『黒イ』
−爆破テロ(1)−
関根は警部からもらった鍵で東京駅にあるロッカーから取り出した資料を眺めていた。
その黒いファイルにはパレカルが起こした事件の被害者のことが鮮明に書かれていた。
黒井 達夫40歳。国家公務員。
軽動脈を切られたことによる失血死。
依田 隆 39歳。国家公務員
全身を刺されたことによるショック死。
金田 純 20歳。無職。
毒針を刺されたことによるアナフィラキシーショック。
と被害者の名前や死亡原因も簡単に記されていた。もちろん被害者の写真も残っている。
関根はそれらを見ながら首をかしげた。
国家公務員がやけに目につく。それに失血死、ショック死という文字列が多く並んでいる。
殺人は絞首が一番多いと思ってきた関根の考えが全てひっくり返された。ソナーパレカルの殺人はどれも被害者を苦しめているように思えた。
中には体が分離している被害者いた。関根はあの早奈という少女のそばにいた赤髪の男を思い出した。彼の手には確かに日本刀が握られていた。
そう、彼は関根の前で仲間を切るふりをして見せたのだ。異常な光景だと関根は思ったが彼らは笑っていた。あの場面で笑える彼らが恐ろしかった。
これはあの男の仕業だな。と関根は思いながら、写真に変に違和感がして全ての被害者の写真を何回も見た。そして、その違和感に気づくと関根は彼女の言葉を思い出した。
「パルパックは建物じゃなくて組織よ?」と早奈という女の子はそう呟いていた。黒いファイルに閉じられた被害者達の鎖骨には漆黒の闇を優雅に飛び回っていそうなリアルな黒い蝶の刺青が彫られていた。
そして、彼らの所持品を取った写真には黒い携帯が映っている。彼女が言っていた組織…。パルパックとは彼らのことなのだろう。
人体実験とウィルス研究をしていた研究者やその他、周りの関係者からなる組織をパルパックという。じゃあ、彼らは俺に探せと言ったウィルス研究の第一人者。伊藤 凪幸博士はパルパックの指揮を取っていた人物?とすると博士を見つけたら彼らパレカルは博士を殺す気なのか?ありえなくはない。しかし、関根は伊藤 凪幸博士の名前を言う時に早奈が一瞬だけ見せた嬉しそうな顔が忘れられなかった。あの顔は博士を憎んでいる顔には見えない。ならパルパックを彼らは恨んでない?ってことはこの黒い蝶の刺青を持った組織はパルパックではない?なんか全ての謎がスタート地点に戻った気がして関根はため息をついて、彼女がくれた博士の写真を眺めた。
「あれ?この顔どっかで見た気がする…」と関根はまた首をかしげ写真に写っている白衣の男を見つめた。
そんなことを考えていると携帯が鳴った。
関根は慌てて携帯に出た。
「はい!関根です」
電話の向こうで男が喋っている。
「本当ですか?」と関根は大声を上げ「今からそちらに向かいます」と返事をすると携帯を切りファイルを持って大泉公園にあるカフェをかけ足で出て行った。
彼はデスクの上にある写真を眺めていた。その写真には一人の小さな女の子が映っていた。今、この子は25歳になっているはずだ。14歳に失踪して以来、彼女とは会ったことがない。今、どこでなにをしているのか?それさえ分からない。
「警部!!携帯の解析が終わったって聞いて」とドアが突然開かれて彼は慌てて写真を引きだしの中に入れた。
「おぅ。早かったね」と警部は声を漏らした。
「ええ。走ってきたんで」と関根は息をつきながら言った。
「携帯の損傷が激しくてほとんどの情報は破損していたのだがな」と警部は関根に一枚の紙を渡した。
「最後に被害者と電話をした人物だけ割り出せたぇ?」と警部。
関根は渡された紙を睨んだ。
そこには聞いたことのある名前が浮かんでいた。
「被害者は保坂 早奈という大学生と午前2時に最後に会話をしている」と警部は言った。
「保坂 早奈!!」と関根は声を上げた。
「どうした?知り合いか?」
「いいえ。知りません」と関根はとっさにそう嘘をついた。
「そうか。まぁ、そこに彼女のことを載せておいた。どうも彼女はあの医療技術で有名な帝東大学の医療学部臨床検査技師学科に在中しているらしい話を聞いてみたらどうかぇ?」と警部はそう言った。
「はい」と関根は返事を返しながら早奈からもらったアドレスを思い出していた。
「そういえば…被害者の身元は分かったのですか?」と関根はそう尋ねた。
「被害者の身元かぇ?判明出来なかった。解剖に回す前に上から捜査中止の申し出がきてな」と警部は残念そうに言った。
「そうですか…」
警部にお礼を言っての部屋から出た関根は早速、早奈から貰った。アドレスにメールを送った。「話しがある。時間ありますか?」
早奈から返って来た返事は「時間ない。博士のこと以外話すことはない」という返事だった。
長く滞っていてすいません。
レポートが一通り終わったので一気にアップしておきましたぁ!!
「継続は力なり!!」
誤字脱字多いかもかもです。
これからもどうぞよろしくお願いします。
by,天海聖哉&成田慎也