オカルト研究同好会
「いきなりごめんなさいね。文乃が何やら大胆なことをしちゃったみたいで」
「あぁ、大丈夫です。何回もこうして食らってたんで、もう慣れっこですから」
「俺は止めたんだがな。だがあいつはやると決めて聞かなかったのでな」
「なんと言うか……私達は、あの人が面白い人だって言うのは、分かっていますから」
「行き過ぎたところはありますけどね……」
とまぁしばらくこの部屋の入口付近で立ち話をしたあと、音羽さんにパイプ椅子を用意してもらったのでそれに腰かけた。
「それじゃあ改めまして。この私、夢咲文乃が、このオカルト研究同好会の会長をしております」
「二年の豊田穣だ。俺は副会長をさせてもらっている」
「それでさっき皆よりも先に会ったけど、僕が音羽一心」
「私が時雨由紀奈。皆二年の同級生だよ」
「どうも。一年の架谷祐真です。もうお聞きになっているかとは思いますが、夢咲さんとは中学時代からの知り合いです」
「狐村凛と言います。祐真さんとは同じクラスです」
「黒羽京子といいます」
一通り自己紹介してからは、適当な雑談が始まることとなった。と言ってもオカルト云々とは関係ない内容がほとんどなわけだったが。
「それで、皆さんはいつからこの同好会を?」
「こうして活動を始めたのは去年の六月頃になるのかな。だから来月になったらちょうど一年ってところね」
「そっかー。今思えば、もうそんなに経つのねー」
「それじゃあ来月に祝会でもやろうよ! 創設一周年記念ってことで」
「俺はそういうことにはあまり関心がない」
「そんな事言わないでよー」
そんな同好会メンバーの会話を、凛と黒羽の二人はクスリと笑いながら聞いていた。
「なんというか……面白い方達ですね」
「そうそう。祐真君が言うように、皆個性的なんだよー」
「俺からすれば、おかしい奴ばかりだと思っているがな」
「豊田が言える口なのかしら」
「お前にこそ言われたくないな」
「二人とも落ち着いて……。一年の子が目の前にいるんだからさ……」
何やら向こうの方で言い争い発生。大丈夫では無さそうだな。
とか思ってたら音羽さんがこんな提案を。
「そうだ。僕、タロット占いできるだけど、良かったら君を占ってあげようか?」
「いや、それどころじゃないと思うんですけど……」
「あの二人、結構いがみ合うこと多くてね……。夢咲さんに任せておくから」
「あぁ……それじゃあ。お願い……します」
いいんだろうかって思うけど、俺たちだとどうしようもないってのが分かっていると、なんとも言えませんな。
「おっけー。用意するからちょっとまってて」
音羽さんが立ち上がると、向こうにあるガラス棚の中からタロットカードの束を取り出した。テーブルに戻るとその上にカードを広げ、手馴れた手付きでシャッフルしていく。
「それじゃあ今度は架谷君がシャッフルして。くれぐれもカードの絵柄は見ないようにね」
「俺もやるんですか」
「君の運命の暗示を見るって意味でもあるからね」
「そういう事ですか」
ならということで、言われた通りに。さっきの音羽さんの手の動きを真似するようにカードをシャッフルする。
ある程度し終えたら音羽さんに声をかけた。そしたらそのカードをまとめると、すっと右手を動かし、綺麗な弧を描いてカードを並べた。
「さてと。それじゃあこの中から一枚。架谷君の直感でいいから、これだと思ったカードを指さしてくれないか」
「わかりました。それじゃあ……」
広げられたカードを目で追って眺めてから、俺は自分から見て、右から五番目のカードを選んだ。
「このカードで」
「はいよ」
俺の選んだカードを手に取ると、音羽さんは俺の顔とカードの絵柄とを交互に見ていた。
そしてしばらくしてから、人差し指と中指に挟んでいたカードを裏返して、俺に絵柄を見せた。
そこには逆さに吊るされた男の絵が。
「吊るし人の正位置だね。これから先、君にはまた苦労が訪れることになりそうだね」
「苦労っすか……まだ五月ですけど、正直もうお腹いっぱいですよ……」
「と言うと、色々あったのかい?この一ヶ月の間に」
「まぁ、色々とありましてね……」
この一ヶ月の間にあったことを、俺は同好会の方たちに話した。
噂が広まったことによって、俺が学院中の注目を集めることになったことを。
「成程ねぇ。転入生の話は僕も聞いていたけど、まさかその渦中の人が架谷君とはねぇ」
「楽じゃなかったですよ……自分の思い描いてたものとは全く違う方向に事が進んでいくんですから。あぁ言っとくけど、凛は何も悪くないからな」
「分かってます。でも他人事って訳にも行きませんから」
「この先も大変な事が訪れる可能性があるって事だね。今回の暗示によると」
「なるべく穏便に過ごせることを俺は祈りますよ」
高校生活はこの先まだまだ長い。できるだけ静かに過ごせることを願いたいものだ。
「よかったら、君たちも占ってあげようか?」
「そうですね……私もそのタロットというのが気になります!是非お願いします」
「わかったよ。黒羽さんはどうする?」
「いえ。私は大丈夫です」
「えーいいじゃん京子ちゃーん」
凛は黒羽の肩を揺すりながら懇願していたけど、彼女が折れることは無かった。
「私はいいですから。凛さんを占って貰えますか音羽さん」
「まぁ黒羽さんがそう言うならわかったよ。それじゃあ狐村さん。さっき架谷さんがやっていたのと同じように」
「は、はい」
凛はと言うと、運命の輪の正位置であった。音羽さんによれば、この先大きなチャンスが訪れるかもしれない。との事であった。
「さてと……いい加減に落ち着いたか二人……とも……」
「「「……」」」
俺ら三人も、音羽さんも。みんなして固まっていたよ。その先で起こっていたことにさ。
どういうわけだか、頭からゴミ箱に突っ込まれている豊田さんがいたんですもん。
何をしてたんですかあなた達は……。




