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俺の家に狐が居候している  作者: 夘月
妖しき事件簿
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探しているのは誰ですか?

 外で遊ぶ子供を見ていると無邪気でいいもんだと思ってしまう。俺も昔はあんなんだったのか、懐かしいものだ。そう考えたくなる。

 大人になれば、童心に返ってみたくなったり、もう一度学生をしてみたい。と誰もが一度は思うのではないだろうか。時々面倒にも感じる時はもちろんあるけど。



 親睦会を翌日に控えた土曜日の午後。補習を終えた俺達は街の方にあるアニメグッズの専門店に寄ることにした。


「いよいよ明日かー楽しみだなー」

「お前の手腕とやらを期待しようじゃねぇか」

「はいはい勝手にそうしてな。なんだかんだそのへん考えたのは、ほとんど橋本だからな」




 親睦会にあたって。クラスの皆が参加してくれるとなって、俺も橋本もほっとしている。当初は不参加を表明していた黒羽も参加することになったというのは、彼女もクラスに馴染んでくれた証拠であろう。

 また、単に集まって食事をとるだけではなく、なにかイベントをしたいと橋本に提案されたので、即興でも出来そうなことはないかと考えていた。ビンゴ大会とか隠し芸大会とか。

 何やるのかについては橋本の友人らや虎太郎らの意見も聞きながら決めさせてもらった。何するかについては、まだ皆には伏せてある。



「どっかで昼飯食ってからにしよーぜ。俺腹減って仕方ねぇんだよ。寝坊したお陰で朝は食パン一枚しか食べてないんだよ」

「元からそのつもりだけどさ……お前はもうちょい早く起きろよ拓弥。最近学校くんのギリギリだろ」

「何時に起きてんだいつも」

「普段は七時くらいだな。それで学校までは自転車で三十分で……七時半くらいには家出るようにはと思ってるんだけど、いっつもギリギリまで家にいたくなるんだよ」

「そっから直せよ。五分早く家を出るくらい難しい話じゃないだろ」




 お昼によったのは街の通り沿いにあるラーメン店。地元誌にも取り上げられる店で、時間帯というのもあって多くの客で賑わっている。


「なぁ架谷」

「どうしたんだ?」


 注文したチャーシューメンを啜っている時に、テーブル席の向かいに座ってた拓弥から、こんなこと言われた。


「最近さぁ。お前のことを探してるっていう二年の女子生徒に時々会うんだけどさ……お前なんか知らないのか? その女子について」

「二年って……昔のあれにしたってそんな覚えはないんだけどな……。なんかいたような気はするんだけどな……」

「あんま覚えてねぇのかよ」

「相当昔のことで忘れているか、それかついぞ最近だけど色々あって忘れようとしているかのどちらかだ」

「後者だと覚えてるってことじゃねぇか」


 小学校の時によく話していた女子がいる訳でもないし、中学……? にしたって特に深い記憶があるって訳でもない。

 しかも拓弥が言うにその人って年上なんだろ? なら尚のこと覚えがない……って感じなんだ。




 昼飯を食べ終え、いざ目的の店に向おう。と思った時、走り回ってつかれたのであろう凛と黒羽に出会った。


「あっ、凛ちゃんどうしたのー。黒羽と一緒になって」


 拓弥が意気揚々と話しかける。が、それを流して黒羽が俺ら尋ねてくる。


「あ、貴方たち……。オレンジっぽい色したワンピース着た、ちっこい女の子……。見なかったかしら?」

「いや、覚えはないが。なんかあったのか?」

「色々……あってね。とにかく見かけたら教えてちょうだい」

「あぁ、そう。わかっ……」


 俺が言いきる前に黒羽はさっさと走り去ってしまった。よっぽどのことなのだろうか。


「あっ、京子ちゃんもういない‼すみません祐真さん!突然こんなこと聞いてしまって!」

「いやいや、これぐらいどうってことないから。それよかその女の子って知り合いか」

「そんな感じです。背丈で言うなら小学生くらいです。もし見つけたら教えてください!」


 凛はそう言うと俺らに一礼してから黒羽を追いかけていった。



「いやー、やっぱいつ見ても可愛いよなー凛ちゃんは。よくくっついてるお前が羨ましいよー」

「そうだよなー。なんせ同居してるんだもんなー」


 後半わざとらしい態度で虎太郎が言う。


「もしかして家ではあんなことやこんなことが……」

「はーいその話は止めにして早く行こうかー」

「いや、ちょ、待てよー!!」

「話を聞かせろ架谷ー!」


 俺は無理やり話を切り上げ、目的のショップへと走っていった。これ以上話を続けると何かとやばい展開へと進むであろう。別の意味で。




 一時間程して、目的を終えて店から出てきた。収穫もあって、拓弥はホクホクな様であった。


「いやー、良かったなー。もうちょい金あったらフィギュアとかも買おうと思ったんだけどなー」

「ラノベ三冊に漫画二冊。加えて中古のキーホルダー類ってそれでも結構な量買ってたろお前は」

「まぁしばらくしてからまた行こうぜ。そん時はそっちも買いたいからな」

「あぁ、そうだな……ってどうしたんだ拓弥?」


 建物から出てすぐ。拓也が右の方指差したまま動かないもんだから、何があったのか聞いてみた。


「いや、向こうにいんの、さっき黒羽が言ってた奴かなーっと思ってさ」

「いやいやまさかそんな……」


 と思ったが、あながち間違ってもない。この通りの人混みに紛れているが、十数メートルか先の方。黒羽が言っていたであろう、ワンピースを着た小さな女の子がいた。


「確かに」

「せやな」

「って向こうの方言っちまうぞあの子」

「とにかく黒羽に伝えようか。誰か連絡を」

「いや、どうやってよ。俺あいつのスマホの番号なんざ知らんぞ」

「クラスのSNSのやつからやりゃいいだろ。もういい。俺が連絡するから拓弥と虎太郎であの女の子追っかけてくれ」

「わかったわ。行くぞ奥村」

「ヘイヘイ」


 拓弥らが女の子の歩いていった方に行ったのを見て、俺は黒羽に連絡を入れようとスマホを取り出し、クラス名義のSNSから彼女の名前を探す。

 見つけて電話しようと思った直前、黒羽の名前の下に、「狐村 凛」とあるのを見つけた。


「あいついつの間に。つか携帯持ってんのかよ。いつ手に入れたんだ……。まぁ今はどうでもいいか」


 そんな疑問は取り敢えず置いといて、俺は黒羽に電話を掛けた。


「架谷さん。もしかして見つかったの?」

「今堅町通りにいるんだけどさ、その辺りでそれっぽいのが歩いているのをさっき見たんだ。今拓弥と虎太郎が追っかけてる。」

「ありがとうございます。じゃあ私たちもそっちに行きますね」

「あぁ、たの……」


 また話し終える前に電話が切れる。どんだけ急いでんだ。まぁ詳しい事は後からいくらでも聞けばいいか。

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