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ナナちゃんが山田家にくるまで

山田が言うには、こういうことらしい。


3週間ほど前、野球部の試合で隣の市にバスで遠征に行った。

球場近くのコンビニに停まったときに駐車場に犬が繋がれているのを山田はバスの窓から見ていた。


「凛々しい眉毛でいいな、と印象に残ってたんだ」

思わず、ハの字型で間の抜けた印象の山田の眉毛を見てしまう。


試合の翌日、山田は球場に忘れ物をしたことに気づき自転車で取りに戻った。すると、凛々しい眉毛の犬がまだコンビニに繋がれているではないか。


「また忘れ物したのかよ」

福丸の口ぶりからするに、山田の忘れ物はいつものことなのだろう。


「置き去りにされて可哀想で。お腹も空いてるだろうし」

山田は犬を自転車に乗せて連れ帰った。

当然、山田の父母は勝手に連れてきて飼い主が探しているだろう、と山田を叱って犬を連れてコンビニの駐車場に戻ったが暫く待っても飼い主らしき姿は現れなかった。


仕方なく、警察に連絡しコンビニオーナーに許可をもらって、最寄の交番に連絡するよう連絡先を書いた張り紙を犬がいた場所に貼って帰って来たのだという。


しかしそこから3週間、交番から連絡は来ないままだった。

本当に置き去りにされたのか、と山田家はナナちゃんを飼うことにしたのである。


「置き去りにするなら首輪はずさないかな」

福丸はミミの時と同様に首輪にこだわる。

私もそこは気になっていた。


「山田が置き去りにされていると思い込んだだけで、たまたま山田が見た時間帯に2日連続でコンビニに行っただけかもしれないわよ。飼い主はお店の中にいたのかも」

遠征バスが停まるくらいだ。駐車場も広いのだろう。


「じゃあどうして連絡してこないんだよ」

山田はまだ怒っている。


そういうことか、と警察官がため息をついて言う。


「犬を取り返したくても連絡先が警察だから連絡できないのかもしれない。

そいつがひったくり犯なら、警察と接触したくないだろう」


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