友人からの言伝
あのメッセージが来てからしばらく経った土曜日のこと。十四時前。
俺は今、駅の改札近くにいる。
「私もなんですか」
「そーそー京子ちゃんも。今更そんなこと言わないでよ」
「まぁ、あぁいうお誘い自体は嬉しいのですが……」
「ならいいってことでー」
凛と黒羽も一緒に居る。
ここにこうしている理由も、十日ほど前に拓弥から送られてきたメッセージがあってこそだ。
あの夜拓弥から送られてきたメッセージについて要約するとこんな具合だ。
実家の祖母の知り合いに旅館の関係者がいるとの事で、良かったら学校の友人でも誘って泊まりにこないか? と言われたとの事。
それで俺たちにそのお誘いが来たということだ。
温泉に行けるというだけあって、橋本はすごい喜んでいたっけ。「行けない理由があったとしても、行かない理由なんて何一つない!」って。
ということでこの土日は、あのグループの八人で温泉旅行を楽しむことになったのだ。
文乃さん達にもお誘いはしたそうだけど、今回は参加出来ないと言われた。
なんでもオカ研の方でなにやら活動予定があるとのことで、既に宿の方の予約を入れていたそうだ。
後日電話にて音羽さんから聞いたけど、最初は文乃さんそうとうごねてたという。でも今更、宿のキャンセルいれるわけにもいかないので、今回は不参加と言うことになった。
文乃さんはそうだけど、なんだかんだ橋本と堂口も残念そうにしてたな。この前プール行ってからより親密になったしな。
もしまたこういう機会があったら、その時はとの事で。
でもって今日の段取りについてだが、ひとまず温泉近くの駅までは電車で向かい、そこまで来たら拓弥の知り合いが迎えに来てくれるとの事だ。
ここには今いる俺ら三人と、堂口と谷内が集合。途中から拓弥、虎太郎、橋本の三人が合流することに。
谷内はここで電車の乗り換えになるので、あとは、堂口がここに来ればよしか。と考えていたらすぐだった。
「ちわーっす」
西口の方から堂口が現れた。そういえばだが、前のプールの時のことから考えたら、堂口の家って駅から見て東口の方向にあるんじゃないのか? それに……
「なんで制服なんだ」
「午前中は陸上部あったんだよ。家まで戻ってると集合時間に間に合わねぇんだよ」
「あぁ。そういうこと」
学校帰りだったようだ。
俺と軽く話をしてから、彼女は俺から見て右の方に視線を向けた。
「……それで。あの二人は何やってんだ」
「……さぁ」
ひとまず俺もその方を向いてみることに。
「そんなこと言ってるけど、京子ちゃんも行きたかったんじゃないの」
「べ、別にそんなことは……」
「またまたー。顔赤くしちゃってー」
「なんだかんだ最近の凛さん、橋本さんや堂口さんに似てきたのではないですか?」
「そうかなー」
凛と黒羽が二人で話しているんだが、なんか雰囲気がいつもと違う感じがする。いつにも増してイチャイチャしてるって言うか。
堂口がやってきたことにも気がついていないあたり、付き合い変わったなって思う。
黒羽の四月の時と今の態度の違いを見て思うことがある。黒羽って門は固い割に、入ってしまえば簡単に攻略できるような城かなんかじゃないのかと。
「……あいつらに言っといてやれ。そういうことは家でやれと」
「いや、家ならいいのか……」
「こんな衆人環視の場で良くもまぁ、あぁいうことが出来るなぁと」
あんたにも軽くブーメラン飛んできてるぞ。とは、ここでは言わないことにしておこう。
今は夏休みなんでそういうことにはならないんだが、なんだかんだ学校にいる間は何かしら理由をつけては俺の方に近づいてくる。
文乃さん程ではないんだが、最近は堂口のアピールも強くなったように思う。一回振ったんだけど、諦めは悪いようで。
「あ。明莉さん」
「ど、どうも」
「よっす」
堂口が来たことにようやく気がついた二人。黒羽はわざとらしく咳払いしてから彼女に尋ねた。
「あとは谷内さんですが……」
「それならもう大丈夫だろ。あいつは乗り換えだから、先にホームにいるだろ」
「そうでしたか」
とまぁここに集合する者は全員来たってことだ。これ以上この場にとどまっている理由はないだろう。早いとこホームに行くとしようか。
そう思った時なんだが……
「ん? どうした架谷。なんかキョロキョロしだしてよ」
「悪いな。最近どうにも誰かに見られてるんじゃないかっていう思い込みが強くなってな」
「そうとうな自意識過剰じゃねぇか」
そう言われても仕方ないとは思う。赤の他人から見れば挙動不審と思われても不思議でないだろうから。
「色々あったんだよ。入学当初の凛のこととか、文乃さんのこととか。……その他もろもろうんぬんかんぬん」
「あったねーそんなことー」
「他人事かよ」
「いや実際そうじゃん」
そうでも無いんだよなこれが。あなたも少なからず、凛や文乃さんほどまでは行かずとも関係はしていますからね。
「おーい凛。一つ頼みがある」
「なんでしょうか、明莉さん?」
「架谷の奴がなんか頭おかしいからどうにかしてくれねぇか? 前に夢咲先輩から聞いたけど、なんか変わったことできるんだろ?」
「いえいえ。私は手品師ではありませんので……」
おい。頭のおかしい奴扱いするんじゃねぇ。てか文乃さんも堂口に何を吹き込んでんだ。
正体バレかねないようなことをしないで頂けますかね?! あんたの首を絞めることにも繋がりかねないですから!
あと凛。否定するとこ違うから! 確かにそれもあるかもしれねぇけども!
「別にどこもおかしくは無いから! 至って普通だからな!」
「普通じゃなかったらそんなことしねぇだろ」
「……とにかく。早く行くぞ! もうそろそろ電車来るし、谷内を待たせてるだろうし!」
この件についてはもう聞く耳持たず。これ以上拡大されてもたまったものでは無いので、さっさとホームに向かうことにした。




