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『黒い蝶とタトゥー』

しばらくしてテレビを見つめたまま早奈が言った。

「名刀、ベランダ開けて」

「うん?暑いのか」

「ううん。そうじゃなくて…」と早奈は言葉をつまらす。

何かあるなと思って名刀はベランダを開けた。冬の冷たい風が部屋に入ってくる。

さむーと思い名刀は体を震わせた。

「道霧。樹希翔」と早奈がいるはずもない名前をあげた。

バッと音がしてベランダに二人が立っていた。

「うわっ!」と名刀が悲鳴に似た声を上げた。無理もない名刀が窓を開けた時、そこには誰もいなかったのだから…

「今日は寒いな」と道霧が震えながら言った。

「何かあったの?」と早奈が名刀にスパゲティのおかわりを要求しながら冷静に聞いた。

「奴らが俺らを捕まえに来るぜ?」と道霧は勝手に上がり込みソファーに座り込みながら言った。

「隠れ家が彼らに知られたみたい…軍団がこちらに向かっているよ」と樹希翔。

「奴らとは黒い蝶のタトゥーを持った集団か?」と関根は彼らの話に割り込んだ。

彼らは関根のその言葉に一度沈黙を示した。

やがて、早奈が「そうだよ」と一言呟いたが奴らは何者なんだ?という関根の言葉は「そんな…そう簡単にあそこは気付かれる場所じゃない」と叫んだのは海聖の言葉に消された。

「その通りなんだけど…」と樹希翔は言って早奈を見る。早奈はおかわりのスパゲティを口一杯に頬ばっている。

「ほれで、真護達は?」と早奈はスパゲティに集中しながら聞いた。

「Dのところへ避難させた」と道霧。

「Dの…所ですか…」とその場にいる誰もが嫌そうな顔をする。パレカルという組織は集団で出来ているAは楓をリーダーとする男だけの集団。Bは真良輝を中心とする女のみの精鋭集団。Cは俊を先頭とする集団。そして、Dをまとめている人物を組織の中では通称Dと呼ぶ。Dをまとめているだけあって能力はズバ抜けているが少々、性格と行動に問題があり属に言うヒッキーの分類に入る。

「Dの所なら逆に安全かもね」と早奈は食べ終わり弥譜音のお茶を飲みながら言った。

「真良輝には言いましたか?」と弥譜音。

「いや、敵の場所によってこちらを優先した。」と樹希翔。

「あらま、この場所もバレたのね」と海聖が呟く。

「じゃ無かったらここには来ない」と道霧はそうきっぱり言い放つと「伝えることは伝えたからな」とベランダから飛び降りた。

慌てたのは関根だ。人がベランダから突然落ちるなんて予想してなかったから彼は慌ててベランダに出て下を除いた。頭がクラクラするほどの高さだ下に歩く人が黒米に見える。

「関根さん。ここ21階だよ」と樹希翔が隣でそう教えてくれた。

「心配しなくても大丈夫。いつものことだから…」と彼はそう言った。

「本当に大丈夫なのか?彼はこの高さから飛び降りたんだぞ?」と関根は大声をあげた。

一瞬の沈黙が流れた。

その場にいた全員が関根に注目した。気まずい空気が流れる。どうやら彼らの地雷を踏んでしまったようだ。

やがて、ソファーに座っている男がぽつりと呟いた。「関根さん。部屋の中に入ってきてくれますか?」

この状況で中に入って命の保証があるのかと関根は考えた。

彼らは殺人のプロ。今だって普通に銃刀法違反ぐらいやってのけてるだろう?中に入ってベランダを閉められたら逃げ場などない。さっきまでは何も怖いとも思わなかったが、今は彼らが非常に怖く見えた。関根はまるで狼の集団の中に入っていく羊の気分だった。

「早く入れよ」と赤い瞳の青年が関根を睨みつけた。関根は逆らうことが出来ずに家の中に入る。

次に入ってきた樹希翔が後ろ手で窓をきっちり閉めた。部屋の中の空気はピーンと張っている。部屋の中にいる全ての者が関根を見ていた。

「お兄さん。」と早奈がその空気の中で彼を呼んだ。関根はソファーに座っている女子大生に視線を移した。

「どこまで知っている?」と彼女は彼を見たまま尋ねた。

一瞬、彼女の瞳が赤く光った気がした。たぶん彼女は自分たちのことをどこまで知っているのかを聞いたのだろう。

関根は恐る恐る口を開いた。

「お前らが暗殺したと思われる人達の資料を見させて貰った。」その言葉に早奈は目を丸くした。

「良くそんな資料残っていたね?パルパックにそれが見つかったらお兄さん殺されるよ?」と彼女は困った顔をする。

その早奈の言葉で関根の頭の中にパルパック=黒い蝶の集団という法則が成り立った。

彼らの敵は関根の予想通りあの刺青を持つものたちなのである。

「黒い蝶のことはどこで知った?」と樹気翔が尋ねる。

「資料を見ていて一つの共通点に気付いた。被害者達の鎖骨には黒い蝶の刺青がある」と関根は気づいたことをそのまま告げた

「このタトゥーか?」と金髪の男が左の鎖骨を見せて関根に尋ねた。男の鎖骨には火傷のあとの上にうっすらと黒い蝶のような模様が残っていた。その蝶はまるで彼の鎖骨の上に止まっているように見える。今にも空に向かって羽ばたきそうな漆黒の黒蝶は火傷のあとを除けばまさしく被害者達と同じタトゥーである。

「そうだ」と関根は返事を返しながら頭の中に一つの疑問を浮かべていた。関根の考えが正しければ黒い蝶の刺青を持った集団は彼らの敵のはずだ。

「このタトゥーはパルパックの配下または部下の証。」と海聖は少し視線を落とす。「僕は元・パルパックの一員だ…。」と海聖の綺麗な顔が歪む。

「このタトゥーが赤と黒があって赤は組織に重要な人の証。幹部の人はこの鎖骨の蝶が真っ赤なんだ。僕の鎖骨のこれも最初は赤かったんだ。」と海聖は自分の刺青に爪を立てながら言った。


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