんな」
「架谷。なんかいい顔してるな」
「そ、そうか? まぁ楽しみだったってのは事実だからな。それかもな」
どうやら表情にも現れるくらいにウキウキしていたようだ。変な顔してなかったよな俺?
「これからどうしましょうか。お部屋には向かうとしまして」
「まだ四時頃だろ。温泉向かうにはちょいと早い気もするけど」
「でもいいじゃん。せっかく旅館に来たんだから、すぐに楽しもうよ」
「歩きながらもあれだし、部屋ついてから決めようぜ」
階段を上り、廊下を歩き、 受付にて言われた部屋に到着した。
そこでこれからのことについてを話し合うことに。
「二部屋あるから、男女で分かれるからな。そっちの鍵、誰に預けりゃいいんだ」
「じゃあ私が」
「それじゃあ頼むわ橋本さん。男子のはお前が持っててくれ」
「なんで俺が」
どういう訳か、男子部屋の鍵の管理は俺に一任された。
理由を聞いたらお前の方が頼りになるからだと。自分はよく物を無くすからだと。
元々あんたが誘ってくれたんなんだから、お前が鍵預かってくれりゃあいいだろうに。
「それじゃあ荷物置いて、浴衣に着替えたら、すぐに温泉に行こう!」
「え。決定事項なのか」
「部屋にいたって、他にすることないだろ」
「私は温泉行きたい……かな」
もう半数はすぐに温泉に行こう。っていう流れになっているし。
「私はどちらでも」
「私は早く行きたいですね」
「だそうだ」
「……わかったよ。反対意見のやつも居ないみたいだし」
反対するものは一人もいなかった。ということで。すぐに温泉に行こうってことになり、ひとまずは男女分かれて、宿泊する部屋に入って行った。




