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ドゼニゲット

そうして武器屋を後にしたのだが、自分がまさか無職だとは思わなかった。

(ニート舐めんなよ……)

と、心の中で思っても実際に筋力とか全然無いのだから文句も言えない。

まあニートなんて、定義からしたら俺はまだニートではないのだ。

とりあえず、あの《なろう攻撃Lv.1》というのを使ってみたいものだ。

どっかで手合わせ願えるような人が居たらなあ……。

(とりあえずまた街の中を歩くか……観光の続きだ!)


活気づいているように見えるこの街はおそらくコロッセオのおかげなのだろう。どこもかしこも人でいっぱいである。

ふらふら歩いていると、ふとあることを思い出した。

(早く宿を決めないとヤバいぞ……金はどうする!?)

そう、宿泊の問題である。コロッセオは明日だ。「明日」である。

スマホしかない状態で金など持っているはずもなく、さらにそもそも宿も決まっていない。

(これは非常にまずいな……)

とりあえず、金を稼がなければどうしようもない。

(金策……泣いて金をせびるか……?俺は無職だ、情けとかで金をくれたりしないかな?……そうだ、誰かと戦ってお金を貰おう!こっちからの見返りは無職だからすみませんって感じで通してもらおう!)

そう考えた俺は、戦ってくれる人を探すことにした。


……話しかけられない。俺はこんなにも肝が小さかったのか。

前を横切る人、対面から向かって来る人、人はいっぱいいるのに話しかけられない。

「おい、そこの無職!」

「ん?」

しまった!反射的に返事をしてしまった!

見た目は普通の男だ。筋骨隆々と言った感じでもない。

「なんでしょうか?」

強気で攻められるとどうしても敬語になってしまう。

「頼みごとがあるんだが」

「え……なんですか急に……」

「いや、実はなあ、お前のその手に持っているよくわからん機械が妙に気になるんだ!そいつは俺が今まで生きてきて見たことがねえ。なんだか文明の利器では到底ないような気がするんだ……」

「ふんふんそれで?」

「いや、つまりその、あれだ。そいつが欲しい!」

「ええええ!!!」

いや何となくわかってはいたが。

「ちょっと厳しいですね」

「ええええ!!!」

何故驚く。そこはわかってくれよ。

「うーん、そうか……じゃあ決闘しないか?そいつを賭けて」

「こちらに利がないじゃないですか!」

「それもそうだな、そっちが買ったら100000円やるぜ」

通貨は円なのか?勝手にわかりやすいように変換してくれているのだろうか。

「もう一声行きませんかね……こちらもこれがないとすっごい困るので」

「じゃあ200000円でどうだ!これ以上は俺も出せないぞ!」

「いいですよ、条件を飲みます」

「よっしゃ!そうと決まれば早く決闘だ!」

そうして俺たちは人気のない広場へと向かった。


俺には金の事しか目に見えてなかった。




……広場についた。鼓動が早くなる。

「どちらかに参ったと言わせるだけの簡単な対決だ、異論はないな」

「はい、大丈夫です」

「よしじゃあ始めるぞ!」

「はい!」

こんな適当な感じで対決が始まった。どうやら相手は普通の剣を使うようだ。

(さて、どうしたものか……なろうっぽい言葉を探すか……)

じりじりと間合いを詰めてくる相手、怖くなって少し横にずれる俺。

「どうした?かかってこないのならこちらから行くぞ!」

「……無駄口叩かずかかってきなさい」

「グッ……なんだ……?」

……今ので精神的ダメージを与えたみたいだ。こんな恥ずかしい言葉を言うのは俺に精神的ダメージを与えているといっても過言ではないのだが。

「お前何をしたんだ……?」

「俺の能力です、恥ずかしくなるのが唯一の欠点ですが」

「そうか、ならばこっちももう容赦はしないぞ!」

そう言ってこちらに駆けてきた、まずい、どうしよう。

(逃げるか……?いや無理だな)

逃げるのをあきらめ相手の方へ向き、短剣を引き抜く。

間一髪相手の振ってきた剣を止めた。あぶねえ!

「反射神経はあるようだな!」

「たまたまですよ!」

剣を押し返す。どうやら相手も剣術に慣れているわけではなさそうだ。

精神的ダメージを与えた隙に一気に決めよう。

「手加減してくれてありがとうございます、死ね!」

「くっ、何を……」

素早く詰め寄り相手を押し倒し短剣を喉に突き立てる。

「わかった、参った参った」

「ふう……」

とりあえず終わった、よかった。

「しかしなんだ、こう中から、なんて説明すればいいかわからんな。これがお前の能力なのか?」

「そうですね、小説のセリフとかで攻撃するんですよ」

「なんだそりゃ……だから変なことをしゃべっていたのか……」

「そうなんですよ、手加減に親を殺されたのかってぐらい手加減を疑う主人公や、いい年して『死ね』っていう言葉を発言するのにためらいがない交感神経が働いていない主人公とかが出てくる小説を読んでいるんです」

手を取り、立ち合う。

「そうかそうか、なんだかよくわからんが難しそうな本だな」

「俺も難しい小説だなって思いますよ」

「まあ俺の負けだ、金はくれてやるよ」

「ありがとうございます!」

紙を袋に入れて渡してくれた。

これでとりあえずは困らないな。

「俺は様々なものの仕組みを研究しているんだ。自分でも無茶な戦いを挑んだな、と思ってるよ。そんなときにこんなものに出会ってしまったら研究家としての血が騒いでな……」

と言って俺のスマホを指さす。

「なるほど、てか俺もよくわかってないんですよね。気が付けばこんな便利なものが出来上がる世の中になっていたので」

「お前が作ったんじゃないのか?」

「こんなもの僕は作れませんよ。いろんな分野の人が集まって出来た集大成です」

「そうだったのか……まあ今度見させてくれよ」

「もちろん!」

「あ、そろそろ約束の時間になってしまうな……じゃあまたな、無職さん」

「また逢う日まで」

どの世界にも物好きがいるんだと感じた。


参考文献

2018/陰の実力者になりたくて!/逢沢大介

2016/即死チートが最強すぎて、異世界のやつらがまるで相手にならないんですが。/藤孝剛志

2018/異世界賢者の転生無双 ~ゲームの知識で異世界最強~/進行諸島

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