第3話『メール』
『メール』
今日も空がきれい…と保坂 早奈はそんなことを思いながら横断歩道を渡った。
早奈は今年大学2年生になった。前々から望んでいた医学系の学校に受かり大学生活を楽しんでいた。
大学は家から電車を乗り継いで一時間、近いような遠いような距離である。耳にイヤホンをつけ流れてくる音で朝の眠気を飛ばしながら大学構内に入った。
講義がある部屋に入ろう戸ドアノブに手を伸ばした瞬間中から声が聞こえてきた。
「ねぇ、知ってる?渋谷殺人事件。あれソナーパレカルがやったらしいよ」
早奈はドアノブから手を放し耳を澄ませる。
「渋谷殺人って昨日男性が渋谷でメッタ刺しにされ殺されたって言う?」
「そうそう。なんでもパレカル紋章の刺繍されたぬいぐるみが死体の上に置いてあったんだって」
「おはよう!」と早奈は笑顔を作って講義室のドアノブを捻り中へはいる。
「おはよう!!」と教卓から一番近い席に陣取っているグループの子達が声を揃えてそう言った。
「昨日のアニメ観た?」と早奈は渋谷事件から話題を変えると授業開始ベルが鳴るのを待ちながら友達とくだらない話しをした。
2限あった授業を全て受け終わると早奈はかばんに教科書を詰めていた。
ふと、携帯を見るとメールが一通はいっている。
早奈は誰にも見えないように携帯をかくしながらそのメールを開いた。
そして、露骨に嫌そうな顔をすると携帯を閉めた。
そんな早奈に友達が声をかける。
「早奈ちゃん。ロッカーに教科書置きにいくけど?」
「あっ!!まって私も行く」と早奈はいつもと変わらないにこやかにそう返すと携帯をズボンの後ろポケットに入れ上着を着ると友達と一緒に廊下に出た。
「今日の授業分かりにくかったね」と話ながら廊下を歩く。
「ってか、すごい眠かった」
「うんうん。眠かったよね」
「って、ゆみちゃん授業中寝ていたじゃん!!」
「あれでも寝ないようにがんばっていたんだよ?」
「うそー。だって授業始まって3分ぐらいで寝ていたじゃん」
「ねぇ?早奈ちゃんも見ていたでしょ?」
「うん。ゆみちゃん寝ていたね」と友達に返事を返しながら早奈は雲行きの危うい空を見上げてため息をついた。