美々のストーカー
福丸は1週間美々のボディガードをつとめあげた。
彼女が部屋から手をふれば、福丸も笑顔で振り返した。
ボディガードを始めて数日たったとき、彼女は福丸にメモ帳を渡してきた。
「私、日本で使える携帯電話って持っていないの。何かあったらこれにお手紙を書いて郵便受けにいれておいて。」
実際には書く必要がある出来事は起こらなかった
のだが、仲良くなるチャンスだと思った福丸は
「今日のワンピースが似合ってた」
だの、恥ずかしくて口に出せないことをせっせと書いて郵便受けにメモをいれた。
「最終日に彼女をデートに誘おうと思っていたんだ。ボディガードありがとうバイバイ、て言われておわりじゃさみしいから。」
福丸が俯きながら言う。
ところが、ここから予想外の展開を迎える。
美々の両親が帰国する前日、美々は複数枚の写真とメモを持って家から出てきた。
彼女は写真とメモを福丸の前に並べていく。
写真には美々の家の前にいる福丸がうつっていた。
「メモは恥ずかしくて見れなかった。わざわざ並べてお礼を言ってくれるのかなって思ったんだ。」
美々が口にしたのはお礼ではなかった。
美々は福丸を見てにっこりと微笑んで言った。
「この写真とメモ、証拠品ね。今週あなたが私をストーカーしてた証拠。
訴えられたくなかったら、この証拠品、100万円で買ってよ。」