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俺の家に狐が居候している  作者: 夘月
妖しき事件簿
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異形のもの曰く

「確かに祐真さんの言う通りです。……どうしてそう思ったんですか」

「……」


 聞いてみたら、凛の表情が少し硬いものに。聞くべきではなかったのだろうか。でも拒まれてはいないようだ。

 俺は今日、彼女を追いかけていた東急スクエア内での事について凛に話した。あの女の子の行動について。



「ずっとあの女の子追ってたけど、向こうは逃げてるわけでもないのに、何故だかいつの間にかいなくなってんだよ。何処で見つけても、何回見つけてもそうだったからさ」

「……」

「極めつけは解決する直前のことだ。電話で凜は、4階であの女の子を捕まえたって言ってたよな」

「はい。そうですね」

「実はその一分程前、俺は一階であの女の子を見つけたんだ。だから電話を受けた時は終わった喜びよりもなんでそこに居るっていう驚きのほうがはるかに大きかったんだ」

「そうだったんですか?!」

「普通じゃないだろ。たったの一分で1階から4階まで移動するだなんて。階段やエレベーターが近くにあったわけでもないんだ」

「まぁ、そうですよね。そう思っても無理はありません」


 床にペタンと正座で座ると、その女の子についてのことを話してくれた。



「えっと、祐真さんは座敷童子って知ってますか?」

「まぁ聞いたことはあるよ。人の家に住みついて、その家は良いことが起こるだろうっとかって奴か。それがあの女の子の正体なのか?」

「はい。京子ちゃんはそれを探していたんです」


 凛がそう言うってことは、やっぱり人間じゃないってことか。って冷静に片付けちまってるけど、むしろこれくらいのことで驚かなくなってしまった俺自身のほうが怖い。

 というよりはだ。近くに九尾である凜や烏天狗だという黒羽という存在がいるせいか、そういうものに少しでも疑いを持つことができなくなってしまった。

 妖という存在が現代社会に溶け込んでいて、しかも同居している。慣れというものは時に恐ろしいものだ。


「えっとですね、私達のとこの座敷童子はずっとこちらにいるという訳ではなくてですね、だいたい二ヶ月毎に此処とあっちと往復してるんですよ。あっ、あっちって言うのは、私や京子ちゃんが元々いた世界のことなんです」

「ふーん。それで何か問題があったってとこか」

「はい。今回探していたあの子は半年近く経っても戻ってこなかったようなので、京子ちゃんたちのところで捜索を急いでいたみたいなんです」

「そうか。まぁ今日見つかって良かったな」


 あんな神出鬼没どころか、瞬間移動でもできるような輩を何日も追いかけ回せとか、こっちの体力が持たんわ。


「そうですね。ただ、今回の座敷童子は人に悪さするような妖怪じゃないんですが……もし性格の悪いやつだったり、人にかなりの悪影響を及ぼしたりするようなやつの場合は色々と大変になるので、監視も疎かにはできません」

「監視も楽ではないってことか」

「全てが皆穏やかだというわけでもないですから」



 まぁ今回はそんなに大したことではなかった。でも凛の言うような厄介な奴相手だとこうはいかないのか。それを考えると凛のやっている事は凄い大変な事なんだ。

 俺はそう思いつつ、同時に眠気も感じていた。



「まぁそうだな。でも今日は早めに寝ようか。俺走り回ってくたくただからさ……」

「私もです」

「明日は日曜だしゆっくり寝られるわ。夜からとはいえ親睦会もあるから、その辺の用意もしなきゃならんからさ」

「私もお手伝いしますよ」

「ありがとう。助かるわ」


 その後は各々の部屋で夢も見ずに、ぐっすりと寝ていたそうな。





「御領主様。お話に預かった少女を連れてきました」


 その夜。黒羽は今日捕まえた座敷童子の女の子をもといた所へと連れ戻しに、彼女のもといた所の領主様の元を訪ねていた。


「ご苦労であった。すまんな急に頼んでしまって。こっちもなかなかピリピリしとる者が多くてな。あなたに無理させてしまった」

「いえ、お気になさらず」

「見たところ疲れとるようだし、其方もゆっくり休んでくれ。こんな事言うのもあれじゃが無理をするんじゃないぞ。…あぁそうだ」


 御領主様は何かを思い出したように、黒羽に言う。


「なんでしょうか、領主様?」

「最近のあなた、ちょっと明るくなったのではないかと思うてな」


 そう聞かれてか、黒羽は口元をにんまりとさせて答える。


「人付き合いについて色々言われましてね。最近来た九尾の少女と、彼女と共に暮らしている人間に」

「そうか。一度会って礼を言いたいものだなその者に」

「そうですね。では失礼します」


 要件を済ませた黒羽がこの場を立ち去ろうとしたところで呼び止められる。



「あぁそうだ待ってくれ。話しておきたいことがある」

「何でしょうか。御領主様」

「つい最近から……いえ、それよりも前からでしょうか。貴女たちのいる学園とやらに、何やら怪しげな気配がいるのを感じ取ったのです」

「そうですか。向こうの九尾のお偉い様も、以前お会いした際に同じようなことを申し上げておりました」

「そうですか。やはり九尾の力は侮れませんね。っと失礼。話を戻しましょうか」


「私たち妖とは違う、異形の気配をな……」

「そう申されますと……魔族でしょうか?」

「おそらくはその線で良いとは思うて。しかし実態までは分からぬよ。暴れるような輩ではないとは思うが、十分に警戒しておくが良い」

「かしこまりました」




 現代の世には、人知れず動いているものが居ることを、心の隅にでもいいので留めておいてもらいたい。




 座敷童子は気まぐれなのかもしれません。もしあなたの家にいるのを見つけたら、暖かく迎え入れてあげてください。きっといい事が起こりますから。

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