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ハルネ
季節は花ノ月、20ノ日。
吹き抜ける暖かい風に、雲を浮かべた蒼い空が広がる。
そんな草原の中、一匹の碧い狼が駆けていた。
名を、〝ハルネ〝
そう。春音だ。
正しくは市川春音の生まれ変わり。
草原の端にある丘の上、街並みが見下ろせるそこにつくと、狼は一つ伸びをする。
ザァアっとひときわ強く草が揺れ、狼に視線を戻すとそこには一人の少年…のような少女が立っていた。
碧い髪に透明感のある黒い瞳。褐色に近い小麦色の肌に、その肌が映える白いローブ。
彼女は眼下の街並み、そして山脈の向こうに広がっているまだ知らぬ国や町、そして最後に一つの名前をこの国の言葉ではないものでつぶやいた。
「探しに行くから待ってて…『優羽』」