ミミとレトリーバーのナナちゃん
翌日部活から帰宅すると福丸がミミにごはんをあげていた。
「反省しているとは思えない食いっぷりだな。」
野球部も朝練だったようだ。
「華、今日浮気相手をみにいこう。」
「ついていくの?ミミ嫌がるわよ。」
と言ったものの、首輪をつけた相手にミミは我が家の飼い猫だと説明しなくてはいけない。
ミミは毎日11時にごはんを食べて15時まで外出する。
食後のミミはちらりとこちらを振り向いて、そのまま歩きだした。
付いて来るならお好きにどうぞ、ということらしい。
300mほど離れた畑に着くと、祖母が草むしりをしていた。毎年手伝っていたのに高校生になっていつのまにか来なくなった。
なんとなく畑に入ることが出来ずに見ていると、作業道をずんずん歩いてミミが祖母の背中に飛び乗るのが見えた。
「ひっ。あいつ自分が7kgあるってわかっているのかな。」
「でもおばあちゃん、嬉しそう。」
遠目に微笑む祖母の顔が見えた。
次にミミが向かったのは同級生の山田の家だ。中学で同じクラスだったお調子者の山田は、今は福丸と同じ高校で同じ野球部だ。
ミミが門塀にひょいっと飛び乗ると、ワンワンと敵意剥き出しの声がした。
門塀の内側からラブラドールレトリーバーがミミに飛びかかろうと獰猛な顔つきになって吠えている。
しっかりと繋がれた鎖がジャラジャラと音を立てる。
「山田って阿保なくせに賢い犬飼ったのね。」
「なんだよ山田のやつ、犬飼ったんなら言えよな。」
山田のラブラドールはきりっとした眉毛のような模様があって、より利発そうに見える。
「あの眉毛、山田が描いたんじゃないだろうな。」
吠え続ける愛犬をなだめに山田が出てきて、こちらに気づく。
「おお、来てたのか。
堂本の猫さ、毎日こうやってうちのナナちゃんをからかいにくるんだよ。
ナナちゃん普段は吠えない良い子なのに、堂本の猫を見ると必ず吠えるんだよな。」
「ミミが悪いみたいに言うなよ。」
福丸がすごむと、
「ごめんごめん、福丸は堂本の猫大好きだもんな。」
と山田は申し訳なさそうにする。
いや、どう考えても悪いのはミミだろうに。




