異世界に......
俺の名前は伊勢海人。
成績優秀、容姿端麗な高校生……であると思い込んでるサボり野郎だ。
今は平日の昼下がり。
臨時休校ってわけでもないので高校の授業はあるのだが秋葉の町を放浪している。
なぜ秋葉なのかって?
その答えは至極簡単で……そう、俺がオタクだからだ。
「今日の新刊は……」
スマホの電源をつける。
そして、メモ機能を立ち上げる。
そこに書き連ねた新刊、新作ゲームたち。
普段は自宅の監視で忙しいため、こうして買い出しに出掛けるのも久しぶりだ。
それゆえ、新刊、新作ゲームが溜まっているのだ。
積んで、それを自宅の監視のついでに消費する。そんな隙のない生活スタイルを貫いているゆえできる所業だ。
「あ、赤信号か」
ちゃんとメモ機能を見ててもそんなことくらいわかる。ちゃんと、赤信号を見て止まる。
「この間に……」
俺のようなパーフェクトなオタクには時間の浪費は許されない。
こんな隙間時間でも、電子書籍を読み漁る。
「あれ?」
こうして目にとまったのが一冊の本。
「こんな本買ったっけな?」
その本を読み進める。
「へぇ、ラノベみたいに面白いな」
その本はラノベではないが、なかなか面白かった。ラノベ以外の書籍を目にしたのは久しぶりではないだろうか。
「勇者、ねぇ……」
非常にオーソドックスな内容の本。
気づくと信号は赤から青に、青から赤に変わっていた。
「あれ?」
読み進めると、そのページには何も書かれておらず、白紙のページだった。
暗転。
このたった1つの行動で異世界に召喚されるだなんてこのときの俺は思いもしなかった。
参考文献)
・アネコユサギ, 盾の勇者の成り上がり,2013