その気配は何処へと消えるのか
まずは最上階から。下の方は凜達に任せておこう。見つからなければ降りていけばいいだけの話だ。
と言ってもさすがにここにはいないかな。近くのホテルと隣接している場所だし。そうなると4階から見ていくか?
それにしても黒羽の奴。なんでこんな時間に知り合いなんか探しているんだろうか。補習終わった後で会う約束をしていたとかか?でもそれなら黒羽が息切らせて走りながら探すくらいに、彼女から離れていくものなんだろうか。
ない頭で考えていてもよくわからねぇし、事が終わったら聞いてみるとするか。
階段降りて4階に来てすぐ。向こうの方にそれっぽいのを発見。
「おっ、いた」
捜索を始めて5分程、通路を一人歩いている、黒羽が捜しているというワンピースの女の子を見つける。ゆっくりと近づいていく。
女の子はエレベーターホールの方へと向かっていった。
「(追い詰めた。案外早く終わるなこりゃ)」
そう思っていた。
がしかし、女の子が向かっていたであろうエレベーターホールを見まわしても、さっき見つけたはずの女の子はいなかった。
近くを見回して見ると、作業員のおじいちゃんが清掃している最中であった。俺はその作業員に話を聞くことに。
「あのーすみません。この辺り誰か通っていきませんでしたか? オレンジ色のワンピースを着た、小学生くらいの女の子を今探しているんですが…」
作業員のおじさんは「んー……」と言いながら、なんともいえない顔で答えた。
「いやー見てないなぁ……。迷子かい? 良かったらおじちゃんが事務所に連絡しようか?」
「いえ大丈夫です。御手数お掛けしました。失礼します」
作業員のおじさんに一礼してから俺はその場を後にした。
追い詰めたと思ったが、また振り出しだ。よっぽどな気まぐれという所だろうか。見つけたと思ったらすぐどこかに姿を消してしまう。これは骨が折れそうだ……。
一息はいてから、階段を降りていった。
あれからというもの、同じような状況が何度も続いた。紳士服売り場や本屋、カフェテリアの近く。
色々な所で見かけるが、十メートル程離れた所にいるのを見つけて追いかけても、何故かいなくなっている。あの女の子は自由気ままに動いていて、俺らから逃げているようではなかったのに、だ。
無限ループってやつかコレ? おそろしやおそろしや。って言ってる場合でもないな……。
時々拓弥達にも電話は入れているが、その女の子が外に出ようとしてるのは見ていないと言う。まぁそうしようとしてたら連絡くらいするか。そう言っておいたんだし。
凛や黒羽にも途中で会って話してはいるが、尻尾を掴むことすらままならない状況だ。もう疲れた。
もうお手上げだわ。見つけてもすぐに見失ってしまうのだから。
そう思いながら、俺は休憩がてら、自販機で買った缶ジュースを飲んでいた。
「なんかいい方法ないもんかなー……」
そうボヤいていた時だった。スーッと俺の横を誰かが通り過ぎて行った。俺よりもはるかな小さい女の子が。
「……」
いたーー!! 思いっきり俺の前通り過ぎていったぁー! やべぇよやべぇよ。ともかく早く追わなくては!
缶ジュースの残りを一気に飲み干し、近くのゴミ箱に投げ入れて、その女の子を追いかけた。
今度は絶対捕まえる。それだけを考え女の子に追いかけていく。
確かあっちの方に向かって行って……いた。あそこだ。向こうの雑貨売り場の方だ。
今度は素早く追いかけて行った。そしてようやく近づいて呼び止めようとした寸前で女の子は左に曲がって行った。
後を追うように俺も左に曲がった。が。そこに女の子の姿は無かった。
おかしい。有り得ない。信じ難い。
すれ違ったわけでも見失ったわけでもない。なのに何故? どうして?
もうわけがわからなくなってしまった。もうこれじゃあ見えない幽霊でも探してるようなもんじゃないか! もう諦めよう。あいつらにはすまないが。そう思った時、電話が来た。
「こんなときに、誰からだ?」
携帯の画面には、凛の名前があった。
「はい?」
『あっ祐真さん。探してた女の子。さっき京子ちゃんがやっと見つけて捕まえました。疲れましたよホントに』
「本当か! はぁーよかったぁ……。俺もう諦めかけてたわ」
”諦めかけた”ではなく”諦めよう”の間違いではあるが。
「それで今どこにいるんだ?」
『えっと、今は4階にいます。京子ちゃんも一緒ですよ』
「あぁわかっ……え? 4階?」
あれ? ついさっき一階で見たはずなんだけど………どういうこと?
『ゆ、祐真さん? どうかしましたか?』
「あ。いやなんでもない。わかったわ。拓弥らにも伝えてとく。正面の入口向かうからそこで落ち合おう」
『はい。では失礼します』
おかしい。俺はついさっき、一階であの女の子を目撃したはずだ。そして何故か見失ってから一分程経って、4階で捕まえたという一報が入ってきた。
いくらなんでもそんな短時間で1階から4階に移動できるわけがない。何? 影分身? それともあの子……幽霊?
もうやだ。できることなら考えたくない。でも気になる。
「見つかってよかったです。ありがとうございました」
「いいっていいって。凛ちゃんのお役に立てたんだからさ」
「まぁお陰でかなり苦労したがな。貼り込みって言われても結構退屈だったし。あぁそうだ架谷。手伝ったわけだし……後でジュース奢ってくれよ?」
「……わかった。近くのコンビニでいいか?」
「おし決まりだ!」
拓弥に報酬をねだられる。こればっかりは仕方ないか。無理言って頼んだわけだし。
「てか黒羽は未だ来てないのかよ」
「京子ちゃんなら、あの子と一緒に先に帰りました」
「そうなのかい」
事態を解決した俺達はそこで解散した。気づけばもうすぐ夕暮れ時であった。
夜。帰ってきて夕飯食べている時も、風呂入っている時も、そして今こうしてベットに横になっている時も。同じことを考えていた。
あの女の子の事だ。どう考えても普通じゃない。追いかけどいなくなってるし、最後なんてどういう訳か瞬間移動?してるし。
そんな考え事してる俺の部屋に来客が。
「あっ、祐真さん。洗濯物を……」
「すまんな。ありがと。ところで凛」
「なんですか」
気になっていたので、ちょっぴり覚悟決めてから凛に聞いた。
「今日のあの女の子、一体なんなんだ? もしかしてだけどさ……人間じゃない……とか?」




