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悲劇の始まり
それから1週間、福丸は我が家に来なかった。
福丸が毎日ここに来ていたのは、きっとミミが毎日山田の家に行くのと同じだ。
習慣だけれど、永遠に続く習慣ではない。
「昨日なんか23時まで帰ってこなくて心配したわよ。」
みやこさんが大して心配していなさそうに言う。
「華、今週孝介くんどこで何してるの?」
みやこさんも母親も、私が福丸のことなら何でも知っていると思っている。
「わからない。」
つい不機嫌な言い方になってしまう。
美々の顔が浮かぶ。
彼女の両親が帰国するのは今日だったか。
「華ちゃんでもわからないことあるのね。」
翌日部活から帰宅すると、1週間ぶりの福丸がリビングにいた。
「1週間何してたのって聞いてくれよ。」
福丸がミミにごはんをあげながら言う。
「1週間何してたの?」
「美々ちゃんのボディガードからストーカーまで、手広く。」
ごはんを食べているミミが、ちらりと福丸を見やる。
美々と出会った翌日、福丸は再び美々に会いに行ったのだという。
「またミミに便乗したのね。」
「もう一度会って話してみたいと思ったんだ。」