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俺の家に狐が居候している  作者: 夘月
九尾との出会い
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九尾は災難を運ぶ

「そう騒ぐてない。ますますお主の疲労が溜まることになるぞ」

「そうなる原因の大半があなたであることを理解してもらいたいですね俺は」



 凛のことについて色々苦労はあるが、何より出雲様の相手する方が俺にとっちゃもっと苦労させている。


「わこうておる。もとより今日は儂も、主と話がしとう思うたからこそここに来たわけだ」

「なら助かりますよ。聞きたいことたくさんありますからね」

「そうかそうか。遠慮せずに聞いてたもうれ」



 胸を張って、ドヤ顔で答える出雲様。なんでこの人……いや人じゃないか。まぁそれはいいとして。どうしてこうもお気楽なんだと思うわけだ。




「まず第一に。俺とあなたたちが出会ったことについては、そちらにとっても想定外の事だったはずです」

「まぁ、お主の言う通りだの」

「なのに俺は何もされないどころか、今はこうして凛を預かっているわけですけど、その辺から聞かせて貰えますか?」



 出会った経緯について、簡単にまとめておこう。金曜の晩に部屋にいた俺が、これからアニメを見ようとしていたところに、窓から一枚の御札が入ってきた。そして何が起こるのかと思えばそこから発した光によって凛が現れた。というものだ。


 あの後の話曰く、あの御札は元々は別の場所に貼られていたものだが、風の悪戯によって偶然にも俺の部屋に運ばれたのだろうと言う。



 今回の件に言えば、俺は間違いなく部外者だ。その現場を目撃してしまった以上、何らかの措置が下されてもおかしくは無い。口止めされる。その時の記憶を消される。最悪の場合であれば存在そのものを消されたであろうに。


 にも関わらずだ。みだりに口外せぬようにとは言われたが、それ以上は特に何も無く。ましてや凛をここに住まわせてくれぬかという頼み事をされた。どういうわけなのだと。




「まぁ最初に。あぁなってしまったことは仕方の無いことじゃった。過ぎたことを考えておってもどうにもならんよ。それに儂らも野蛮ではない。下手な騒ぎは起こしとうはなかったから、ならば逆に腹を割って話そうかと思うたのじゃ」


「話すつもりがあったなら、突然放棄せずにちゃんと最後まで立ち会って欲しかったですね。あの後凛から事情を聞くので結構苦労したんですよ」



 しかしそのあとはいいかげんなやり取りの末に、姿をくらませてしまう始末。


「儂も、ひとつの村を預かっておる身。色々と忙しくてのー」

「忙しいって理由にしとけば大体は容認されると思わないでくださいよ」


「まったくー。お主は頑固じゃのー」

「あなたには言われたくないですね」



 この狐、全く持って自由奔放すぎる。ちゃらんぽらんと言うところか。


 あの日は何も定まらないまま凛を家に置くことだけが決まる。その要求に応じることがある意味、口止め料みたいなものになっているのかもしれないが。


「まぁ主を頼ろうと思ったのにも。理由はある」

「真っ当な理由ですよね」

「最初にお主を色々確かめてみて分かったことがあったよ」

「なんです?」



 出雲様は少し溜め込んでからこういうのであった。


「主は口が固い。儂の勘がそう思ったからじゃ」

「………」



 勘って。それで決めちゃいかんだろ。

 さっきあんた村ひとつ預かってるって言ってたけど、そんな方がこんなくだらん理由で決めていいもんじゃないでしょうよ。


 もしその感が外れていて、俺が炎上しそうなSNSの如くその情報垂れ流ししようものなら、どうするつもりだったんですかあんたは。


 確かに、自分でも口は固い方だと思うよ。下手に漏らすのが怖いって言うのもあるけど、そもそもそうした所で俺にはなんのメリットもないからな。


 くどいようだが。それで決めちゃいかんだろうよ出雲様。



「不安そうな顔をしとるが安心せい。儂の勘はよく当たる」

「いや不安になりますよ。その自覚ないのが尚更俺を不安にさせてますよ」



 全く。これ以上話をしていても、俺の疑問は何ひとつ解決しないような気がしてくる。



「もういいです。まだ聞きたいことあるんで次行きます」


 この質問はついては、これっきりにしておこう。




「二つ目に。俺は母さんと妹になんの説明をしていないにも関わらず、翌朝起きてみたら何食わぬ顔って言うか何ら不審に思うことなく過ごしていたわけですけど、次はそこについて」



 出雲様が姿をくらまし、凛が俺の部屋を出ていったあと。俺はすぐに寝ることを選んだ。そして次の日に説明しようかと思ったら母さんも那菜も、凛がいることが当たり前のように生活していた。



「それに関してはあの時にも言うた通りじゃ。お主の身内のもんには儂が手を打っておこう。っての」

「いや言ってたような気はしますけども。そこじゃなくて。どうして何も話をしてないのにそういう風になっているのかと聞いているんですよ」


「おや忘れたのか。儂らは九尾じゃぞ。その程度のことくらい容易いことじゃ」

「容易いことって……」



 なんなの? これが聞くところの妖術ってやつなのか? 母さんと那菜を催眠術にかけたわけじゃないだろうな。



「妖しい……とまでは言わぬが、そうなるように施してあるのじゃ。故に主の母上と妹はそれを理解しておる」

「理解しておる。じゃなくてそれ催眠かけてるようなもんですよね?」

「そこらの変な術式と思うてくれるなよ。害はない真っ当なものじゃ」

「いやそれ安全を語るものじゃないですよね?! 術って言ってる時点で俺にとっては十分胡散臭いと思いますよ?!」

「まぁ良いではないか」

「いや良くない良くない」



 そういうことだと出雲様はずっと言い張っていた。……この質問についても、良い回答が得られそうにない。あと一つか。




「それじゃあ今日はこれで最後として。凛が学園に通うっていう話。何も聞いてなかったんで驚きましたよ。どういうつもりですか?」


「別に変な企みはしておらんよ。お主が儂らの世界を知らぬように、儂らもまたお主らの世界を知らないのじゃ。それをよく知るというのも、今の彼女にとっては重要な務めと言うわけじゃ」

「は、はぁ……」


「儂らの方の世界には色んなやつがおる。全てとはまだ言えないが、友好的にやっておるんよ。いつかはこちらの人間とも、手をとりあえるようになれたらええと思うておるわけよ」

「仲良く……ですか」

「もちろん最初は儂も色々考えたよ。まさかいきなり人間に出くわすとは思わなんだ。でもさっきのを考えようことなら、こうして共同生活を送るゆうのも悪いもんではないと思うたわけじゃ」

「……」


 なんだろう。やっと少しはまともな返答が来たから、何故だか混乱してしまう。

 でもこういうことを考えているのなら、それは大変なことなんだろうと思う。



「それでどうじゃ? 学園での凛の様子は?」

「……」


 今日学園であったことを振り返ってみる。噂が流れたせいで色々大変なことにもなったが、それを除いてしまえば―――――


「とても楽しそうでしたよ。クラスにも溶け込んでいましたし、新しい友人だってすぐに出来たみたいですから」

「お主がそういうのなら、儂も安心じゃ。それじゃあ凛に挨拶してから戻るとするよ」



 そう言うと、出雲様は俺の部屋を出ていった。




 結局聞きたかったことについて、ほとんど納得の得られる回答は貰えなかった。逃げられた感じもするが、考え込んでいても仕方ないのだろう。諦めは良い方だと思っている。


 まぁ。色々苦労はありそうだが、頼まれた以上はなんとかしてみるか。



「さてと。話してたら小腹減ったな……」



 机の引き出しの一番下を開けてみる。そこには自分で買い込んで置いたお菓子やカップ麺が入っており、間食や夜食なんかでつまむことが多いんだが……


「……」



 何故だか空っぽだった。そう言えばそろそろ無くなるかなぁーとは思っていたけど、昨日は少し入っていたんだし、無くなってるなんてことはいくらなんでもないだろ?


 代わりに四つ折りにされた紙切れが一枚入っていた。取り出して開いてみる。




『美味であった』




 達筆でそう書いてあった。

あの女狐め・・・


一章という名のプロローグ終了。いよいよドタバタな学園生活の始まり。

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