最終
その後ナナちゃんは毎日隣町に出かけることになる。
ナナちゃんは散歩ならいくらでも、と言っているように協力的だった。
ナナちゃんがいたコンビニ周辺をナナちゃんとともに警察官が張るようになって3日目は福丸の父親が担当だった。
ボックスカーのなかからコンビ二客の出入りを見ていると1人のコンビニ客の男にナナちゃんがしっぽをブンブンと振って反応した。
福丸の父親がドアを開けるとナナちゃんは男のもとへ駆け寄った。
「どこ行ってたんだよ」
と男は驚いて泣き笑いのような顔を浮かべた。
好意的なナナちゃんの態度とは対照的に、福丸の父親が高圧的な聴取をして自白をとったようだ。
男は天涯孤独でナナちゃんだけが唯一の家族だった。
金に困りひったくりをしたが大金を手にいれることも叶わず、もう生活を諦めかけていたという。生活保護下にあったがナナちゃんのごはんもままならなくなっていた。
ナナちゃんがいなくなったことで連絡をしなかったのは、警察に連絡しづらかったこともあるが、ナナちゃんを連れ戻しても養えるほど生活に余裕がなかったのだ。
後日、
「犬借りて隣町をうろうろして、お前ら何か企んでたんだ」
と福丸の父親に言われて私たちはぎくりと震えあがった。
慌てて話題をそらす。
「ナナちゃんどうなるの?」
「世話する人がいなくなるからな。動物愛護団体に行くか山田くんとこが引き続きひきとることになるかもな」
「勝手に連れ帰った山田は?」
結局山田が見た時にたまたま2日連続同じ場所にいただけだったのだ。
「届けも出てないし大丈夫だ」
「山田はやっぱり阿呆だなー」
銀行強盗に失敗した私と福丸は考えていることがあった。
ナナちゃんが山田の家に戻るようになった頃、再びナナちゃんを借りて出かけていた。時刻は13時前。場所は美々の家だ。
美々の家に着くと予想通りミミがきていた。
両親は帰国しているはずだ。まずは福丸だけ美々に近づく。
「美々ちゃん、ご両親は?」
「出かけている」
美々がそっけなく答える。
「それより100万円は?」
美々が言った瞬間、福丸から後方の私にGOサインがでる。
「ミミ!」
呼びながら私はナナちゃんを連れて姿をあらわす。
ミミを見つけたナナちゃんは狂ったように吠えてミミ向かって突進して行く。
美々は叫んでパニックを起こす。
「ちょっと何をやっているのよ。早く帰ってよ」
「いや、帰らない。ナナちゃんに噛まれたくなかったら証拠品をよこせ!」
※※
こうして福丸の冤罪事件は解決したのである。
ミミは鎖に繋がれていないナナちゃんに追いかけられたのにも懲りずまだ毎日美々の家に行っているようだ。
美々が100万円を要求した理由は、声優の専門学校の入学金だった。
美々は日本で一人暮らしをして声優を目指したかったのだという。
あんなにお金持ちなのに、と思うが親に反対されていたらしい。
「入学したらバイトでも何でもして返そうと思ってたのよ」
と美々は言っていたが本気だったのかはわからない。
「福丸に用意できると思ってたの?」と聞くと、
「いろんな方面に手を打っていたけど、最も期待できない案だったわ」
とこともなげにいう。
結局、美々が動画サイトにアップしたアテレコ動画の反響がよく、美々の父親は高校には通うことを条件に養成所へ通うことを承諾してくたらしい。
夏休みはあと1 日で終わる。
今日は福丸を誘って祖母の畑の草むしりを手伝うことにした。
畑の作業道を歩きながら隣を歩く福丸の顔を盗み見る。
夏休みが終わったらまたこんなに頻繁には会えない。
こうして何か思い出を積み重ねて絆を強めていくしかない。
ポケットから携帯を取り出しレコーダーを起動する。
レコーダーには銀行強盗しようと計画していた福丸の音声が入っている。
もしもこの先離れそうになったら言ってやるのだ。
証拠があるけどいいの?と。




